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第三十一話

いつもより短いです!

朝目を覚ましたらこれまでのことは全部夢でしたー……などということもなく、しかし意識を失ったときとは違い目の前にかわいい生き物が座ってクッションを抱きつつこっちを見ていた。


「おはよう」

「あ、おはよう。……その、ボク寝ている間になにか変なことをしなかったかい?」


変なことというか、ご褒美というか、まあ意識を失う程度の何かはあったわな。クッションを抱いているし、抱き枕でも持っていたのかな。


それともこっちが手を出してないかってことだろうか? 眠っている相手に手を出せるほどの人間じゃない。というか起きてても無理だ。


「いや、何もしてないよ」

「そ、そうか。……よかったぁ」


ほっと息をつくシエル。ボソッと言っているが、難聴系の主人公じゃあるまいし聞き取れた。俺が何もしていないことに安心してくれたようでなによりだ。


「じゃあ早めに飯にして集合場所まで行くか」

「集合? ……ああ、あの馬車の依頼だね」


シエルは依頼を受けていないけど、一緒に連れて行くのは大丈夫だろうか。まあ頼めば何とかなるかな。だめだったら後で考えよう。



********************



シエルがまたローブのフードを被ろうとしたが、せっかく可愛いのにまたただの残念に戻ってもらっても困るので


「別にもう隠す必要も無いだろ? 何があっても(保護者として)俺が守るからさ」


と言ったら、赤くなりながら


「うん、わかったよ」


とフードを脱いだままにすることを承諾してくれた。あれか、年下に守ってもらうとか言われちゃって恥ずかしいのかな。


だが昨日の衝撃があればしばらくはこの程度の可愛さでは動揺などしない。あれは心臓とかそういうレベルでやばかった。死ねるかどうかはわからないけど、死ぬかとは思ったからな。


「そういえば護衛ってどこまでの予定なんだい?」

「言ってなかったっけか。ドワーフの国までの依頼だよ」

「ドワーフの国かぁ、ドワーフって言えば鍛冶が得意でお酒の大好きな小さいおじいちゃんってイメージだよね」

「ああ、そうだね。武器に斧とか持ってそう」

「わかるわかる!」


雑談をしつつ集合場所に行くと、大体出発の準備が整っていた。とりあえず護衛のまとめ役っぽくなってるケインさんに挨拶をしておく。


「おはようございます、ケインさん」

「ああ、おはようショウ。隣の人は……同郷の大事な人だったか」

「その節はすみませんでした。昨日ギルドに登録したシエルです。よろしく」


俺が答えるより早く答えるシエル。そこはかとなく嬉しそうに見えるが何でだろう。


「ああ、よろしく」

「ところでケインさん、シエルってこの依頼に同行させてもいいっすかね?」

「ええと、ちょっと待っててね」


確認を取ってみると、そう言って馬車のほうに行くケインさん。何人かと話してから戻ってくると


「ああ、問題ないってさ。でも依頼を受けたわけじゃないから報酬は出ないって」


とOKを出してくれた。他の人に聞く手間を押し付けちゃった感じだろうか、申し訳ないな。それに報酬を気にするほど金欠でもない。


「それで問題ないっす。ありがとうっす」

「いや、気にするほどの事じゃないさ。……出発の準備も整ったみたいだし、僕たちも馬車に乗ろうか。シエルはショウと同じ馬車に乗ってくれ」

「はい、わかりました」


馬車に乗って町を出発する。予定ではもう一度、今度はドワーフの町に行った後で目的地に着くらしい。まあドワーフの国に着いたらしばらく観光でもしてのんびり過ごそう。シエルのレベル上げを手伝うのもありかな。

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