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第67話

総司の療養所―


実は、礼庵は近藤のことを、植木屋の主人から聞いていた。

主人も、最近になってやっと聞いたらしい。


近藤は、斬首の刑に処せられていた。

切腹すら赦されなかったと聞いて、礼庵は愕然とした。

礼庵は近藤が元が武士ではない…ということは知らない。それだけに衝撃は強かった。


主人「…宗次郎様にはお伝えするべきではないかと…」


その主人の言葉に、礼庵はうなずいた。

しかし、土方はまだ生きていて、新選組として闘い続けている…ということを聞いて、礼庵は救われたような気がした。


礼庵(土方殿…どうか、生きてください。…負けても勝っても…生き続けてください…!)


礼庵はそう祈った。


……


回想 京の町中-


礼庵が回診に出たある日、隊服を着た数人の隊士を連れた土方が、後方から歩いてきた。町の人々は、恐れるように土方達に道を譲っている。

礼庵は振り返って、土方に頭を下げた。


土方「おお、おぬし…」


土方が立ち止まった。後ろの隊士達も立ち止まる。

土方は、ふと振り向き、先頭の隊士に「先に帰ってくれ」と言った。隊士達は土方に頭を下げ、礼庵にも頭を下げて立ち去っていった。


土方「診察か?」


土方は、礼庵の持っている薬箱をあごで指して言った。


礼庵「はい。もう帰る所でございます。」

土方「では、いっしょに参ろう。」

礼庵「はっ!?…はい。」


礼庵は緊張していた。土方に毛嫌いされている事は、なんとなく感じていたのだが…。

土方は腕を組んだまま、何も言わずに前を歩いている。



人気ひとけのない道にさしかかったとき、土方が突然立ち止まって、礼庵に振り返った。礼庵も思わず立ち止まった。


土方「そなた、女だろう。」


礼庵は息を呑んだ。すぐには答えられなかった。

土方はいきなり礼庵の手を取り、自分の目の前にかざした。


土方「この手は女だ。どんなやさ男だって、こんなに線の細い手のものはおらん。」


そう言って、礼庵の手を離した。

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