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1-5 腹部破壊魔法

 大陸西部の大森林。レイクサイド領の西部から少しいった箇所に猫型獣人の集落があった。ほかの集落より純人の支配地域に比較的近いために軽度であるが交流がない事もない地域である。特に昨今はレイクサイド領の食糧事情が改善され、安価で安全な穀物をはじめとした森林地帯で取れにくい食糧が確保できるために狩人を中心に行き来する事も多くなってきていた。

 そして東部の情報が流れてくるにつれて、戦争の情報も入ってくる。大森林の集落の中でも、魔人族の襲来に対して同じ大陸に住む者として戦士を派遣するべきだという考えを持つものがいたのは事実だ。

 ビューリングはこの集落の代表として、エルライト防衛戦に参加するべく出て行った男であったが、先日純人の友人をつれて帰省していた。一旦、その友人は帰ったはずだったが、現在ビューリングとともに大樹門のところで談笑中である。さらにもう一人の友人をつれて。


 それは数日前にさかのぼる。

「だから、敗因はお前が皆の前で恰好いい所を見せなかったからだと思う。」

「恰好いい所っつったって。」

「残念ながら、魔人族は純人には受けが悪い。テツヤの印象を良くしてからでないと、いくら騎士団の女の子を紹介しても玉砕を続けるだけだ。」

「・・・たしかに。たまには正しい事も言うようだな。」

レイクサイド領主館。ビューリングが去った次の日、テツヤ=ヒノモトが訪れていた。最近はヒノモト国も食糧事情が改善し、積極的にエレメントの船を襲う必要もなくなったために暇らしい。特にエレメントはヴァレンタイン遠征部隊が全滅したため、本国で内乱が大変な事になっていて、外国に侵攻どころではないとか。

「まず、知らない魔人族に交際を持ちかけられてもOKしてくれる人類は皆無だ。と、言うことでテツヤが有名になればいいと思う。しかもそれは悪名ではなく、善い事で有名になるんだ。」

「ふむ、確かにその通りだぜ!だが、具体的に善い事ってなんだ?」

「うーん、すぐには思いつかんな。しかし善い事ってのはそういうすぐに思いつく事ではなくてコツコツと積み重ねるものだと俺は思っている。それにもう一方で、テツヤの感性として魔人族がだめでも、亜人ならいけるかもしれん。亜人なら純人ほど魔人族に嫌悪感を持ってないかもしれないしな。」

「亜人?エルフか?たしかに美形だし、耳が長いだけだし・・・まあ、悪くねえんじゃねえのか。・・・うん、・・・むしろお願いしたいくらいで。」

「この前集落に行ってきたけど、猫耳とかは?」

「おおお!分かったぜ!じゃあ、とりあえず俺はここで善い事をして有名になって、それからエルフの女の子とか猫耳娘と合コンすればいいわけだな!」

「え?ここで?」


「ハルキ様、失踪中の仕事がたまっておりますよ。これが治水事業の報告書で、開墾はこちら。他領地への食糧輸出と、ヒノモトへの輸出もこちらにまとめてあります。移民の数が予想以上に多かったために急きょ召喚騎士団で開墾した土地の報告書もこちらにまとめてありますので目を通しておいてください。あと・・・」

ヒルダが仕事の山をもってやってくる。

「ヒノモトの魔王はこんな事しないからなぁ、レイクサイド領は大変だねえ。」

「くっ、部下が魔人族に負けるとは。ラミィさんはなんて優秀なんだ。」

「ハルキさま、聞き捨てなりませんよ。ヴァレンタインの食糧庫であるレイクサイド領とそのレイクサイド領からの食糧輸入がなければ海賊行為をしなければならないヒノモト国とを比べないでください。」

「はっはっは、違いねえ!」

「まあ、そうか。でもヒルダたちがやってくれてもイインダヨ?」

「では、今後はそのようにいたしましょう。フィリップさまにも伝えておきますね。」

「うっ、最近フィリップの心労が増えてるみたいで結構な確立で説教されてるからなぁ。第2の爺みたいになってきやがった。」


そしてフィリップ=オーケストラ筆頭召喚士。

「ですので、ハルキ様の失踪の影響で王都ヴァレンタインの治安が悪くなるという予想外の結果が出ております。これは去年のエレメント軍撃退の折に我が軍の功績が評価されなかったという事に起因しています。誠に我々がついていながらもクロス=ヴァレンタイン宰相の無理難題を押し切ることもできずにレイクサイド領に不利益を被ったどころかアラン様の評価を下げる次第でそれはもう申し開きのしようもございません。故にハルキ様がおられなければ我々はこの程度の事も遂行することができず、未熟者の集団でありそれまでのレイクサイド領の評価こそが・・・・・・。」

