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3-4 3兄弟って・・・

「そろそろスカイウォーカーの町周辺にはSランクがいなくなってきちゃったから、他の場所に移動しようかな。」

スカイウォーカーを拠点にして2週間が過ぎた。Sランクの魔物なんてほとんどいないためにAランクを中心に討伐をこなしてきたが、それもほとんどなくなってきている。魔物の発生は一定数である事が多い。

「そうだね!それじゃ、次はどこ行こうか?」

「たまには他の場所で依頼を受けるのも悪くないですわね。」

レイラが加わってからは堂々とSランクの討伐依頼を受ける事ができているために、他の場所に移っても問題ない。現在は僕もユーナもAランクまで自然と上がっていた。

「レイラはテトがいないとSランクの実力はないから、他の場所ではばれないように気を付けないとね!」

「なんですって!?そういうユーナこそ、全く役にもたってないのにAランクまでもらっちゃって!」

「はいはい、喧嘩しないの。」

この2人の中の悪さは相変わらずなんだけど、なんでこんなに仲が悪いんだろう?


「そうか、もう出ていくか。だいぶ助かってたんだがな。」

僕らが分かれのあいさつをすると、レンネンさんは寂しそうにそう言った。

「それで?次はどこいくんだ?」

「エルライト領へ行こうと思ってます。魔力が多いから魔物が多そうですし、なんか「魔力の洞窟」でしたっけ?あの魔物が大量発生してるっていう洞窟があるって聞いた事があるんで。」

 ハルキ様が昔、「ダンジョンだ!行ってみたい!」って言ってたけど結局捕獲されて行けなかった所があるって言ってた。なんだが地下に入る大洞窟らしいけど、魔力が豊富で中から魔物が湧いて出てくるんだって。普段は放置されてて誰も近寄らないらしいけど、修行にはもってこいの場所だと思う。ところでダンジョンって何て意味なんだろう?

「わざわざ魔物を狩りに辺境まで行くのか。さすがに「深紅の後継者」だな。」

「それ!僕はその二つ名を変えてみせるんだ!ハルキ様の後継者は光栄だけど、僕は僕だからね。」

「テトちゃん・・・。」

「レイラ、その呼び方やめろ。」

「はっはっは、これは頼もしい。期待してるぜ、ただのテト。」

「うん。頑張るよ。」

そして僕たちはエルライト領へと飛び立った。

「ちょっと!何であなたがわたしのワイバーンに乗ってるのよ!自分で召喚すればいいでしょ!?」

「だってワイバーンは2人まで乗れるのよ!魔力は節約したほうがいいじゃない!テトちゃんには断られちゃったし!」

「私も断る!」

「・・・はぁ、仲良くね。」



 その日の夕方にはエルライト領に着いた。まずは宿を取って、冒険者ギルドを見てこようかな。「魔力の洞窟」に関する噂とか依頼があったら見ておきたいね。だけど、そこで僕は思ってもみなかった人と再会する。というか待ち伏せを受ける。

「俺の名前はホープ=ブックヤード!Aランク冒険者だ!」

「俺の名前はストロング=ブックヤード!俺もAランク冒険者だ!」

「助けてくれ、俺は心底ブックヤードの姓を捨てようと思っているんだが。」

「「俺たちブックヤード3兄弟!」」

「おい、ビューリング!ちゃんとやれよ!」


 見なかった事にしよう。ユーナ、変な人たちがいるから近寄っちゃだめだよ。

「おお!そこの冒険者の人よ!なんだか「魔力の洞窟」に関して興味がありそうな顔をしてるじゃないか。ん?よく見ると3人しか仲間がいないぞぉ。それじゃ通称「奈落」とも呼ばれている洞窟に挑戦するには少し人数が足りないなぁ。よし、このホープ=ブックヤードが力を貸してやってもいいんだぞぉ?」

「へいへい!兄弟は奥方様にしつこく付きまとって怒られたから傷心旅行中なんだぜ!」

なるほど、いつものやつね。

「きゃー!ハルキ様!奇遇ですね、こんなところで!」

「あ!ハルキ様にウォルター様、ビューリング様まで!どうしたんですか?」

レイラ、ユーナ、ちょっと空気読んでてくれるかな?

