第77話
総司の療養所―
総司ははっと目を覚ました。
総司「礼庵殿…!」
そう言って、半身を上げた。…が、礼庵は柱にもたれて、うたた寝をしている。
総司「…礼庵殿…」
夢の中と同じように、礼庵は寝ていた。
総司はゆっくりと体を起こした。
無理な体勢で眠っている礼庵を、夢の中のように担ぐことはできないが、なんとか床へ寝かせてやりたいと思っていた。
しかし、総司の体は思うように動かない。総司は老婆を呼ぼうとふすままで行こうとした。
礼庵「総司殿!」
その声に、総司は驚いて振り返った。
礼庵「すいません。つい寝入ってしまって…。どうしました?水ですか?」
礼庵があわてて、総司の体をささえ床へと戻した。
総司は目を伏せ、首を振った。
総司「…私は…もうあなたを守ることすらできない…。」
礼庵「?…総司殿?」
総司「何もありません。大丈夫です。」
総司は微笑んで見せた。礼庵は不思議そうな表情をしたが
礼庵「喉が渇いたでしょう。水を持ってきますよ。」
と言って、部屋を出て行った。
総司(違うのに…)
総司は自分の不甲斐なさに、苛立ちを感じていた。
…が、もう自分の体が思うように動かないのだから、仕方がなかった。
総司(…私も…もはや、生きる屍でしかない…)
そう思った。




