1-2 UNK
いつの間にか日間ランキングに入ってしまっていました。日本の行く末が心配です。
私はジェイガン。栄えあるレイクサイド召喚騎士団第4部隊の隊員である。現在はここエジンバラ領冒険者ギルドでギルドカード申請中だ。テト隊長がギルド長に交渉して私のギルドカードをBランクにするように言っている。だめならダメでFランクから這い上がりますが?薬草採取依頼とか意外と楽しいですよ?
「よしっと、もらえたよ~。」
あっさり交渉は成立したらしい。すでにSランクをもっているテト隊長とレイラ先輩がついているのだ。このメンバーならばヒノモト国の魔王程度であれば吹き飛ばすこともできる。
「じゃ、さっそくSSランク任務に関して説明するよ。」
「大峡谷レクイナラバ」。V字の断崖絶壁が数百キロ続くヴァレンタイン大陸最大の峡谷である。その中を流れる「大河エジンバラ」は今日のエジンバラ平野を肥沃な大地へと変え、エジンバラ領がレイクサイド領の改革が起こるまでヴァレンタインの食卓とよばれた要因だ。「大峡谷レクイナラバ」の奥には標高数千メートルの山々が連なり、さらに南には南方の小領地郡が存在する。今回、この「大峡谷レクイナラバ」に住み着いたとされる魔物が討伐目標であり、すでに数隊の冒険者パーティーが失敗して帰ってきているという。
「そしてその魔物というのが、ゴールデンキラーエイプだ。」
おおう、なんてレアな。ゴールデンキラーエイプの目撃情報は少ない。3メートルは超える巨体に、周囲の物を道具として扱える頭脳、それに厄介な跳躍力に握力。討伐目的でもすぐに逃げてしまう事もあれば、その力でパーティーを強襲する事もあるという冒険者の中では恐れられている存在だ。ランクはS。
「そして、おそらく、変異体。」
ランクがSSになるわけだ。何かしら変異した部分が優れているのだろうか。話を聞けばかなり力が強そうだ。頭脳はどうなのだろうか。すでにSランクパーティーも向かったそうだが、こっぴどくやられてしまったらしい。Aランクパーティーの中には死亡した冒険者もいたとの事でギルドが頭を悩ませているところだった。テト隊長たちならばと期待されている。
「そんな危険な魔物を私たちで!?テト隊長はまだしも、新人のジェイガンもいるんですよ!?」
リオンが真っ青になって抗議している。そうだ、私は新人だ。今回は高見の見物をさせてもらおう、ぐへへ。
「修行だよ。こんなのもできないようじゃ第4部隊にはいられない。僕が主体で攻撃するからサポートをしてよ。」
「うぅ、分かりました。」
「まあ、テトちゃ・・隊長なら大丈夫よね。」
レイラよ、わざとやってないか?
「それじゃ、出発するよ。大峡谷まではワイバーンで数時間だ。今日中に帰れるように準備して。」
「はーい。」
・・・ワイバーンで行って帰ってだと、2人は青い汁が必要そうだな?