「うふふ、俺はホープ=ブックヤード、Aランク冒険者だ。決してエレメント帝国に大打撃を与えたハルキ=レイクサイドでは・・・ない・・・・。そう・・・俺は悪くない・・・死のう。」

「ハルキ。元気出せ。ダンジョンとやらに行くのを楽しみにしてただろう?奈落の奥で狩った魔物を使った料理でセーラ様を喜ばすんだろ?それにテトとユーナが無事だった事も確かめれたんだ。この前のことはお前は悪くないし、むしろ誇りに思え。レイクサイド領にはハルキ=レイクサイドがいてくれて良かった。」

「ありがとう・・・ビューリング!」

「友のためだ。気にするな。」

「ハルキ様とビューリング様の友情物語!いいわぁ!」

なんだよ、この寸劇・・・。レイラも受けとか攻めとか意味わかんないから。

「それで?結局なんの用で来たの?」

「いや、テトが「奈落」に行くっていうからずるいって思って。」

「誰に聞いたのさ?」

「お昼にレンネンを尋問した。そしてウインドドラゴン飛ばして先回りした。本気出したらここまで3時間だし。」

よし、この旅の目標が一つ増えたぞ。僕も絶対にウインドドラゴン召喚契約してやる。

「ハルキ様がついて来たら僕の修行にならないんだけど。」

「よし、じゃあお前はお留守番で俺が行くとしよう。ユーナもレイラも付いて来るか?」

「はいはい!行きます!」

「もちろんですわ。どこまでもお供します!」

「あー!!!もー!!!」

どうしてこうなるの!?


 ウォルターは忙しいから帰るらしい。3兄弟するだけに来たのかな?ハルキ様とビューリングがパーティーに加わって、5人で「魔力の洞窟」を目指すことになった。最近は通称で「奈落」と呼ばれていて、そっちの方が定着しているみたいだ。これからは「奈落」と呼ぶことにしよう。


「ハルキ様、ウインドドラゴンの契約条件を聞いてもいいですか?」

「ウインドドラゴンか、あれは風の魔石と、クレイジーシープの角、シルバーファングの毛皮に、あとはマザースネークの頭、で羊皮紙だったな。シルバーファングはヴァレンタインにいないから手に入りにくいけど、ヒノモト国なら余裕で持ってると思う。あとは、頑張れ。特にマザースネーク。あれめんどくさい。」

マザースネークか。「奈落」にいればいいな。

「「奈落」にはいるかもしれんぞ。俺のもエルライト領の辺境で討伐されたものだったしな。」

それは俄然楽しみになってきた!とにかく修行だ!ハルキ様はとりあえず放っておこう。



「ここが、「奈落」?」

それは森の中にあるたんなる穴というか洞窟というか。もっと玄関みたいなのがあると想像していたけど、全然ちがった。ただ、穴の大きさは結構大きくて、大型の魔物でも出てこられそうな感じがする。

「よし!準備が整ったら入るぞ!」

ハルキ様、アイアンドロイド4体分の荷物ってどれだけ潜ってるつもりなんだよ。まあ、備えがあるのはいい事だし、ハルキ様の魔力を考えればこいつら4体なんて何日召喚しててもよさそうだしね。

「それじゃ、中の魔物は基本的には僕が倒すからね。ハルキ様は他の人を守ってくださいよ!」

「うい~、了解。」

「テト、きつくなるようだったらすぐに言うんだぞ。いつでも助けに入れるようにしておく。」

「ありがとうビューリング。だけどこれは僕の修行なんだ。できる限り頑張るよ!」



 こうして僕らの「奈落」探索が始まった。僕は修行のため、マザースネークの狩猟のため。ハルキ様はまだ見ぬ魔物の料理でセーラ様を喜ばすため。ビューリングは子守り。それぞれの思惑が全く交差しないけど、ヴァレンタイン大陸で最も魔力が強く魔物が発生しやすい場所へと足を踏み入れる事に、少しだけワクワクしていたのも事実だった。


誰だ?ハルキ出てこないなんて言ったやつは?

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