美形年下武人殿下は想う2
ああ、セツラ…私の心は
セツラしかいらないと言っている。
たとえ、身体が他の女のものになっても
心はセツラのものだ。
それ以前に生きて帰れないかも知れないが。
「本気でチエアイス武王国に婿入りするつもり?」
兄上が言った。
「ええ、向こうが受け入れればですが。」
私はどちらかというと繊細な美貌じゃないからな。
向こうの好みは繊細な美貌らしい。
まあ、政略結婚に好みもへったくれもないが。
「オズワルト、セツラちゃんはもう、要らないの?」
兄上が言った。
セツラ…セツラは私の宝だ。
でも、国は捨てられない。
エルフが本当に向こうにつけば
世界情勢、勢力図がかわるだろう。
今、エルフはどこにもくみしてないから
均衡が保たれている。
私がかの国に婿入りすれば
防げるかもしれない。
すくなくとも、エルフがひとつの国に
くみすることはないはずだ。
「じゃ、僕がお嫁にもらおうかな♪セツラちゃんが王太子妃になれば、どこの家も権力はにぎれないしね♪シキおじさんはそう言うの興味なさそうだ。」
兄上が言った。
確かにそう言う意味ではいいかもしれないが。
理性はそれは正しいという。
だが、心はセツラを誰にも渡したくない。
自分は他の女のものになろうとしてるのに。
私は両手を握りこんだ。
爪が手のひらに食い込むほどに…。
「オズワルトは馬鹿だな…お兄ちゃんにどうしたいかいってごらん?」
兄上が言った。
お兄ちゃんなんて言ったことはないぞ。
「私は…国を護るのが役目です、そのためならなにを投げ出してもいい。」
それで正しいはずだ。
カササダ竜騎兵団、団長としても。
アイルパーン竜騎国の第二王子としても
それが、私の役目のはずだ。
そのためにセツラを…。
なんで諦めきれない!
「まったく、昔っから素直じゃないよね。」
兄上が言った。
「素直?それで、国が護れるならいくらでもなります。」
それが私の一番大事な事だ。
「セツラちゃんは本当に私がもらっちゃうよ、後で返してほしいっていっても不可だからね。」
兄上が言った。
「これから、チエアイス武王国の高官と通信ですので。」
国同士の通信は大型の通信機で行う。
大画面の方が相手の様子もわかるし駆け引きしやすいからだ。
「ふーん、僕がしてあげるよ、苦手でしょう?」
兄上が言った。
…どういう風の吹き回しだ?
『え?結婚ですか~?…まあ、そのうちしますよー。』
チエアイス武王国、高官ウェルス・オピ・ケーケシが呑気を装って言った。
「オズワルト・エスローアス・アイルパーンをそちらの王室に縁づかせたいのですが?」
兄上がニコニコ言った。
『はあー…分かりました…検討いたします~。』
ウェルス・オピ・ケーケシが言った。
「検討と言わずに世界平和のためにご決断していただきたい。」
口を挟んでしまった…まずいか?
『でも…あの方…自分が筋肉あるから男らしい人好みじゃないんですよー。』
高官ウェルス・オピ・ケーケシが困った顔をした。
「そうですか、まあ、それはおいておいくとして、美貌のエルフさんと御成婚とか。」
兄上が私を制して言った。
『えーと、それよりいい加減友好条約むすびませんか?』
ウェルス・オピ・ケーケシがニコニコと言った。
それは友好関係と言う名の属国だろう?
「それについては、私はすぐにこたえられません。」
兄上が言った。
『そうですかー?良い返事をお待ちしていますー。』
ウェルス・オピ・ケーケシは言った。
なんだろう?さっきの悲壮感が消えたのだが?
「オズワルト、はっきりいって、竜に風状態だよ。」
通信が終わると兄上が言った。
竜に風とは、なにも効果のない?手応えのない状態の事だったか?
「どうすればいいんだ。」
私は呟いた。
絶対にエルフがチエアイス武王国につくのは
避けねばならない。
ああ、自分の身分がもどかしい。
こんな身分でなければ。
セツラを思う存分抱き上げて抱き締めまくるのに…。
ああ、セツラ、私の至宝。
愛している。
今、どうしてるのだろうか?
ああ、未練だ。




