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異夢。

 ……ふぅ,ひとまずすっきり。

「すずちゃん,もういい?」

「うん,今出る」

「わたしもいこっと」

 ぼくと入れ替わりにゆみりがトイレにこもる。

 ……さ,寒い……はやく布団に戻りたい……

「あれ?すずちゃん,紙使ってないの?」

「んなわけないでしょ。使ったら三角に折るのが普通でしょ?」

「えーそうなの?」

「え,違うの?」

 少なくともぼくはそう教わったけど……

「すずちゃん,丁寧なんだね」

「ん,まぁ,そうなのかも」

 ……ちょっとだけ,あの親を見直したかも。嫌いだけど。

「ん,おまたせー」

 ゆみりがトイレから出てきて,やっと二人になる。

「ん,じゃあ行こうか」

 そう言ってゆみりが歩き出すのを待っていると,

「すずちゃん,来ないの?」

「いや,ゆみりが先行ってよ」

「えー,なんで?」

「いや,暗くて危ないから勝手知ってるゆみりが先に行ってよ」

「だいじょうぶだよ,危ないものないし」

「いやここは先にゆみりが」

「ふぅん?むむむ?」

 ゆみりが急にニヤニヤしながらじろじろとこっちを見てくる。

「な,なんだよ…?」

「すずちゃん,もしかして怖がり?」

「に゛ゃっ!?」

 図星。いや,断じてそんなことはない,絶対。

「ば,ばかだなぁ,このぼくがそんなわけないでしょ…」

「あっ,窓の外になにかいるっ」

「ひぃん!?」

 慌ててゆみりに抱きつく。

「すずちゃん,やっぱり怖がりじゃない…」

「ち,違うって,これは……その……」

 ダメだ,もう隠せない。言葉では取り繕えても,今こうしてゆみりのお腹周りにしがみついてるのだけは誤魔化しようがない。……くそっ,ゆみりに弱いとこ見られた……

「もう,しょうがないなぁ。ほら立って」

「うぐ…」

 ゆみりの手を借りて立ち上がると,そのまま手を引かれて部屋まで連れていかれる。

 その間ぼくはずっと,ゆみりのことを見れなかった……


「ほら,お部屋ついたよ」

「……」

 先に足を踏み入れたゆみりが電気をつけてくれるけど,ぼくは前を向く気になれず,

「もう,すずちゃんったら拗ねないの」

「拗ねてないやい……」

 とぼとぼとベッドまで歩くと,ゆみりが布団に入るのを待つ。

「あ,今度はすずちゃんが先に入りなよ」

「やだよ。ゆみりが転がってきたら壁に挟まれてぺしゃんこになるもん」

「そんなに寝相悪くないし,おデブじゃないもんっ」

 ぷくーっとお餅みたいにふくれるゆみり。それでも先に布団に入ったあたり,寝相の悪さは図星なのかも?

「……改めて,おじゃまします」

 微かに温もりの残る布団に身体を差し入れる。今度も,こっち向いたゆみりに背中を向けてごろりと寝転がる。

「もー,すずちゃんもこっち向いてよぉ」

「やだ」

「もう怖がりだなんて言わないからぁ」

「……むすっ」

 ……そっちなんて向いてやるものか。

「あ,なにか動いた」

 180度回転。……あっ。

「やっとこっち向いたね」

 は,はめられた……すぐにまたむこう向こうとして,それでもやっぱり怖くて……天井向いて止まる。

「怖がりなすずちゃん」

「こ,怖がりなんかじゃないやい……」

 なんて強がってみても,もう一度向こうを見ることができなくて。

「震えてるじゃん」

「こ,これは寒いからだよ」

「むぅ……」

 突然ゆみりがぼくのことを掴んで,こっち向かせたかと思えば,そのまま自分の胸を押し付けてきて,

「む,むぐぐ」

「すずちゃん,いいこいいこ」

「むぐー!!!」

 く,くるしっ,やわらか,い,息がっ!?

 じたばたじたばたしてみても,ゆみりを振りほどくことはできなくて。ぼくが酸欠でふにゃふにゃになって,ゆみりが腕を緩めるまでずっと抱かれていた。

「……どう,落ち着いた?」

「し,死ぬかと思った……」

 ぜいぜいと荒い息をして,乱れた服も整える。ちょっと汗かいちゃったかも。

「でも,もう寒くないでしょ?」

「おかげさまで……」

 一体何がしたいんだゆみりは……

「うん,それなら良かった♪」

 一体何がしたいんだ……いや,したいことはなんとなくわかるけど。

「……ゆみりさぁ,ぼくを温めたいならもっと他に方法なかったの…?」

「え?これが一番いいかなって。わたしがちっちゃいころママがよくこうしてくれたんだっ」

「ぼくはちっちゃい子じゃないんだから……」

「オバケが怖いのに?」

「違うからなっ!?…あ,あと,誰にも言うなよっ!?」

 こんなのバレたら……ぼくのイメージが……特に茉莉花なんかにバレたら……

「大丈夫っ。わたしとすずちゃんとの秘密にするからっ♪」

「ほんとかよ……」

 とんだ弱みを握られちまったな……

「ね,だから……わたしにも,して?」

「へ?」

「だから,わたしも,すずちゃんに,いいこいいこしてもらいたいなって」

「なんでまた……」

「すずちゃんはオバケがこわ」

「わ,わかったわかった!!」

 あーくそ,仕方ないな……ごろんと寝返りを打つと,ゆみりの頭を抱えて自分の胸に引き寄せる。

「わぁっ,すずちゃんのおっぱい,ふかふか」

「こんなののどこがいいんだよ,もう……」

 邪魔だし,重いし,女みたいだし……ぼくに何のメリットが……

「撫でてくれないの?」

「……分かってるよ」

 なるべく雑にならないように,サラサラのゆみりの髪を手で梳いては撫でる。どこにも引っかかることなく,力を入れることもなく,するりと指の間を通り抜けてはサラリと零れ落ちて。

「なぁゆみり,いつまでこうしてれば…………ゆみり?」

 視線を下に落とすと,返事は寝息で帰ってきて。

「……ちぇっ,寝ちゃったのかよ」

 ほんとにワガママ気ままなんだからな,もう。

 さて,ぼくも寝ようかな,とゆみりを離そうとしても,ぼくの片腕はゆみりの身体の下で。それならばと転がそうとしても,ゆみりは重くて動かない。

 ……どうすればいいんだこれ……?

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