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3-6 魚介類最高

 テツヤの船に降り立った俺たちは乗組員たちに迎え入れられた。

「おい、いつものヘテロ殿たちじゃないぞ。なんだあの巨大なドラゴンは?」

「もしかしてヴァレンタインの偉い奴じゃないか?」

「魔王様のご機嫌が良い。もしかしてものすごく強い人間なのかも・・・。」

いろいろと噂されている。・・・帰りたくなってきた。


「お待ちしておりました。」

おお!ラミィさん!知っている人に会うとホッとするよ。

「ラミィ、帰ったぞ。では国まで進路をとれ。」

「はっ、すぐさま回頭します。」

きびきびと動くラミィさんとその部下たち。海賊と聞いてたが、意外にも規律が厳しそうだ。

「この船はでかいからあんまり揺れないでいい。甲板も部屋も自由に使ってくれ。おい、客人を案内しろ。」

「はっ。」

なんだか、レイクサイド領と違って命令に忠実だ。

「お客人、こちらへどうぞ。」

魔人族の一人が案内してくれるようだ。

「うむ、世話になる。」

アイオライ王子とともに客室に通される。船内であるのにかなりの広さの部屋が用意してあった。これならくつろげそうだ。

「さっそく、夕飯にはヒノモトの海産物をふんだんに出すように言ってある。まあ、いつもはそっちにばっか御馳走になってるからたまにはヒノモトを楽しんでくれや。」

テツヤが楽しそうだ。意外にも客をもてなすのが好きなのかもしれない。

「はっはっは、それは楽しみだ。」

アイオライ王子は相変わらずだ。


 しかし、航行で順調なのは天気だけだった。意外と波も高い。船が大きいのでほとんど揺れはないが。

「魔物がでたぞー!」

「ひさびさにクラーケンだー!」

イカの魔物であるクラーケンだ。さすがに船ほどは大きくないとは言え、かなりの巨体である。甲板まで触手がかるく届いており、頑張って船を引きずり込もうとしているようだ。小さな船だったらあっという間に転覆させられていただろう。

「うおらぁ!!」

魔人族の船乗りが銛を突き立てまくる。中には雷の破壊魔法を使うものもいた。

「胴体に魔法は厳禁だ!分かってるだろうな!やるなら足を狙え!」

「「あいあいさー!」」

テツヤとその仲間たちがおもいっきし海賊してる。というよりも漁師なのだろうか。

「魔法を当てると刺身になんねえからな!!」

そういう理由かい。

 クラーケンはあっという間に討伐されると甲板で解体され、胴体とゲソに分けられた。内臓はさすがに食べないから海へ捨てるのだという。食材に変えられてしまったクラーケンは氷の魔法をかけられて専用の保存庫に入れられた。

「さすがに慣れているな。海産物は鮮度が大事というが、ヒノモトのやり方は徹底している。」

「おう、うちは生で食べる事もあるからな。この前ビューリングに醤油もどきをもらったから刺身が楽しみだぜ。」


 その日は船の上での夕食となった。その日取れた魚介類が多く、鮮度は抜群だった。

「これは旨い!」

アイオライ王子もご満悦だ。俺もこっちにきてから海産物系はほとんど食べられなかったから大満足である。特に醤油もどきで刺身を食べたのが感動的だった。テツヤも同じ感動を味わっているだろう。

「これだ!これが刺身だ!分かるか?ハルキ!」

「ああ!これだ!これが刺身だ!おい、ワサビがないぞ。」

明らかにテンションおかしめの二人。だが、これは遠く日本から飛ばされてきた者にしか分からんよ。

 魚介類が最高なのは分かった。ワサビがほしかったが、今度レイクサイド領で調べさせよう。初めてアイオライ王子についてきて良かったと思ったよ。クラーケンの刺身も、ゲソの煮込みもなかり旨かった。さすがに航行中なので酒はあまり出てこないか。


