4-3 エルライト冒険者ギルド
レイクサイド領とほぼ反対側の大陸南東にエルライト領がある。領主ジンビー=エルライトは齢60歳にして戦場で鍛え上げられた肉体を持ち、精強な騎士団を作り上げた人物ではあった。しかし、ここ10年ほどは以前ほどの勢いはなく、領地経営においてもあまり繁栄しているとは言い難い微妙な立場の領地である。東は海に面しており、北側には魔人族襲来の最前線であるフラット領に面しているため真っ先に援軍が要請される領地でもあった。最近はシルフィード領やレイクサイド領、スカイウォーカー領などが力をつけてきており、農業、産業、物流、軍事、どれにおいても他領土に秀でたものはなかった。
そんなエルライト領であるが、ひとつだけどの領地にもない物がある。それは魔力溜まりの数だ。ようするに魔物が発生しやすい。
それだけにここエルライトの冒険者ギルドには全国から数々の猛者が集結し、Sランクパーティーだけでも10以上は常駐するという異常な領地なのである。騎士団による魔物の掃討が追いつかない今、多くの冒険者はここで稼ぐのだ。
「ここ、怖いね・・・。」
エルライト冒険者ギルド館の酒場で俺とセーラさんはご飯を食べている。
「かなり強そうな人が多いですね。おそらく、あのSランクパーティーなんて平均レベルが60を超えててもおかしくなさそうですよ。」
「レベル60なんて、フィリップがあんなにいるようなもんか・・・だったら大丈夫か。」
「フラン様を除いたら人類で唯一かもしれないレベル90越えがこんな人達を怖がっちゃいけませんよ。」
「ううぅ、でも俺本体は大したことないよ。レベル10位の実力しかないから。」
「私がいますから大丈夫。」
「セーラさん・・・。」
しかし、他のギルドと違って荒っぽい人が多い。だいたい、受付が嬢じゃなくておっさんだしな。
「あ、君らもしかしたら2人組?余ってないか?」
女剣士と男魔法使いの2人組に声をかけられた。セーラさんが対応してくれる。
「ええ、2人ですが。」
「こっちも2人でね、Bランクのロックリザード狩りに行きたかったんだけど、今は変異体のAランクしか依頼が出てなくて、ちょっと2人じゃきつそうなんだよね。」
女剣士は意外と悪い奴ではないのかもしれない。しかし、女が剣士で男が魔法使いとは情けない編成だな。ん?どっかで聞いたな。
「変異体ロックリザードですが、以前ハルキさんと狩りに行った事ありましたね。」
「本当か?なあ、ぜひ一緒に行ってくれよ。私はカーラ、こっちはソレイユだ。」
「どうしますか?ハルキさん。」
「セーラさんの好きにしたらいいよ。俺はどっちでも。」
「では御一緒しましょうか。私はセーラ、こちらは夫のハルキさんです。よろしくお願いします。」
「ああ、よろしく。」
カーラとソレイユが仲間になった。
ロックリザードの生息域は馬車で3日の距離にあるらしい。誘ったのはこっちだからと馬車代を持つといってくれたカーラであったが、
「どうする?」
「どうしますか?あまり目立ちたくないんですよね?」
「でもね、セーラさん。召喚使わなかったら、俺はただの役たたずだよ。」
「それはマズイですね。フェンリルくらいは良いとしますか?」
「シルフィードでは狼がかなり目立ってたけど、仕方ないよね。」
「カーラさん、ソレイユさん。馬車だとかなり時間がかかってしましますのでこっちで移動方法は用意しますよ。」
「えっ!?馬車以外に移動の方法なんてあるのかい?」
「しかも無料なんで。それでは明日の朝に集合しましょう。」
カーラがかなり困惑しているが、まあ大丈夫だろう。宿に戻る前に鍛冶屋によって馬の鞍をフェンリル用、しかも2人乗り用に改良してもらう。2人乗り用だと戦闘には使いにくいがまあ、仕方がない。
「冒険者夫婦の生活がスタートですね。」
「そうだね、セーラさん。」
最近ようやく一つのベッドで寝れるようになった。
翌日、
「何だこれぇ!!」
「!??」
カーラとソレイユびっくり。エルライトでもフェンリルの召喚は珍しいらしい。
「まず、魔石が高くて契約しようとする奴なんかいねえよ。」
なるほど、レイクサイドでは魔石は次期当主と執事が冒険者として魔物を狩りまくったから余ってるんだよね。他の場所とか素材屋で買うとめっちゃ高いから貴族でもなければ手に入らないか。魔石が手に入るような冒険者は他の攻撃手段持ってるし、魔道具を精製してもらった方が役に立つ。
