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3-6 裸の付き合い

 第2階層はキャンプした所からすぐの場所にあった。第1階層はところどころ穴があいてて光が入ってくる洞窟って感じだったけど、第2階層はひんやりした完全な洞窟で発光する苔がそこらじゅうに生えている。

「ヒカリダケがこんなに。」

たいまつはいらないね。アイアンドロイド1体は相変わらず荷物持ちに役立ってるよ。

 進んでいくと大きな空間に出た。地底湖ってやつかな?少し潮の匂いがするからどこかで海につながっているのかもしれない。結構内陸なんだけどなぁ。ところどころ島があって、それをつなぐかのようにまるで道ができている。あの遠~~くに見える壁の奥に穴があるけど、あそこまでこの島を渡って行かなくちゃいけないみたいだ。

 

「魔物が来るぞ。」

昨日のベッド替わりにハルキ様が召喚したフェンリル3匹はそのまま召喚状態を維持されている。索敵にも役に立つできるオオカミだよ。僕のフェンリルは還してしまった。さすがにハルキ様みたいにアイアンドロイド4体とフェンリル3匹召喚しておきながら、むしろ魔力の回復量の方が多いなんて事はない。

「どっちからだ?」

島の上にいるために見晴らしはいいはずなんだけど・・・・と思ったら前の崖の下からでっかいクモが壁をつたってきたのかにゅっと現れた。

「ジャイアントスパイダーか、旨そうだな。毒に気を付けろ。」

ビューリング!違うから!あれは食べないよ!

「ビューリング、虫を食うのはやめた方がいいよ。」

ほら!ハルキ様だってそう言ってるよ!

「むう、旨いのに。純人には分からんのか?」

「分かりたくもねえよ!」

 ハルキ様とビューリングの漫才を聞きながら僕は黒騎士を召喚する。クモならば、剣が通るし、鎧には毒は効かないはずだ。召喚された黒騎士は難なくジャイアントスパイダーを倒した。

「湖に捨ててしまえぃ!」

ハルキ様の言う通りに湖に捨ててもらう。ビューリングが後ろでもったいないとか何とか言ってるけど無視するよ!ごめんね、ビューリング!僕が見えない所でやってね!

「・・・あれ、おいしいのかな?」

ユーナぁ!!待って!そっちはだめだ!

「あなた、あんなものまで食べるの気!?信じられない!?」

レイラの言う事が正しいよ!戻っておいで!

 その後も蝙蝠の魔物であるジャイアントバッドや虫系の魔物だとかが中心に出てきた。ビューリング的には大森林ではよく食べるやつらだとか何とか言ってたけど、絶対食べないからね!


 地底湖を過ぎるとまたヒカリゴケにところどころ覆われた通路になった。

「この苔には魔力が宿っているんだろうな。もしかしたら成分を分析するとたいまつの代わりになるかもしれん。ちょっと採取しとこう。」

ハルキ様はいつもどおり、どんな事柄にでも興味を示される。見習わなくちゃ。

「さて、第3階層まではまだまだ通路を歩かないといけなさそうだ。少し休憩しよう。」

確かに結構なスピードで歩いて来た。今日中に第2階層を踏破する必要は全くないから、休憩できる時にしておけばいい。朝寝坊したから急いでみたのが逆に良かったみたいだ。

「早いけど、キャンプにする?」

「そうだね。ハルキ様、今日はここまででキャンプにしましょう。」

「はいよ。じゃあ、ユーナ、料理手伝ってくれ。他はテント作ろうか。」

 各自に分かれてテントの増設と夕飯の支度を行った。今日のメニューはユーナ特性のシチューらしい。何の肉が入っているかはあえて聞かなかったけど、多分レッドボアだな。レドン草とヒカリダケまで入っていて、魔力がみなぎるのが分かるのに、旨いというのはどうしてだろう。

「本当に、料理の腕はかないませんわね。」

レイラもしぶしぶ認めてしまうほどの旨さだった。

「今度はクモも挑戦してm・・・。」

「「やめろ!」」

「なんでだ?旨いのに。」


 昨日からおなじみになったハルキ様の特技がある。それはサラマンダーとウィンディーネを同時召喚して行うものなんだが、特に女性陣に大好評だ。そう。シャワーである。そして本日は・・・。

「この岩をくり抜いてバスタブにしてしまおう!」

とか言ってるんだけど、この人ここに何しにきたの?

