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第十一話

山の中腹より下くらいだろうか、随分と麓が遠く低く見える所まで来た。雲も上や下、水平方向にも見える。視力に関してはレベルの恩恵を受けていないのか、できるだけ遠くまで見ようとしても海くらいしか見えず、豆粒のような街から人を見分けることもできそうにない。


その上、高度が高いために気温が低く、流石に水が即凍る程ではないがそれでも十分な装備がなければ人間などあっという間に凍えてしまうだろう。これよりも上に行けば凍る可能性は大いにある。まだ半分以上上があるようだが、少なくとも常識的な人間は即凍死するだろう。


「そう考えると、俺ってもう人間じゃな……いやよそう、勝手な予想で混乱したくない。」


自分は全然人間だと自己暗示をかけつつ、ドラゴンを探す。途中他の魔物、ゴースト的な何かやリッチっぽい骨とも遭遇したがなんの問題もなくサクッと倒せた。物理攻撃が通りそうにない感じだったが問題なくパンチ一発で散らせた。


道中でもやたらでかいクマや斧をもった牛っぽいやつ、恐らくミノタウルス的な名前の魔物であろうヤツ何かも見かけたし、やはり街の近くとはレベルの違いがある。結局のところは一発だが。


そうこうしているうちに、いかにもってかんじの洞窟に辿り着いた。いや、正確に言えば他にも崖の下や絶壁の中頃で見つけたのだが、飛び降りたり飛び込んだりするのは怖いので普通に入れる巣のようなものを探していたのだ。


普通なら警戒しながらだったり恐る恐ると言った感じで入るのだろうが、正直なところそろそろドラゴンが見つかれば他はどうでもいいといった気分になっているので、テンションを上げるためにも


「ダイナミックお邪魔しまーーす!」


叫びながら突っ込んでみた。誰もいないだろうし、魔力感知にもでかい反応一つしか無いのでそのへんの石を全力で投げ入れつつ入っていく。窓ガラスが割れないんだし、石ころでかんべんしてほしい。


「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


グルルーどかギャーとか、そんな生易しいものじゃない爆音が響く。なんとも形容しがたいが、きっとドラゴンの鳴き声なんだろう物が物理的な衝撃を伴って聞こえてきた。洞窟が震え、石ころどころかそこそこの岩まで飛んで行く。


「うおぉぉっと。」


衝撃波を耐え、障害物を避けて先に進むとかなり広めの空間に出た。別に財宝なんかは無いが、倒せれば一匹でそれに匹敵するであろう生き物がそこにいた。


実によくある典型的な形の頭に、忌々しげに唸りつつも歯をむき出しにしているために物凄い形相になっている顔。あれは誰がどう見ても怒っている。全体は黒く、鱗に羽に牙に爪、しっぽまで完備のやたらでかいそれは、完全にファンタジーのブラックドラゴンそのものである。


「おまけにまぁ、口の端からちょろちょろと炎が見えるんですけど。」


迫力に気圧されるが、自分の実力だって相手より高いはずだ。なんせレベルが19もあるのだ。そう負けるはずがない。そう思って鑑定を使ってみる。



・名前 (ドラゴン)

・種族 ドラゴン

・レベル 15 (748394/9999999999)

・HP 131759/144898

・MP 129487/134789

・力 7076 (42×168) ■■■□□

・体力 7244 (43×168) □□□□□

・器用 6570 (40×168) ■■□□□

・俊敏 5897 (35×168) ■■■■□

・魔力 6739 (41×168) ■■□□□



「……は?」


圧倒的だった。正直なめてた。油断しかしていなかった。そんな言い訳が頭のなかを過る。確かにレべルはこちらのほうが4上だ。しかしステータスはどうだろうか?



・名前 ヒラヤス ショウ

・種族 ヒト

・レベル 19 (48/100)

・HP 101847/102060

・MP 28732/29160

・力 6561 (9×729) ■□□□□

・体力 5103 (7×729) ■□□□□

・器用 5832 (8×729) □□□□□

・俊敏 5103 (7×729) ■■□□□

・魔力 1458 (2×729) ■□□□□



何一つ勝てていなかった。こっちは石を投げて一万、向こうはただ声を発しただけで二百近くダメージを受けている。ああ、与えたダメージならこっちのほうが上か。


恐らく逃げようとしても無駄だろう。そもそもこっちからダイナミックお邪魔しますをしたのだ、どうしようもない。


「まだ死にたくないんだけどなぁ。これはちょっとどころじゃなく厳しいよ。」


完全に自業自得な、慢心が生み出した不利な戦いが始まる。


「ーーーーーーーーーーーーー!」

「ちくしょぉぉぉ!やってやらぁ!」

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