「これなら1日かからない。昼過ぎには着くぞ。」
「・・・なんてこったい。」
到着した場所は山の中腹にある荒野のような場所だった。あまり木々の生い茂った場所にはロックリザードはいないそうだ。
「今回の変異体は、やや大きめで尻尾の先に堅い鉱石がついているそうだ。尻尾の攻撃には注意が必要だな。作戦を相談してもいいか?」
「どうぞ。」
「なら、セーラは前衛もいけるけど氷の破壊魔法もいけるんだよな。ソレイユと一緒に破壊魔法でけん制してもらっていいか?私は前面に出る。ハルキは召喚魔法使いだったよな。何かあいつに対抗できそうな召喚獣はあるか?」
むしろあいつにやられる召喚獣の方が少ないよ。
「う~ん、ではアイアンドロイドを何体か召喚しようかな。あとは邪魔にならないようにフェンリルに乗って戦うよ。」
主にフェンリルが戦う。
「それは助かる。」
「私もそっちのフェンリルに乗せてもらえると戦いやすいですね。」
セーラもフェンリル騎乗で戦いたいらしい。
「これに乗った状態で魔法が打てるのか。すごいな。レベルはいくつなんだ?」
「え?48ですけど・・・。」
「48!?ほんとかよ、私なんて33で一人前だと思ってたのに。ハルキもレベル高いのか?」
「ああ、俺はきゅ・・・42だ。」
「セーラの方がだいぶ上なんだな。でも、それだけの召喚魔法が使えるんだからすごいよ。今ならレイクサイドに行って騎士団に入れてもらえるんじゃないか?」
それ勘弁です。あそこの騎士団は苦労してそうだ。
俺とセーラがフェンリルに乗った状態で、アイアンドロイドを3体カーラの傍に配置する。ロックリザードは基本的に隠れることを知らないのですぐ見つかるだろうと思っていたら、1号が場所をかぎ分けて教えてくれた。
「あっちにいそうだって。」
「召喚獣って意外と便利なんだなぁ。」
「・・・たしかに。」
うぉ!ソレイユが喋った!
ロックリザード変異体はセーラの氷魔法で身動きが取れなくなったところをアイアンドロイドたちに串刺しにされてあっけなく討伐された。カーラの剣はあまり通らなかったらしい。その日の夜にフェンリルで町まで帰ると
「今までの依頼はなんだったんだ?こんなに楽な仕事はした事がないよ。」
と落ち込んでいた。ドンマイ。
二人と別れて宿に戻る。依頼達成の換金は明日だ。
「他の冒険者の前で実力を出し過ぎるとすぐ有名になっちゃいますね。」
「当分は2人でやった方がいいかもしれない。」
セーラと二人きりだと楽しいしな。
しかし、せっかく2人で依頼を取って行こうと思っていたのに、翌日換金に行くと馬車代も全くかからず1日で依頼を達成できたカーラ達にしつこくからまれてしまった。
ハルキ=レイクサイド 19歳 男性
Lv 92
HP 1180/1180 MP 3720/3720
破壊 2 回復 1 補助 12 召喚 208 幻惑 3 特殊 0
スキル:逃避行・改
眷属:ノーム(召喚3維持1)
ウィンディーネ(召喚100維持10)
サラマンダー(召喚100、維持10)
ファイアドレイク(召喚200、維持15)
アイアンドロイド(召喚150、維持15)
フェンリル(召喚300、維持15)
アークエンジェル(召喚700、維持40)
クレイゴーレム(召喚1000、維持50)
アイアンゴーレム(召喚1200、維持60)
ワイバーン(召喚800、維持30)
レッドドラゴン(召喚2000、維持100)
ウィンドドラゴン(召喚1900、維持120)
コキュートス(召喚2500、維持150)
セーラ=レイクサイド 19歳 女性
Lv 48
HP 1770/1770 MP 1020/1020
破壊 53 回復 49 補助 54 召喚 1 幻惑 21 特殊 2
スキル:氷の加護
眷属:ノーム(召喚3維持2)
カーラ 27歳 女性
Lv 33
HP 1330/1330 MP 120/120
破壊 17 回復 23 補助 34 召喚 1 幻惑 1 特殊 0
スキル:なし
ソレイユ 29歳 男性
Lv 31
HP 660/660 MP 720/720
破壊 37 回復 20 補助 33 召喚 1 幻惑 8 特殊 0
スキル:なし




