2-6 調子に乗りすぎ
ついに我々の筆頭召喚士にも春が来た!かもしれん。
「あ、リオンだ!」
「ハルキ様、やりすぎると2人の関係が壊れたりします。ほどほどに。」
「そ、そうだね。生暖かく見守ることにしよう。」
さすがはヒルダ、一瞬でフィリップの変化に気付いたらしい。マントも縫って直してくれたし、いざって時に頼りになるぜ。というか、フィリップのやつ完全に顔真っ赤っかだったって言うし、反応が分かりやすいし、誰でもわかるわー!ぎゃははは!
「さて、喜ばしいことであるが民衆の事を考えるといささか不謹慎でもある。気を引き締めるとしようか。」
「ハルキ様だけッスよ、フィリップ様いじれるの。」
作戦会議中。なぜか筆頭召喚士だけリオンのウインドドラゴンで周囲の魔力スポットの探索を命じているので不在だ。
「でも、あんなフィリップ見たのは初めてだよ?」
「そッスけど、フィリップ様は筆頭召喚士ッス。皆に尊敬されてるッスからいじれるのはハルキ様くらいのもんッス。」
「ぷぷぷ、だって面白いもん。」
「気持ちは分からんでもないッスけど・・・。」
いやいや、気持ちを切り替えよう。繰り返すがエジンバラの民衆の事を考えるといささか不謹慎だ。部屋に籠りきって働いてなかった分だけでも頑張ることにしようか。それにしてもフィリップが・・・ぷぷ。
「ハルキ様、お楽しみの所申し訳ありませんが、我が第4部隊の者が不審な情報を持ってきています。」
おお、この前フライング土下座をかました第4部隊副隊長のペニー君、あの時の事はもう気にしなくてもいいんだよ。今はテトも出て行っていたね。気付かなかったよ。
「不審な?」
「それがですね、事実関係の確認はとれていないんですが、魔物の集団の中に人影を見たと。」
ここエジンバラの町を襲撃してくる魔物はなぜか集団行動をしている。現在シルフィード騎士団とスカイウォーカー騎士団が防衛しているが、単独でもやっかいな魔物が集団で襲ってくるとなかなか手ごわい。
「もしかして・・・。」
一つ、思い当たる節がある。それは、特殊魔法だ。
「魔力スポットの解放と魔物の支配を行う特殊魔法が存在すれば、この事件を起こす事は可能だな。」
「そんな!?そんな魔法聞いた事がありません!」
「ペニー、テトが帰ってき次第、第4部隊から捜索隊を結成してくれ。もし特殊魔法の使い手だった場合は戦闘になるだろうし、自分の周囲はかなり強い魔物で固めているだろうから精鋭でな。」
「はっ、分かりました。」
杞憂であってくれればいいのだけども。だけど、それはフラグというやつだった。
「はははは、さすがだね。先生。」
自室でいきなり声をかけられてビビる。この部屋には今は俺しかいなかったはずだ。それに、こいつ!
「神楽・・・先生か?」
大学の工学部の講師で俺に研究のモニターになってくれと言ったあいつだ。やはりこっちに来ていたのか。
「僕は初めましてなんだけど、オリジナルは先生に説明に行った時に会ってるはずだよね。お久しぶりと言うべきかな。こっちきてからどうだった?」
「先生もこっちに来ていたのか。なんで俺が川岸だって分かったんだ?姿も年齢も変わってるのに。」
「ふふふふ・・・僕はこっちでは何でもできるんだよ。まあ、制限はあるんだけども。これでも神を名乗ってるからね。正確には神じゃないんだけれども。」
「やはり・・・ヨシヒロ神!?」
「そう、アルキメデスが世話になったね。あれだけのスキルを加えてやったというのに先生には手も足もでなかった。僕の下の名前は哲也に聞いたのかな?」
「なにが、目的だ?」
同じ日本人同士で、なんでこんな事をする?
「もうね、退屈なんだよ。僕の精神は壊れている。すでに、1万年以上の時を過ごした。」
「1万年!?そんなん人間じゃない!」
「そう、だから僕は神なんだよ・・・ああ、なんかめんどくさくなってきたな。・・・やばいやばい。コンソール・精神安定。よしっと。」
感情の起伏が激しい、川岸春樹の記憶が精神疾患患者の中でもかなり悪い部類に入っている者を想定させた。
「先生には退屈を紛らわせてもらった。本当はね、そろそろ僕は消滅するつもりだったんだ。自殺ってやつとはちょっと違うんだけど。でも、もうちょっと楽しそうな事があったから生きてみる事にしたよ。それが先生さ。」
「なんだ?理解できねえよ。」
「ははははっ、理解はしなくていい。ただもがけばいいんだ。それが僕の唯一の娯楽になる。」
「娯楽だと?」
いかん、腹立ってきた。こいつぶん殴りたい。
「もしかして、俺やテツヤがこっちに来たのはお前のせいか!?」
これは重要な質問だ。もし、そうなら人の人生をめちゃくちゃにしやがって!
「正確には違うね。川岸春樹も斉藤哲也も特に何不自由なく人生を謳歌しているんじゃないかな?あ、哲也はあっちよりもこっちの方がモテてるけどね、魔人族限定で。ふふふ、あいつ人生あんまり楽しそうじゃなかったからなあ。先生は、こっちでも楽しそうだけどあっちも楽しかったの?」
「質問の答えになってねえ。」
言葉のキャッチボールができないやつだな。
「ちゃんと答えるつもりはないよ。僕の目的に影響しそうだ。・・・ふふふ。」
「目的だと?」
「では、頑張ってよ。でも今回も先生なら軽く乗り越えられそうだね。でも、それじゃつまんないからズルしようと思う。ふふふ、・・・コンソール・レベルアドジャスト。」
「ぐはっ!」
なんだこれ!からだが動かない!
ドサっと倒れた音を聞いて部屋の前にいたカーラとソレイユが入ってきた。
「ハルキ様?誰かいらっしゃってるんですk・・・ああ!!ハルキ様!」
「おっと、目撃されちゃったから帰るね。これはハンデだよ。では、頑張って。コンソール・転移。」
ふっとヨシヒロが消える。
「な、なにしやがった?」
身体が重い・・・魔力が・・・ない。
「ハルキ様が襲われた!」
レイクサイド騎士団は騒然となった。護衛騎士2名の目の前で掻き消えた襲撃者は自分はヨシヒロ神だと告げた。そして、領主ハルキ=レイクサイドは謎の倦怠感と魔力不足に陥っている。
「むー、体が重くて魔力がないんだけど、日常生活には影響がないと言うか、なんか懐かしいというか。」
ヨシヒロに何かされたらしい。状態異常だろうか?一応、作戦は俺抜きに変更して行ってもらっている。だが、一刻もはやく手伝わないと余裕があるわけでもないはずだ。
「ちょっとソレイユ!俺にハイ・ステータスかけてみてくれ。」
「はい、分かりました。全てを見透かせ、ハイ・ステータス!」
これで状態異常がわかるに違いない。治るものだったら良いが・・・。
「!?・・・ハ、ハルキ様!?」
「どれどれ・・・・・ふぁ!?」
ハルキ=レイクサイド 23歳 男性
Lv 2
HP 280/280 MP 50/50
破壊 2 回復 1 補助 1 召喚 7 幻惑 3 特殊 0
スキル:ヨシヒロ神の加護(笑)(さすがにHP200ほどおまけしといたよ。それにしてもひどいね。)
眷属:なし
「何ぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!!??」




