美形年下武人殿下は想う3
チエアイス武王国と友好関係を結ぶ。
あるいは、罠やもしれんが…。
この命ですむなら惜しくはない。
「オズワルト団長、対象者は出かけてるそうです。」
エアスディアが言った。
「対象者とは、色気のない言い方ですね。」
ヤヒコ事務員が言った。
チエアイス武王国の迎賓館は機能的に作られている。
ウライシア工業国との同盟を見せつけられているようだ。
「ウライシア工業国のセシルーシャ王女殿下は対象者に惚れているそうです。」
エアスディアが言った。
そうか…よくわからない世界だな。
「いつになったら面会が叶うのでしょうか?」
ファサールが言った。
「待つだけだ。」
私は身体に沿った形のソファーに座って足を組んだ。
例えどんな相手でも、セツラの代わりにはならない。
どんなに麗しい相手でも…。
「麗しいといえば相手のエルフはどういう…。」
私は言った。
「ああ、溺愛だそうです、まあ、あの子本人はどっちかというとうといので、気がついてないらしいです。」
ヤヒコ事務員が言った。
溺愛だと?
「エルフ族の反応はどうなんだ?」
もし、こちらにつくならば考えなければな。
「エルフ族というか剣の一族のエルフ族は、か弱いあの子に戻ってきたもらいたいみたいです。」
ヤヒコ事務員が言った。
そうか、一族に戻せば…。
「あの子がいなくなったら、世界征服しそうと評判です、友好条約結んだほうが得策ですよ。」
ヤヒコ事務員が言った。
そうか、アイルパーンの議会は
婚姻での縁をなんとしても結べといわれた。
セツラがいることは無視のようだ。
『オズ坊、議会なんぞ、くそ食らえだ!お前にも幸せになる権利はある。』
イグサ老が行く前にいってくれた。
そして、いつもはついてこないヤヒコ事務員もついてきた。
私はなんて幸せなんだろう。
それだけで、使命を果たせる。
後ろに倒れ付したアーウィング副団長が気になったが…。
まあ、自業自得だな。
セツラをあんな目にあわせたのだからな。
ああ、セツラ…。
許されるなら、私こそセツラをさらって
いずこに逃げたい。
王族など生まれなければ良かった。
ああ、未練だ。
「誰か来たようです。」
エアスディアが言った。
警戒されないようにあまり人数的に揃えられなかった。
とくにアーウィング副団長と共に行動した団員は選べなかったしな。
チエアイスの外交担当者がきたようだ。
「オズワルト殿下、ようこそ、チエアイス武王国へ、陛下はただいま出ておりますがすぐにかえって参ります、おもてなしいたしたく存じます。」
外交担当者が言った。
みると聞くとは大違いだ。
軍部が力を持っていると思われたチエアイス武王国だが、内政もしっかりしているようだ。
なまじの対応ではいけないかもしれない。
本当に私のような男で大丈夫なのか?
「お受けしよう。」
今は観察するしかない。
「団長!」
エアスディアが言った。
「大丈夫だ。」
なぜ、心配する。
消す気ならとうに消しているだろう?
堂々と王宮にはいったんだからな。
そうそう、害は与えられないだろう。
国のために…国民のために…。
なにより、セツラのために
私は頑張らねばならない。
願わくは、今度生まれ変わったときは
普通の男でセツラと共に生きられる事を
今は名前が忘れ去られた、最高神に祈ろう。