「ハ・・・ジェイガン、どう思う?今回の討伐はできそう?」
今私たちはテト隊長とレイラ先輩のワイバーンに2人乗りで大峡谷に向かっている。リオンはどうしてもワイバーンを使うと大峡谷で戦闘中に魔力切れを起こしそうだったからである。
「私は新人ですので、判断しかねます。」
「もう!2人は聞いてないからちゃんと答えてよ!」
「じゃあ、無理だろ。レイラはともかく、リオンは問題外だ。ちょっと甘やかしすぎだ。」
「やっぱりそうだよね。僕がいなかったときに新人の教育にまで手が回らなかったんだって。」
「ふん、お前のせいと言うわけだな。」
「うぅぅ、それに皆が僕をテトちゃんって呼び始めたから、それも影響してるかも。」
「確かに規律が乱れている。・・・ふふふ、これはいい機会かもしれんぞ。2人を教育しなおすチャンスだ。」
「・・・何するの?」
「それはだな、とりあえず今回の任務は俺とテトがいればなんとかなる。だが、あいつらにも苦労してもらおう。俺が死んだふりをして・・・。」
大峡谷レクイナラバは左右に数百メートルは離れた断崖絶壁が形成する雄大な自然であった。
「おおお、これはすごいわ!」
「綺麗です!」
「確かに、強化合宿には最適な地だ。ぐふふ。」
「ハルキ様、ある程度は自重しようね。やり過ぎると2人の心がもたないからね。」
「うむうむ、分かっておる。ぐふふ。」
ちょっと、調子に乗り過ぎの2人に現実を示してやるだけだよ。そしてそのあとは総魔力の上昇もさせなきゃなんない。これが終わったらフラット領の工事現場でこき使ってもらおう。
「さて、ここのこっちから見て右側の崖の一部にゴールデンキラーエイプ特異体の巣があると言われてるんだって。ワイバーンでそれを確認しつつ、見つけ次第狩るよ。」
「はーい、了解。」
「それじゃ、1人1体ずつワイバーン召喚して進むからね。」
私とリオンがワイバーンを召喚し、乗り込む。最近のレイクサイド召喚騎士団のワイバーンの鞍はかなり薄く小型化しており、持ち運びにも便利だ。
「では出発!」
4体のワイバーンが峡谷を飛んでいく。それにしても綺麗な峡谷だ。中心を流れているエジンバラ川のデカさも半端ないな。こんな綺麗な風景は日本でもこっちの世界でも初めてなんじゃないだろうか。数十分ほどワイバーンで飛び、かなりの奥地まで来た。それでもゴールデンキラーエイプの巣は見つからない。
「テト隊長、なかなか見つかりませんわ。」
「そろそろ魔力的にもきつくなってきました~。」
すでに2人が弱音を上げている。リオンはともかく、レイラはテトについて旅してたんじゃなかったのか?この数時間のワイバーン召喚で魔力が尽きるとなると、第5部隊ではやっていけないくらいだ。ユーナを馬鹿にできないぞ?
「気を抜かないの!」
テトが怒鳴る。その時だった。
「回避っ!」
私が叫ぶと同時に地上からかなりの太さの枝、もはや丸太に近い木が投げつけられた。反応が遅れていたらワイバーンに直撃していたかもしれない。まあ、私はワイバーンが教えてくれたから大丈夫だったけど。
「あれは!?」
見ると崖の淵に立っている大きな金色の猿がこちらを見て叫んでいる。金色と言っても光っているわけでもなくてあまり目立たない黄色というのが正しいのだろう。風景的に黄色の部分も多いために迷彩色としても役立っているようだ。
「ウキーィ!!」
あいつがゴールデンキラーエイプなのだろう。よし、いいタイミングじゃないか。このままあいつをテトと2人で追っていく振りをして、その先で私があの猿の皮をはぎ、猿に化けて、レイラとリオンをさんざん苦しめた後に、やっぱりやられていなかったぜ!って感じで再登場した私とともに討伐完了という自作自演を・・・・べちゃっ!
「あ・・・ジェイガン、顔に、それ・・・うんk・・・。」
「臭っ!!近寄らないでね!!」
「・・・ちょ、ちょっと!自重しようね!ね!落ち着いてぇ!!」
・・・・・・。
「・・・ウインディーネ召喚。しっかり流してくれよ。」
落ち着け、とりあえず素数でも数えようかな。UNKを洗い流してもらう。ウィンディーネも慌ててやってくれているようだ。
「うっきっきっき!ぶひー!きっきっき!ぶりっ。」
猿が尻をこちらに向けてぺんぺんしてる。そしてさらにUNKを投げてきた。しかもひねり出しほやほやの奴を。避ける。当たり前だ。そして叫ぶ。
「・・・・・・・・・死ねやぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」
3匹のレッドドラゴンがゴールデンキラーエイプを黒焦げにしたのは数分後だった。
下な感じで誠に申し訳ない。




