連れてこられて。
…………どうして、こんなことに…………
「ここだよ、すずちゃん」
ゆみりに引っ張られるままに電車に乗って、降りて、歩いて、たどり着く。もちろんその間、手は繋ぎっぱなし。ゆみりも離してくれないし、ぼくだって離すつもりは無い。その代わりちょっと歩きにくいけど…………温かいから、まあいいや。
「ただいまぁっ」
ゆみりが元気よく家のドアを開けると、
「おかえりなさーい、ごはんもうちょっと待ってねぇー」
と奥の方から返事が返ってくる。
「ママー、友達連れて来たよー」
ゆみりがとてとてと靴を脱ぎ散らかして廊下を歩くと、奥からはガシャンと何かが落ちる音。
「ゆみり、今なんて? 」
奥からこれまたとことこと歩いてきたのは、
「ママ、ただいま」
…………ビッグゆみり。コホン失礼、ゆみりのお母さん? だった。というか似てるな……
「初めまして、お邪魔します」
とりあえず玄関で挨拶すると、
「まぁぁぁぁっ♪♪」
いきなり走り寄ってきての抱っこ。ぐえっ、な、中身が出るっ、ギブっ、
「うんうん、可愛いわねぇ、すりすり」
ひいっ!? スリスリされてるっ!?
「ママやめてよ、みっともないから」
珍しくゆみりがツッコミ担当。
「あらごめんなさいね、可愛いからつい」
ふぅ、やっと解放された…………
「ぜひ上がってってちょーだい♪ 今ケーキ焼くわね」
「あっママ、その前にさ、すずちゃんのお洋服のお洗濯して欲しいんだけど」
「お洗濯? あらまぁ、スカートがシミに」
ゆみりママの目が鋭くなる。
「ゆみり、濡れた布巾と乾いた布持ってきて」
「はーい」
とっとこ走っていくゆみりと、ぼくのスカートをくいくい引っ張るゆみりママ。
「これはココアかしら? 」
「はい、飲んでたらこぼしちゃって」
あえてゆみりとのことはぼかす。
「もーう、おっちょこちょいさんなんだからっ♪」
うん、まぁ、それは否定しないです。ゆみりのこと誤解してたし。
「持ってきたよっ」
「はーいありがとっ、それじゃあこれ持ってて」
「? 」
乾いた布?
「えーい」
ぺらん。…………ひゃあっ!?
「い、いきなりめくらないでくださいよっ!? 」
しかも今日のは、ゆみりとのデートの時に買ったおニューの…………ぽふん。
「じゃあ乾いたのちょーだい」
と、乾いた布を裏地に当てて、その表から濡れた布巾でぽんぽこ叩いていく。
「そこまで時間経ってないならこれで落ちるけど、いつぐらいにこぼしたの? 」
「あ、えーと」
「んーとね、私が開けて飲む前に時計見たからー、30分ぐらい前かなぁ」
あっ…………
「ふうん? じゃあこれ、ゆみりがこぼしたのね? 」
ゆみりのアホォ…………せっかくこっちで罪を被ってやったのに…………
「ゆみり、お説教するからこっち来なさい」
ガシッと掴まれたゆみりの腕。
「わーん、助けてー!? 」
「あれ程周りには気をつけなさいって言ってるのに! もう、この子ったら……」
うわぁ、なんか大変なことになりそうだなぁ…………今のうちに逃げとこ……
「そ、それじゃあぼくはこれで……」
そそくさと逃げ出そうとするぼくの肩に手がかけられる。
「あら待って! そのままだとシミ残っちゃうわよっ」
「いいですっ、自分服飾科なんで自分で落とし方知ってますからっ」
「ダメよっ!! 早いうちに抜かないと布が痛むからっ、今日はうちに泊まってきなさい」
…………………………へ? 今なんて?
「とま…………る…………? 」
ゆみりんちに? ぼくが?
「…………いや、あの、それは流石に……」
「わぁいっ、すずちゃんがお泊まりだっ」
いやちょっと待って、………………なんでそうなるのっ!?
「うちのゆみりが迷惑かけたし、こんなことぐらいしか出来ないけど泊まってって、ね? 」
あっ、これ「はい」か「イエス」しか選択肢ないやつだ。
「…………はい」
ぼくは無言で頷くしかなかった…………




