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毒素擬人化小説《ウミヘビのスープ》 〜十の賢者と百の猛毒が、バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー〜 ……これは治療薬に至るまでの、長い道のりを記した物語である  作者: 天海二色
第五章 恋する乙女大作戦編

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第87話 6対1

「っ、はぁっ!」


 タリウムがダガーナイフに黒い靄を纏わせ、大太刀並みのサイズまで伸ばしパラチオンを両断しにかかる。

 上半身と下半身の間、胴を狙って横一文字に――


「切れ味が、悪いな」


 大振りにダガーナイフを振ったタリウムに向かって、パラチオンはズンズン接近していく。黒い靄が、胴体に当たっても構わず。

 そう。当たっているのだ、ダガーナイフに纏わせたタリウムの毒素は。確かにパラチオンに触れている。

 しかし効いていない。衣服を裂いたものの、毒素は体表で止まってしまっている。


「だから第二は小物なんだ」


 ガシリと、パラチオンがタリウムのダガーナイフに手を伸ばして掴む。ナイフを直接掴む左手も傷は付かず、血の一滴も流れていない。


(パラチオンとの手合わせは今回が初めてっスが、これが、第三課所属の毒耐性……!)


 宿す毒素の強さに物を言わせた、圧倒的な耐性力。

 感染者を処分する時と同じように、ただ単純に毒素を纏わせただけでは傷一つ付けられない。このままでは直ぐにパラチオンに殺される。

 そう悟ったタリウムだったが、パラチオンの右手が殴りかかってくる前に、右腕に鎖ナイフが巻き付き彼の動きを止めてしまった。


「ハッ! 捕まえた!!」


 神殿の2階、石柵の手摺に乗った状態で鎖ナイフを投げ、パラチオンの右腕を捕らえたクロールが勝気な笑みを浮かべる。

 パラチオンは毒耐性が強いものの腐食は多少効くようで、鎖が巻き付いた箇所の体表がジュゥウウと音を立てて溶け始めている。


「お前の右腕、俺がいただ……! うおっ!?」


 次の瞬間、クロールは宙に浮いていた。

 パラチオンが腐食性を厭わずクロールの鎖を掴んで、力の限り引っ張ったからだ。そしてクロールが空中に放り投げる事に成功したと見るや否や、パラチオンは腕に巻き付いていた鎖の端を素手で握り締め、握力のみで砕き粉々に壊す。

 鎖が途中で千切れた。それによって、クロールの毒素のコントロールも途切れてしまう。


「なっ!? しま」

「ヌルい」


 鎖が千切れてしまった以上、攻撃よりも体勢の立て直しを。とクロールが思案した直後、腹に、鉛の如き重い蹴りが、めり込む。

 そのまま内壁まで吹っ飛んでいき、石柱の一つに叩き付けられ、その衝撃を受け止め切れなかった石柱はくの字に折れて崩落してしまう。


「あ、ぐ……っ!」


 それによってクロールも死亡判定となり、その場から消えてランダム転移させられた。


「何あの威力……っ! だ、弾丸じゃないんだから……っ!」


 クロールがなす術もなくパラチオンに蹴り殺されてしまったのを見たクロロホルムは、槍を片手に涙目になる。タリウムの毒素が全く効いていなかった以上、同じ第二課所属のクロロホルムの毒素も効かないと見ていい。

 クロールの腐食とて、鎖を千切って取り払ったパラチオンの腕が瞬く間に再生している所を見るに、有効打にはほど遠い。


(ユストゥス先生きっての頼みで試合に参加したはいいけど、まず攻撃が当たる気がしない……っ!)


 だからと幾ら石柱の陰で幾ら隙を伺っても、パラチオンは全く隙を見せてくれない。このまま隠れていても悪戯に時間を浪費するだけだ。

 その時間が長ければ長い程、パラチオンは苛立ち更なる破壊を渇望してしまう。


「ぼ、ぼ、ぼくだって、頑張らないと!」


 意を決してクロロホルムは神殿の広間に出て、未だ滞空しているパラチオンの落下地点を予測、槍を構える。

 ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 しかしクロロホルムが攻撃を与えるよりも前に、無防備となったパラチオンを狙って2階から白い発光体が発射される。銃を持っているのは味方陣営ではただ一人。

 ニコチンだ。


「クハッ! 相変わらず小賢しい野郎だ!」


 がしかし、パラチオンは自身に向け放たれた弾丸を、左手に持っていた屋根裏の瓦礫で防いでしまった。彼はニコチンの動きを事前に読んでいたのだ。

 尤も防ぎ切れた訳ではない。ニコチンの銃弾はコンクリートだろうと鉄だろうと穴を空ける。当然、石製の瓦礫も穴を空けて貫通する。しかし瓦礫というクッションを挟んだ事で威力は落ち、パラチオンに当たった弾は打撲を与える程度となった。

 そして彼は、クロロホルムが待つ地上へ降りてゆく。


「ぅえっ!?」


 突然の銃撃に呆気に取られていたクロロホルムが、慌てて槍を構えなす。だがパラチオンの動きの方が早い。

 銃撃で鋭利に砕けた瓦礫をクロロホルムに向け投擲し、彼が躱せば瓦礫は床に直撃。そこから亀裂を走らせ足場を不安定にし、構えを崩させてしまった。

 そしてパラチオンはクロロホルムが体勢を立て直す前に着地をすると、すかさず蹴りをぶち込む。その蹴りを咄嗟に槍の柄で防ぎ直撃は免れたクロロホルムであったが、踏ん張り切れる威力ではなく壁に向かって吹っ飛んでしまう。

 クロロホルムが吹っ飛んだ先では、死亡判定を受けランダム転移されたクロールがふらつく足で石柱を支えに立っていた。仮想空間の中では痛覚はほぼないものの、叩き付けられた衝撃によって頭が揺さぶられ目眩を起こしているのだ。お陰で一緒に再生した鎖ナイフを構える事も出来ない。


「あの、馬鹿力……っ!」

「きゃうっ!」

「ぐえっ!」


 そこにクロロホルムが直撃してきて、クロールは彼諸共床に転がってしまう。


「クロロホルム! 立て直しの邪魔するんじゃねぇ!」

「そ、そんなこと言ったってぇ〜」


 クロロホルムはクロールの上で目を回している。彼もどこかで頭を打ったらしい。

 ともかく急いでこの荷物を退かさねばと焦るクロールに、背の高い影がかかった。


「うわぁっ!?」

「げっ!」


 その影は勿論、パラチオン。

 彼は重なる2人に向け手刀を構えると、胸に向け垂直に振り下ろし、背中まで貫通させた。いや、腕一本で串刺しにしたという表現の方が近いかもしれない。

 それによって死亡判定を受けたクロールとクロロホルムは、ランダム転移しその場から姿を消した。

 チッ、と。パラチオンが盛大に舌打ちをする。


「毒素以前に、体術がヌルいとはどうなっている! こんなものでは! こんなものでは! 俺様の渇きが収まる訳がないだろうが!!」

「本当ねぇ。ボクも出なきゃ、駄目みたい」


 直後、真横から銀の細剣が、パラチオンの紅色の目を目掛けて襲い掛かる。

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