第75話
江戸 総司の療養所―
総司は夕方になってやっと起き上がり、縁側に座っていた。
暮れ行く夕陽を見ながら、礼庵が来るのを待っている。
総司「今日も暮れてしまうな…」
そう呟くことが日課になってしまっていた。陽が暮れていくのを見るたびに、自分の死期を感じてしまう。
「総司殿…起きていらっしゃっていたんですか。」
その声に、総司は振り返った。礼庵が隣まで来るのを黙って待った。
総司「今日は…具合がいいようです。」
さっきまで寝ていたことを悟られまいと、総司はそう言った。
礼庵は総司が差し出した手を取り、脈を見ている。
礼庵「そうですね。熱もないようですし…ただ、脈がいつもより速いかな。」
総司「礼庵殿は…大丈夫ですか?」
礼庵「…え?」
総司「昼間は養生所で働いておられるのでしょう?そして夜は…それも遅くまでここにいるし…」
礼庵は微笑んだ。
礼庵「大丈夫です。昼も夜もないのは、京にいた時と同じでしたから。」
総司「そう…それならいいけれど…」
総司はそう言って、もう暗くなりかけている空を見上げた。
総司「…いつも…あなたには申し訳ないと思っているんです…。毎日…朝が来るたびに…「明日は来なくていいですよ…」って言おうと思うんですが…。」
礼庵は驚いた表情をした。
総司「…でも、あなたの顔を見ると…言えなくなってしまうんです。…」
礼庵「私は、「来るな」といわれても、来ますよ。言うだけ無駄です。」
礼庵がにこにこと微笑みながら言った。
総司も笑ってうなずいた。
……
突然ですが、ごめんなさい。第70話で、土方さんを生霊にしちゃいました(--;)だって、ここの総司君があまりに寂しがるので(^^;)友情のなせる業といいますか、なんといいますか、こんな事があればいいな…と思いまして…。ほんとすいません。
新選組といいますと、有名な著者さんが書かれるのでも「男の友情」が主になっていますね。それがあまりに深すぎて、近藤さんと土方さんの「ホモ説」まで出たくらいですから(笑)そこまででなくても、司馬遼太郎氏の書かれた「前髪の惣三郎(新選組血風録)」(映画では「御法度」)くらいの事はあったかもしれません。
その司馬遼太郎氏の書かれた新選組といえば、やっぱり「燃えよ剣」ですね!
その中で一番好きなシーンは、総司さんが亡くなったずっと後、土方さんが夢を見るシーンで、総司さんが部屋の中にあらわれます。総司さんは、床の上で肘をついて寝ていて、確か土方さんに「相変わらず行儀の悪い奴だ」というようなことを言われていたような気がします。そして、その姿が消えた後、土方さんも総司さんがいた場所で、同じような格好で寝るんです。土方さんがどれだけ総司さんのことを思っていたかわかるような「じーん」とくるシーンでした。
それにはあまり関係ないですが、黒鉄ヒロシさんの「新選組」でも、黒鉄さんがのった汽車に、土方さんや近藤さんが次々に出てくるんですが、そこへ総司さんが荷物を置く上の網に、寝っ転がって出てくるんです(笑)総司さんならやりそうだなぁ…と笑ってしまいました。(ちなみに近藤さんは落とされた首を手に持って登場されるんです。これも黒鉄さんならではのブラックユーモアですね。)
さて…だんだん、ここの総司も動けなくなってきました。正直、一番書きにくいところに差し掛かっています。礼庵中心になってしまうシーンもあるかと思いますが、最後までよろしくお願いいたします。




