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5-5 老領主が支配する戦場

 フラット領フラット海岸防衛戦の序盤に右翼に展開したスカイウォーカー騎士団「アイアンウォール」の活躍によりエレメント軍左翼は瞬時に崩壊した。その速さは風の如く、その硬さは鉄壁の如く。いまだにエレメント軍右翼が突撃体勢を取れておらず睨み合いの状態で、戦線は大きく崩れたのであった。

 魔王アルキメデス=オクタビアヌスはハルキ=レイクサイドの策略により、北西の無人島へ隔離されたためにこの局面では全く指揮を取れていなかった。かの「無限魔力」にどう対応したかについて資料は残っていないが、当時の人間はそれをハルキ=レイクサイドならば成し遂げる事ができると理解していたという。

 


「ハルキ様、第3部隊のほとんどがノーム召喚に加わっておりませんが、よろしいのでしょうか。こちらが余っているならば戦闘に加わらせたほうが・・・。」

「甘いな、フィリップ。俺なら最初に余力を残して様子を見る。そしてこちらが油断した所を最大の力をもってして打ち破るのだ。そのために、こちらも余力は常に残しておかねばならない。あ、それポンね。」

「だけど、第1部隊も、僕の第4部隊も半分は召喚には加わってないよ。あ、リーチ。」

魔王といえども魔人族である。体表面を覆うノームの数も限られてくる。特殊魔法と違って、自分の体表からしか破壊魔法は発する事ができないという特性もこの「ノーム玉封印」にはプラスに働いていた。

「まじか!?どうしようかな・・・、あ、魔王はこのままよ。どうせ戦闘に加わったところであいつらの手柄奪っちゃうだけだし。通れっ。」

「ロンですわ!確かに、夫が張り切っていましたわ。いつも召喚騎士団に手柄取られてるからって。」

「まじか!?次俺の番?MP回復する薬って、なんであんなにまずいんだろう?」

罰ゲームの青い汁を飲んで出撃する。

「次は俺の番だってぇ、代わるよぉ。あ、20分は俺一人で十分だから皆休んできなよ。防壁替わりのアイアンゴーレムだけ残しといてね。」

「ハルキ様!お願いします!」

「やった!ハルキ様だ!お願いします!」

「くぉらぁぁぁぁぁ!!!なんでお前ら遊んでんだぁぁぁ!!!!っていうか、いい加減しつこいわぁ!!」

前世でも麻雀好きだったんだよ、パソコンでしかやった事なかったけどな。持ってこさせて正解だったな。さて、ノーム召喚しますか。



 戦局はヴァレンタイン左翼へ。だが、左翼の状況は右翼とは打って変わって別の要素を含むものであった。打倒した敵は皆無、しかし策略は戦場を支配する。この時のタイウィーン=エジンバラは右翼のルイス=スカイウォーカーよりも戦術面においてはるかに上回っていたというのが正しいであろう。


 ヴァレンタイン軍左翼、主力はタイウィーン=エジンバラ率いるエジンバラ騎士団とローエングラム=フラット率いるフラット騎士団だ。

「なぜ、我がフラット領での戦闘なのに我々が左翼なのだ!?」

ローエングラム=フラットは不機嫌である。

「フラットの若造、おぬしがそんな事ではジルベスタも引退するにできぬわ。」

「ぐっ、しかしタイウィーン殿!エジンバラ領もそうですが、我々はアイオライ王に疎んじられているとしか思えませぬ!」

「そう思っておるのはおぬしだけよ。フラット領はこれでも優遇されている方だ。生き残りたければ回りをきちんと見るのだな。そら、我が右翼が敵左翼をほとんど壊滅せんが勢いで押しておる。」

「なっ!?」

「さて、敵右翼が来るぞ。どうするか。」

「それは!もちろん迎え撃ちます!我がフラット領の防衛の歴史をお見せいたしましょう。」

「だから、まだ若いというのだ。ここは右翼とはできるだけ交戦しないがよい。向こうの突撃を躊躇させる策はないかのう。ローエングラムよ、このヴァレンタイン左翼が何故、敵右翼を壊滅させてはいかんのか分かるように成長せよ、この戦闘の間にな。」