「だぁぁぁぁぁ!!!うるさぁぁぁぁい!!」

「あぁ!!お待ちを!ハルキ様!」

我慢できずに明後日の方向へ走っていく次期当主。その先には逃走用の風竜が。

「あ、待てよ!ハルキ!俺もついてくぜ!」

「・・・・・・はあ。またか。」

もはや追う元気のなくなった筆頭召喚士であった。



「という事でこれがお泊りセットッス。こっちが変装セット、あとセーラ様から集落の皆さんにお土産ッス。伝言はお腹出して寝ない事と、寝る前には歯磨きする事ッス。おそらく今日中にビューリングさんも到着するッスから、ちゃんと事情を話すッスよ。」

 セーラのお使いで大森林まで来させられたヘテロ=オーケストラ。本来ならばこんな雑用をする人物ではない。

「うぅ、分かったよ。ロージー産んでからセーラさんがだんだん強くなっていくよ。」

「お母さんッスから。」

「うん。そうだね。俺もお父さんなはずなのに。」

「テツヤ様も、ハルキ様のことよろしくお願いしますッス。」

「おう!任せとけ!」

「じゃ、俺帰るけど、また来るッスよ。収穫祭までには一旦レイクサイドに帰ってくださいッスね。」

「「はーい。」」

「ところでハルキ、・・・ここって猫耳というか、猫顔の獣人の集落だよな・・・。」

そして門のところでビューリングを待ったのだった。



「しかし魔王様とは恐れ入りました。」

「はっはっは、ビューリング。敬語はよせ。お前も俺もハルキじゃねえや、ホープ=ブックヤード?だったっけ?の友達じゃないか。つまりは友達だ。」

「それは助かる。堅苦しいのは苦手なもんで。」

「苦手でもできるんだからすげえよ。」

友達という言葉を連呼しまくる前世友達いない組の2人。

「しかし、これからどうしようか?俺は集落で狩人してれば生きていけると思って帰ってきただけなんだが。」

「当面の目標は特にない。」

「特にない。」

意外にも息のあった返答である。

「・・・。じゃ、じゃあとりあえず俺の狩りを手伝ってくれるか?」

「おう!もちろんだ。」

「虫はだめだけどな。」

「虫?」

「こいつらは虫を食うんだよ。」

「えぇ!?信じられん!」



 そして3人での狩人生活が始まった。

「大丈夫かテツヤ。腹に攻撃が当たったようには見えなかったが。」

「うぷぷぷ、は、ホ、ホープの、・・・破壊、魔法が、・・・ショボすぎて・・・ふふ、ぶはははははは!!腹いてぇ!!ぶははは!!」

「ええい!うるさい!訓練中だ!」



ホープ=ブックヤード 21歳 男性

Lv 112

HP 1400/1400   MP 4420/4420

破壊 11  回復 4  補助 16  召喚 250  幻惑 4  特殊 0

スキル:逃避行・改(現実から目を背けて逃避行しても心が痛まない、改良版)

眷属:ノーム(召喚3、維持1)

   ウィンディーネ(召喚100、維持10)

   サラマンダー(召喚100、維持10)

   ファイアドレイク(召喚200、維持15)

   アイアンドロイド(召喚150、維持15)

   フェンリル(召喚300、維持15)

   黒騎士(召喚300、維持15)

   アークエンジェル(召喚700、維持40)

   クレイゴーレム(召喚1000、維持50)

   アイアンゴーレム(召喚1200、維持60)

   ワイバーン(召喚800、維持30)

   レッドドラゴン(召喚2000、維持100)

   ウインドドラゴン(召喚1900、維持120)

   コキュートス(召喚2500、維持150)


ビューリング 33歳 男性

Lv 45

HP 1440/1440   MP 86/86

破壊 14  回復 12  補助 6  召喚 1  幻惑 3  特殊 0

スキル:獣化(外見的により獣の要素が多くなるが、力や俊敏性が増える)

    剣豪(戦闘において剣の使い方が上手くなる)


テツヤ=ヒノモト 27歳 男性(魔人)

Lv 160

HP 6120/6120   MP 2280/2280

破壊 97  回復 47  補助 36  召喚 1  幻惑 2  特殊 131

スキル:次元斬(特殊系統、全ての物質を空間ごと切断する)

    剣豪(戦闘において剣の使い方が上手くなる)

    金剛(強靭な防御力を誇る肉体を手に入れる)

    カリスマ(仲間の信頼がUP)

    自己再生(徐々にHPが自動で回復する)

    不屈(敗北を糧にして強くなる)

    ヴェノム・エクスプロージョン(特殊系統、広範囲の爆発系魔法)

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