2-5 ヘテロッス
ヘテロッス。レイクサイド召喚騎士団第5部隊部隊長をさせていただてるッス。今日は皆機嫌が悪いッス。それもそのはず、フラット領に侵攻してきた魔人族をあっという間に文字通り薙ぎ払った最強レイクサイド召喚騎士団の主であるハルキ様がディスられたッス。悪口言ってたやつら片っ端から上空一万メートルから落下させてやろうとしたらハルキ様に止められたッス。ご自分の事なのに、できた人ッス。
そう思ってたら宿舎にはいった途端、ハルキ様はふて寝ッス。やっぱりあれだけディスられれば嫌になるッス。今日はここで俺が門番やるッスよ、いでよフェンリル!
「こちらはフラット領領主、ジルベスタ=フラット様です。本日の大功労者であるレイクサイド領次期当主ハルキ=レイクサイド殿へお目通り願いたい」
なにやら偉そうな人がたくさんの従者と一緒に来たッスよ。
「ハルキ様は体調がすぐれないッス。本日は残念ですが、お帰りいただいてもよろしいッスか?」
「貴様! 弱小領地の分際でフラット領領主を追い返すというのか!?」
今度も若いけれど偉そうな人が噛みついてくるッスよ。
「申し訳ありませんが、ハルキ様はご面会に耐えられる状態ではございませんッス。おひきとり願うッス」
「貴様ぁ!! 名を名乗れ!」
「自分はレイクサイド召喚騎士団第5部隊隊長のヘテロッス」
「よい、ローエングラム」
「ですが父上!!?」
あぁ、親子だったッスか。よく見ると似てるっす。
「どうせ影武者だからだろう!? ハルキがワイバーンを召喚なんてできるわけがない。あいつは貴族院で俺の舎弟みたいなもんだったが、何をやらせてもダメな奴だった」
「ハルキ様を愚弄するッスか?」
「やめないか。失礼したヘテロ殿。息子の態度に関しては謝罪しよう。ただ、私はフラット領主として今回の戦闘に多大な功績を残したレイクサイド召喚騎士団とその主であるハルキ殿に礼が言いたかっただけだ。日を改めて伺うとしょうか」
意外と話が分かる奴ッス。息子はだめな奴ッスね。
「こちらこそ申し訳ないッス。ハルキ様には必ずお伝えするッスよ。ただ、ハルキ様は明日にはご帰還を希望されてるッスからその辺りよろしくッス」
「そうか、それは残念だ」
まだ息子がギャーギャー騒いでるけど無視ッス。
他にも色んな所の領地から騎士団の代表の方が来られたけど、全部帰ってもらったッス。
翌明け方。フェンリルの上で寝てたら起こされたッス。見ると門番代わってくれた騎士団の奴の死角を通って、ハルキ様が抜けだそうとされてるッス。これは敵前逃亡って奴ッスね。あ、敵はもういなかったかな。
「ハルキ様」
「げぇ、ヘテロ!?」
「どこ行くッスか?お供しますッス。それで、どちらまで行くッスか?昨日はたくさんの人が面会に来たッスよ」
「ちょっとそこまで」
「レイクサイド領はちょっとそこじゃないですよ」
「だって……」
「だってじゃないッスよ。ハルキ様は堂々としてればいいんスよ」
「……堂々とか、嫌でもおれ貴族院では成績酷くて、まあ俺のせいじゃないんだけど……ぶつぶつ」
「そうじゃないッス!」
「えっ?」
「ハルキ様は堂々とあとは俺らに任せたって言えばいいッス。あとはなんとかしますッス。主にフィリップ様が」
「フィリップが、かよ」
「そうッス。フィリップ様もなかなかです。あとヒルダも頼りになるッス。ハルキ様がいなくなった後の穴を埋めようと皆必死に成長したッス」
「そう、そうだな。お前たちも頑張ってるもんな」
お? ハルキ様の心情に変化があったッスよ。よかったッス。逃げてもよかったッスけど、やっぱりハルキ様はこうでなくちゃッス。
「今日はウォルターとヒルダが到着するッスよ。ハルキ様をディスる奴らは俺らで血祭りにあげるんで安心してほしいッス」
「安心できねえよ」
なんとか元気になってくれると嬉しいッス。
この後、事件の詳細をきいたヒルダとウォルターが野営地中に大量のエンジェルとデーモンを召喚したのはハルキ様には内緒ッス。




