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3-1 リハビリ開始

「あっはっはっはっは、さすが先生だ!予想外すぎるよ!」

エジンバラ領エジンバラの町。その男はエジンバラ防衛軍のテントで一人高笑いをしていた。

「予想外にもほどがある!あれだけの事をしてあげたのに、全く関係なく勝つなんて!いくらヴァレンタインの大地が世界樹に魔力を吸われて薄まっているにしても、遠いエジンバラやエルライトはそこそこの魔物が出てきただろうにさ!」

言動はヨシヒロであるが、姿は全く違う。これはヨシヒロが変装している人物だった。

「はーはーはー、すごいね・・・・・・コンソール・精神安定。ふう。」

いつもの精神安定魔法を繰り出す。最近はすぐにおかしくなるようになってきた。もう時間がないのだろう。

「今までは、誰もここまで世界に影響を与えたやつはいなかった。どいつもこいつも無能者ばかりで!」

今度は感情の起伏が激しくなる。

「いっそこんな世界、全て消し去ってやろうか!!・・・コンソール・精神安定。」

またしても魔法を唱える。もう、本当に限界なのだろう。

「これは本格的に終わりが近いかな?」

まるで自分の運命を他人事のように言う。

「どうせ、なんのデータにもならないんだ。好きにするさ・・・。次はどうしようかな?コンソール・オート。」

彼は彼の人格を封印する。化けた人物として過ごすために。



 レイクサイド領レイクサイド領主館。エジンバラ領での魔物大量発生事件が解決した後に、ハルキ=レイクサイドは事件の処理をフィリップ=オーケストラに任せ、レイクサイド領に先に帰っていた。その目的はヨシヒロ神に下げられてしまったレベルをどうにか上げる手段を考えるためである。

 もともと、ノーム召喚で金儲けと訓練を兼ね備えた計画の副作用として尋常ではないほど上がったレベルであったが、今回の事件でノーム召喚は行えなくなってしまっている。



「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

俺はハルキ=レイクサイド、レイクサイド領主にしてレベル6の雑魚だ。

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

そして召喚士である。あった?まあ、どちらでもいいだろう。

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

神楽にレベルを2まで下げられた俺は、さらに眷属たちとの召喚契約まで解除されてしまった。

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

レベル2のMP50ではなんの眷属も召喚できない。仕方なく、破壊魔法でレベルをこつこつ上げることにしたが、これが全然上がらない。「素質ない」とまで言われていたが、ここまでとは。

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

ようやくレベルが6まで上がってMPが76までになった。ノームに次ぐコストの少ない召喚獣ならば、1時間は召喚していられる。

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

紹介しよう。召喚魔力は50、維持魔力は20、こいつを青い汁のみながらずっと召喚し続けている。召喚目的は飛行と移動。つまり、ずっと乗りつづけなければ経験値は貯まらない。今現在の俺の唯一の眷属のインセクトキラービーだ。

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

「・・・・・・。」

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!!」


「ヨーレン!出かけるぞ!今日は怪鳥ロックの討伐だ!霊峰アダムスまで連れていけ!」

「ハルキ様っ!無理です!無理!」

「ええい!神と髪と領主に見放された男になってもいいのか!?」

「そんなぁ・・・。」

こいつはヨーレン。なぜか俺の身辺警護兼運転手を行う事になってしまった第5部隊所属の召喚士である。ちなみに25歳にして頭髪が男性的であるという特徴を持つナイスガイだ。

「ハルキ様ぁ、ヨーレンをいじめちゃだめだよ。怯えてるじゃないか。」

カーラが間に入る。たしかにいじめはよくない。

「分かった。ヨーレン、すまなかったな。だが、お前ならできると信じている。一緒に怪鳥ロックの討伐に行こうではないか。」

「ハ、ハルキ様!」

「いやいや、ヨーレン。騙されんなよ。」

ちっ、領主スマイルも普段から見ているカーラには通用しないようだな。

「なかなか呪いが解けなくて焦るのも分かるけどよ、当分戦争もなさそうだしゆっくりしようや。ハルキ様は今まで働きすぎなんだよ。」

カーラ、意外にもお前はいい奴だったんだな。何も考えてないかと思ってた。

「カーラ、ハルキ様のお考えは俺たちでは理解できないほどのものだ。苦悩も人一倍だろう。軽々しく意見をするんじゃない。」

おお、ソレイユ。いたのか、存在に気付かなかった。

「まあ、ソレイユの言うとおりかもね。ごめん、ハルキ様。でもヨーレンに怪鳥ロックの討伐はまだ無理だぜ?」

「知ってるよ。からかっただけだもん。」

「えぇ!!??」

いかん、心がささくれ立つ。



「それで、いつもの癖でこっちに逃げてきたけど、逃避行のスキルもなくなってしまってて領主がこんな所に勝手に来ててもいいかどうか不安になってしまって後悔してる、と?」

大森林、世界樹の町。すでに村から町に発展を遂げた獣人族の首都にハルキは逃げてきている。

「大将、こりゃ重症だぜ?」

「ガウ、とりあえずレイクサイド領主館に連絡を入れておいてくれ。所在だけでもはっきりさせとかないと。」

現在は「獣王」ビューリング=ブックヤードの館に来ている。獣人騎士団団長ガウも一緒だ。

「とりあえずヨーレンを休ませてやれ。かなり無理してるみたいだぞ?」

ここに来るまでにスカイウォーカーに寄ってみたりしてるからかなりの時間をかけている。

「だ、大丈夫です。ま、まだやれます。」

領主に振り回されれるヨーレン。可哀想に。

「まあ、ゆっくりしていけ。フィリップ様たちには俺から説明しておくとしよう。ハルキも疲れてそうだ。たまにはしっかり休むことも重要だぞ。」

「ビューリング・・・。」

「情けない顔をするな。気にする必要などない。友のためだ。」

「ありがとう、ビューリング・・・。」

「ちょうどキラーマンティスを狩ったところだ。一緒に食おう。」

「いや、それはやだ。ヨーレン、お前代わりに食っておけ。」

「えぇ!?」


 こうして俺は大森林でのリハビリを始めることになった。少なくともレベルがある程度上がらなければ危険すぎる。暗殺とかもないとは言い切れない。なにせレイクサイド領はヴァレンタインで最も力のある領地になってしまっている。


 翌日から、獣人の子供たちにまざって狩猟の真似事を始めた。あまり強くない魔物や獣を狙っての狩猟だ。罠を仕掛けて仕留めるのであるが、あまり経験値にはならないな。インセクトキラービーで刺そうとしたら、毒がまわると怒られた。仕方なく、罠の改良に勤しんでいる。少しだけでも成功率があがると、これはこれで楽しいものだった。

 もうちょっとだけ、ここにいようかな?



「ところで、セーラ様ならお前をサポートしてくれたんじゃないのか?」

「あ、うん。全部喋って相談に乗ってもらってたんだけど、修行中に美味しい料理用意してくれた。」

「で?なんでここに逃げてきたんだ?」

「・・・青い汁がぶ飲みしてたからお腹いっぱいで、全然食べれなくて・・・たまたま、それがセーラさんの手料理で・・・。」

「・・・どんまい。」



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