 そして次の日、ヒノモト国へ着いた。そこはヒノモトの玄関口とも呼ばれるレイル諸島、レイルの町。大きな港町にはヴァレンタインや他の大陸から輸送されてきた物資が集まる。何十隻もの船がひしめき合う港で、もっとも大きなテツヤの船が専用の船着き場に入港した。

「おおお、すげえ歓迎されている。」

「当たり前だ!こう見えても俺は魔王なんだ。レイクサイド領でのお前と一緒ってことだ。」

「おい、俺はヴァレンタインでもこんなに歓迎されたりしないぞ。」

アイオライ王子・・・南無。

「アイオライはこれからだ!それに今のヴァレンタイン王家はだめだ。レイクサイド領を見てればわかるだろう?」

「うぐっ、痛い所を突くな。たしかに俺もダガーもそう思っていたのは事実だ。」

「だろ?民を見て、会話して、考えるんだ。レイクサイド大収穫祭に参加したなら分かるはずだ。」

テツヤ!あんたって子は!ちゃんと魔王してるのね!というか、魔王という感じじゃないな。もっとこう、恐怖政治とかしてるイメージが・・・。

「まあ、魔人族は単純な戦闘狂ばっかだから力の差を示してやれば素直になるんだけどな!」

いや、それだけじゃないだろう。この港町を見ていればわかる・・・気がする。

「さあ、レイクサイド領ほどではないが、そこそこに発展させた町だ。歓迎するぜ!」


 こうして俺たちはレイルの町に入った。魔人族の町は初めてだったが、あまり人の町と変わらないな。

「少数だが、純人も住んでいる。もともとは奴隷だった身分のやつらだ。あまり気持ちのいい連中ではないが、少しずつ慣れてきている。」

 魔人族は純人を奴隷として使う風習があった。奴隷の数はあまり多くなかったのでテツヤがこの風習を禁止し、奴隷たちは自由の身となったとのことだった。だが、自由の身となった純人たちは特に手に職を持っていたわけでもなく、どこに行っても仕事をもらえるわけでもなかったという。そこで製造業、特に船の建造を中心にテツヤが雇い入れて今に至っている。この政策に反対したものはテツヤが実力で黙らせたそうだ。というよりも、何かしらの政策を打ち立てる際にはお祭り騒ぎのように魔王に挑戦するやつが出てくるらしい。テツヤが定期的にヒノモトに帰っていたのもこの会議(笑)に出席するためだった。


「おお、いたか、ジル!」

ジルとよばれた魔人族はかなりの巨躯で、3mはあるのではなかろうか?

「こいつはジル。俺の側近だ。ジル、アイオライ=ヴァレンタイン王子とハルキ=レイクサイド・レイクサイド領次期当主だ。後ろがフラン=オーケストラ、2人の護衛だ。」

「ヨロシク。ジルトイイマス。」

ジルは無口な男だったが、実は根がやさしい奴だった。いろいろと俺たちの世話を焼いてくれる。とりあえず、数日はレイルの町に滞在することとなった。その間にアイオライ王子は色んな物が食べてみたいということで、屋台をはじめとしてかなりの店を回ってみた。確かにレイクサイド産の穀物を除けば海産物くらいしかなさそうである。

「レイクサイドから穀物を輸入し始めるまではやたら穀物の値段が高くてな。主食という概念もなけりゃ、魚ばっか食ってて栄養が偏っちまう奴も多くて困ってたんだよ。あんまり作物の出来も良くないし。」

しかし魚介類の料理の種類が豊富である。

「虫系はだめなのに、甲殻類は大丈夫なんだな。」

それが日本人だ、アイオライよ。貝やカニ、エビならいくらでもいけるぜ!このグルメツアーも場所を選べばいいものだ。


 そんな中、予定を大きく狂わす出来事が起こる。

「古代ノ遺跡とオモワレル入口、ミツケタ。」

ジルがもたらした情報、それはレイル諸島の南にある島で、地下に存在する巨大な遺跡をみつけたとの事だった。



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