第15話(Re):思い出に残る曲
一応、著作権上問題がないか確認はしました。
新しめの曲は怖いですが、どうしても載せたくて……。
歌詞などを載せなければ、名前は問題ないようです。
ただ、何かあった場合は削除する可能性があります。
という書き手の都合は置いておきまして。
お気軽にお読みください♪
◇
「店長って、日常にあるちょっとした音楽も見逃さないんです」
御新規さんに普段の店長の姿を聞かれて、私はそう答えた。
「ジャンルも関係なく、本当に音楽が好きなんだなって思うこともありますね」
私の言葉に、御新規さんは深く頷いていたのだった。
◇
名曲喫茶【ベガ】の営業も終わり、片付けも済んで帰路へ着いている時のことである。
昴さんも北鎌倉にある自宅に帰るということで、一緒に歩いていた。
鎌倉駅の外には、東口と西口を繋ぐ小さなトンネルのような通路がある。
そこで、一人の若い男性がギターを手に座り込み、演奏をしていた。
いわゆる路上ライブというやつだ。
鎌倉駅付近では時折、こういう人たちがパフォーマンスしていることがある。
それを耳に入れた昴さんが立ち止まった。
それに気づき、私も足を止める。
どこか聞き覚えのあるメロディーだ。
懐かしい思い出が蘇ってくる。
そう、私が幼い頃、よくお父さんが聴いていた曲だった。
車でお出掛けするときには必ず流れていた。
音痴な鼻唄を歌いながら運転をするお父さん。それを笑うお母さんと私。
まるで昨日のことのように思い出せるそのメロディー。
確かビートルズというバンドの曲だったと思う。
でも、曲名が思い出せない。
その音楽は歌ではなく、柔らかいギターの音色で表現されていた。
でも、私にはあの時に聴いた歌声が届いてくるように感じた。
心へ染み渡るように訴えかけてくる、そんなメロディーだった。
鎌倉駅の改札で昴さんと別れる前、私は彼ならば知っているかもしれないと尋ねてみることにした。
「さっき男性が弾いていた曲あるじゃないですか名前がどうしても思い出せなくて……。なんて曲でしたっけ?」
「ザ・ビートルズの《イエスタデイ》を、武満徹という日本の作曲家がクラシック・ギター用に編曲したものだな」
「あぁ、それですそれ! 私のお父さんがよく好きで聴いてたんですよね」
「うむ。イギリスのロックバンド、ザ・ビートルズは君のお父さんやその少し上の年代ならば誰もが知っているだろう」
「なんかすごい人気だったんですよね。ライブ中に叫びすぎて失神する人がいたってお父さんが言ってました」
「そのせいで自分たちの音楽が聴こえていないと嘆くこともあったそうだ。それがきっかけで、ライブ演奏は止めたのだよ」
「人気者は人気者で大変なんですねぇ」
当時の熱狂を想像しようとして、いまいち分からなかった。
「うむ。それに、この《イエスタデイ》の原曲は弦楽四重奏で伴奏されている。ロックという枠には収まりきらないバンドだったのだよ」
「へぇー。やっぱりすごいんですね。私にはそういうこと分からないですけど、聴いたらいい曲だなとは思います」
聴いて昔を思い出せるような曲は名曲だよね。
私はそう考えていた。
「それでいいのだよ。……いや、いい出会いがあった。外で聴く音楽もいいものだな」
「そうですね」
それから昴さんと別れた私は、家に着いたらお父さんとあの曲を聴いてみようかな、と思うのだった。
――それは、ある夜のこと。
ちょっとした巡り合いをした日の出来事。
私にとって、懐かしい記憶を思い出すような時間だった。
第15話fin
みなさんには思い出の曲ってありますか?
音楽プレイヤーを振り替えると、自分の軌跡を見ているようで。
少し楽しくなったりします。




