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夢を蹴破って。

 「……どう? 落ち着いた?」

「う,うん……なんとか……」

 今はゆみりの胸から離れて,クッションを抱っこして一人悶えてる。

 ………あー,恥ずかしかった………

 結局あの後,20分程を目を覚ましたゆみりの腕の中で過ごした。そしてようやく落ち着いたころに顔を上げると,心配そうにのぞき込むゆみりの顔があって。ようやく今の自分の状況に気が付いて,ベッドから飛びのいて部屋の隅のクッションにしがみついて今に至る。

「そっか,よかった」

 ホッとした声を上げるゆみり。さっきまで森で怯えていた声とは違ってちゃんと血の通ったあったかい声で。それが更に過去の自分のみっともなさを際立たせる。

「そっか,……ならすずちゃん,そろそろお布団に戻ってこない?お部屋の隅だと寒いから,ね?」

「……うん,そうする……」

 のそのそと立ち上がると,ゆみりの待つベッドへと歩みを進める。ちなみにクッションは迷ったけどそのまま持ってくることにした。

「はい,すずちゃんの分もあっためておいたよ」

「ん……ありがと……」

 ゆみりの開けてくれたスペースにのそのそと納まる。ほっかほかだけど少しつま先が冷たいのは,ゆみりとぼくの身長の差のせい。だけどもぼくだって寒いのは嫌。だから……今だけはあったまるために,ぼくもゆみりとおんなじ身長になったって,いいよね?

 震えるつま先をそっとゆみりに預けて,びくっと動くゆみりのふくらはぎにそっと足を絡める。

「す,すずちゃん……?」

「……寒いから,もっとあったまらせて?」

 返事なんて聞かない。ぼくがしたいようにしてるだけ。

「どうしちゃったの,すずちゃん……あんなに,恥ずかしがってたのに」

 それには答えずそっと目を閉じる。……言えるわけない,さっきの夢の中身なんて。ぼくの汚い奥底と,抱えてきた脆い感情とがゆみりにバレてしまうから。

 ……いや,ゆみりになら。ゆみりにだったら,知られても大丈夫,なのかな……

「……すずちゃん。もしかしてさっきの夢が原因なの?」

「……」

 寝たふりをして質問をかわす。……いいの,ゆみりは知らなくて。

「………『オトコノコになりたくない』」

「ぶっ!?」

 な,なんでそれをっ!?

「すずちゃん,寝言でそう言ってずっとうなされてたよ?……どうしちゃったの?今までずっとオトコノコになりたがってたのに」

「し,知らないっ,ていうか,知ってても教えないっ」

 ぼ,ぼくは……ずっと,ずっとなりたかったのに,なんで…なんでいざオトコノコになると,こんなにも嫌なんだろう……

「ねぇ,すずちゃん。そもそもなんですずちゃんはオトコノコになりたかったの?」

「そ,それは……いつもの奴らといつも通り遊びたかったから…みんなが離れてくのが嫌だったからで……」

 ……あっ。

「もしかして,すずちゃんは」

「……うん。友達を失いたくなかったんだ……」

 そっか,そうだったんだ……なんだ,単純なことだったじゃんか。一回失くした友達を取り戻そうとして,ずっと追いかけて,一人で勝手に溺れてただけなんだ……

「……でも,それがどうして今になって…」

「お友達ができたからじゃない?」

「え?」

「だから,すずちゃんは失くしちゃった分のお友達にこだわってたかもしれないけど,其れ以上のお友達ができたからじゃない?女の子でもいいかなって思えるようになったの」

「そっか……そうだな」

 肌寒いセリフばっか吐いてる茉莉花,ちっと変わってるいのり,ぼくの道標を立ててくれた墨森先輩,そして,

「……でもきっかけはゆみりなんだよな」

「ほへ?」

「確かにこっちに来てからぼくの周りに人は増えた。けど,ぼくはそれに手を伸ばそうとして来なかった。だけど,ゆみりに触れてから……手を伸ばしても,救いを求めてもいいんだって思えた。だから手を伸ばして,掴んで,引き寄せたら,世界が広がった。そのきっかけをくれたのはゆみり,君なんだよ」

「すず,ちゃん……」

 ……恥ずかしいな,やっぱ。こうして目の前にいると。でも,いつか伝えなきゃいけないのなら,今伝えても変わらない。下手に作戦とか寝るよりも,サッと伝えなきゃ。

 寝転がったまま,横で心配そうに見つめるゆみりをじっと正面から見据えて,

「ゆみり,君が好き。ゆみりのことが欲しい」

「ほ,ほぇぇぇぇ!?」

 甲高い声を上げるゆみりの口を慌てて手で塞いで黙らせる。そして静かになったところで手を離すと,唇がぷるんと跳ねて,

 ……やっぱり,やるしかないよね,うん。

 じりじりと顔を近づけていくと,ゆみりも観念したのか目を閉じてそっと近づいてくる。二人の距離がゼロになりかける刹那,ぼくはそっとゆみりに口づけた。

 ………湯気をしゅーしゅー噴いてるおでこに。

「………はれ?」

「ごめんやっぱいきなりは無理……」

 い,行けると思ったけど直前で耐えらんなくなった……

「つ,次やるときはほっぺ行けるようにするから……」

 あ,あれ,ゆみり……どうしたのそんな震えて……?

「……もういい,おやすみ」

 反対向いて布団被っちゃった。しかもぼくの分まで全部。

「お,おーい,ゆみりー……」

 すっかり包まっちゃって……さてこの後どうしようかな……


「…………すずちゃんの意気地なし」

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