「・・・タイウィーン殿?」


 エジンバラ騎士団は一度突撃体勢を取ったのちに陣形を変えて防御態勢に入った。それをみたエレメント軍右翼はタイウィーン=エジンバラの思惑通り突撃を躊躇する。この時間が非常に貴重だと理解できていたのはタイウィーンを除けばジギル=シルフィードと他数名だけだったろう。少なくともエレメント軍の中枢にはいなかった事は間違いない。


「ほら、これでよい。我々はあとはここにいるだけでよいのだ。」

「タイウィーン殿?私が未熟なのは分かりましたが、どういう事なのでしょうか?」

「まだ分からんか。では、この戦いの目的はなんだ?」

「エレメント軍を撃退し、ヴァレンタイン王国を守ることです。」

「・・・違うな。」

老獪、まさにそれがこの領主には似合う。

「この戦いは、魔王アルキメデス=オクタビアヌスが戻ってくるまでに、敵をこれ以上ないほどに殺すことだ。追い払う事ではない。数を減らす必要がある。」

「・・・それは・・?」

「あの魔王は我々の軍では倒せんよ。倒せたとしても、エレメント軍が何も干渉してこない事が前提だ。つまり、これは戦争ではない。制限時間付きの狩りだ。獲物は魔人、狩人は我ら、制限時間はレイクサイドの小僧が決める。そなたは獲物を取り逃がしてもそやつらに勝ったと満足できるのか?」

「!?」

「殲滅が必要だ。ここで両翼が押せば、奴らはメノウ島へ引きこもる。そうさせないためには敵右翼を保持し、勢いのついた我が軍の右翼が左翼ごと退路を断つのを待たねばならない。」

「なるほど!」

「・・・ここまで説明が必要だったか、ジルベスタも大変だな。どこぞの領地とは雲泥の差だ。」



「はははっ、タイウィーン=エジンバラ!侮れん!」

ヴァレンタイン軍本陣。ジギル=シルフィードが高笑いしている。

「ここまでエレメント右翼を翻弄するとは思わなかった。ルイス殿も勇ましい。人類も捨てたものじゃないな。」

本来ならば、平均魔力は魔人族の方が格段に上なのである。特に一般的な陣形であれば敵左翼の突撃力は半端ないものであり、あれはスカイウォーカー騎士団「アイアンウォール」以外では無傷などありえない。

「あとはハルキ殿が耐えきってくれるかどうか、・・・。」



「何故だぁぁぁぁ・・。何故・・・。俺様が・・・。こんなぁ・・・??」

「いい加減うるさいな。テツヤ呼んできて次元斬で斬ってもらうか?」

「あ、それいいんじゃない?その時はリリスにもういっちょ「グラビティ」かけてもらうからさ。」

「・・・ハルキ様、冗談じゃなく有効な手のような気がしてきました。」

「たしかに、無限魔力関係ないですからね。あれを防げたのはフラン様の魔力の乗ったペンドラゴンだけですしね。」

「そうじゃなくてもすでに精神的にやられてきてる気もするけど。」

「その前に一回ノーム玉ごとアイアンゴーレムで空爆してみようぜ。」



 魔王アルキメデス=オクタビアヌス。この後アイアンゴーレムの空爆を気合でしのぎ切った後に逃げるようにエレメント軍本陣へと飛行することになる。しかし、彼を待っていたのはほぼ壊滅したエレメント軍と、再度ノームに捕縛された場合に彼を斬る事のできる敵国の魔王だった。




初レビューをいただきました。

「北海ひぐ○」様ありがとうございます!

頑張ってきたのが報われたようで嬉しいですね。


・・・おかしい、うちの作品にギャグの要素がありましたっけ?タグつけてないんだけどなぁ。

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