第71話
江戸 総司の療養所―
総司は、土方ともっと話したいと思っていたが、何を話していいのかわからなかった。
迷っているうちに、土方が消えた。
それと同時に、礼庵が心配そうに総司の顔を覗き込んでいる。
礼庵「総司殿…?総司殿!!」
総司は、はっとして目を開いた。
さっきまで開いていたつもりだったのに、そうではなかったことに今になって気づいた。
総司(夢だったのか…)
総司はそう思ってがっかりした。
総司(…土方さんが来てくれたと思っていたのに…)
その総司の表情に、礼庵は不安そうな顔をしていた。
礼庵「総司殿…どうしました?」
総司「…土方さんが…今、傍にいたような気がしたんですが…」
礼庵「…!?」
総司「夢だったようです。…残念だな…。」
礼庵は微笑んだ。
礼庵「夢でも、よかったではないですか。…きっと、総司殿のことを心配しておられるんですよ。」
総司「礼庵殿は…「生霊」って信じますか?」
礼庵「!?…「生霊」…ですか…」
困惑している礼庵の表情を見て、総司は苦笑した。
総司「信じませんよね…。…やっぱり…夢だったのか…。」
礼庵は一層困惑した表情をした。
総司「夢でも…嬉しかった…。とても元気そうだったし…。」
礼庵はほっとした表情をした。
総司の嬉しそうな表情を見ていると、夢でも、生霊でも、どちらでもいいような気がした。