「岩をもくり抜く召喚獣って何かな?」

そんなんいないよ!・・・って、黒騎士でくり抜くのはやめて!また自信喪失する!魔力の無駄遣いが半端ないんだけど。あ、それが修行になってるのかも!



「いいお湯でした。」

ほかほかの女性陣が湯船に浸かって出てきた。見張りはフェンリルがいたために覗けてません。いや、覗くつもりなんてなかったんだからね!

「むう、俺もセーラさん怖いしなあ。」

「純人にはあまり興味が湧かん。」

「そういう事を言ってるんじゃんないよ?もともと覗くつもりなんてないんだからね!」

3人で風呂に入る。あ、いい湯加減だ。完璧だよ、サラマンダーさん。 

「奈落のど真ん中で入るお風呂も格別だな~。」

ハルキ様の言う通りなんですが、やっぱりこれおかしいよね。というより、こうしている間にも魔物が襲ってきているけど、無駄に魔力を込められて召喚された黒騎士達が撃退していて僕たちは完全に気を抜いて休憩しているというのが異常だよ。やっぱり、召喚魔法って奥が深いや。

「・・・それは違うと思うぞ、テト。」

湯船に浸かった状態でハルキ様が言う。奥が深くないの?

「そうなの?でも、他の魔法を得意にしている人たちにはこんな事できないよ。まあ、ハルキ様いなかったら僕らでもここまでの事はできないんだけど。」

「まあ、これはかなり極端な事だからなんだけど、他の魔法もね、要は使いようだよ。」

「使いよう?」

「そう。今まで、召喚魔法はその消費魔力が馬鹿みたいに多すぎて使い勝手が悪いと言われてきたんだ。」

「今でも結構そういう風潮あるよね。」

「うん、だけど実はこうやって便利に使う事もできれば最強の戦力にもなりうる。ゴーレム召喚がいい例なんだけど、俺はあの召喚獣は戦闘に向いてないからあんまり使わないんだよね。フィリップは好きだけど。」

「たしかにハルキ様は戦闘にゴーレムを使う事少ないよね。空爆の時くらい?」

そうなんだよ。ゴーレム嫌いなのかな?

「フィリップみたいに使ってもいいんだけど、あれ遅いんだよね。その代わり、戦う前の土木工事にはものスゴい威力を発揮するから好きな召喚獣ではある。実際、クレイゴーレムいなかったらレイクサイド領は発展しなかったしね。たんなる農作業がすごい領地で終わってた。」

そういう事ね。

「それで、空爆の時にもものすごい威力を発揮する。本当はあの巨体を上空に持っていくのにはものすごいエネルギーを必要とするんだけど、その位置エネルギーの関係を魔法で乗り越えてしまうんだからひどい話だ。あんな重量の物を高度何千メートル上空にあっという間に召喚してしまうなんてな。エネルギー保存則は全く通用しない。」

ん?途中からよく分かんないや。

「とにかく、イメージすると色んな事を魔法ってやつはしてくれるんだよ。召喚魔法に限らずね。それがすごければ何でも破壊する魔法や死んだ者を生き返らせる魔法があってもおかしくない。でも、皆なぜか常識にとらわれているから、前に誰かがやった事のあるやり方しかやらないし、やれないんだ。」

「イメージ・・・。」

「簡単に言うと、頭で考えれば魔法でなんとかなる世界なんだよ。ここは。」

それは夢が叶うってことかな?ちょっと難しいけれど、このお風呂もそうだし、もしかしたらもっともっと魔法に可能性があって、それは召喚魔法だけに限らない事なのかもね。今日も沢山、勉強になったよ。


 そして、長湯した3人は完全にのぼせてしまうのであった。


テトは今日も勉強あるのみです。

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