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第66話

京、池田屋―


総司は近藤の姿を見て、体を起こした。

土方は近藤の後ろで心配げに総司を見た後、横で寝ている藤堂に声をかけている。


総司「先生…私は…先生のお役に立てませんでした…。申し訳ありませんっ!!」


総司はそう言って、その場へ平伏した。

近藤はその総司の背を優しくさすった。


近藤「そんなことはない。…よくがんばってくれた。…それより、無理をさせてすまなかったな。」


総司は涙に濡れた顔を上げた。


近藤「…ありがとう、総司。…本当にありがとう。」


近藤はそう言って、総司の背を何度も優しく叩いた。


総司「先生…。」


総司は頭を垂れた。…嬉しいよりも、辛かった。

そんな総司の気持ちをわからない近藤は満足げにうなずくと、体を反して、藤堂に声をかけた。

入れ替わりに土方が総司の前に来た。


土方「総司…熱があるのにすまなかったな。…具合はどうだ?」

総司「大丈夫です…本当に・・申し訳ありませんでした。…逆に足手まといになってしまいました…」

土方「いや、よくやった…。よくやってくれたよ。…もう少し休んでおけ。夜が明けたら、一緒に屯所へ帰ろう。」

総司「…はい…」


総司は土方に支えられて、再び体を横にした。


……


総司は目を覚ました。

見覚えのある天井が総司の目に映った。


「総司殿…お帰りなさい。」


聞きなれた優しい声がした。見ると、礼庵が微笑んでいる。


総司「…ただいま…礼庵殿…。」


総司はそう言うと、いつものように手を差し出した。礼庵はその手を取り、脈を見る。


総司「…私は…何か言っていましたか?」

礼庵「ええ。しきりに謝っておられました。…脈も落ち着きましたね。熱も下がっていますよ。」


礼庵はそう言って、総司の手を離し、布団の中へと戻した。


総司「謝っていましたか…」

礼庵「どこへ行っておられました?」

総司「…池田屋です。」

礼庵「!!」


礼庵は驚いた表情をしたが、やがて微笑んだ。


礼庵「これはまた、遠いところへ…」


総司は力なく笑った。


総司「…考えてみれば、血を吐いたのはあの日が初めてでした。…」

礼庵「そうでしたか…。」

総司「…どうしているかな…近藤先生は…。…土方さんも…」


礼庵は、何も答えられなかった。

……


お読みいただきありがとうございます(^^)

今回の日記の中に「池田屋」が出たので、ちょっとその話を…。

総司さんの発病時期は、未だにはっきりしたものはありません。

ほとんどの小説家さん方は「池田屋で喀血」説を取っていらっしゃいますが、さて、本当はどうだったんでしょうね…。

永倉さんの手記に、総司さんが池田屋で喀血したとは書かれていなかったんですが、肺病が理由で斃れた…というような記述から、喀血したのだろう…という憶測が広まったものと見られます。

確かに、喀血するほどのことがなければ、あんな斬り合いの中で、外へ出されるなんてことはなかったでしょう。藤堂さんも額を斬られ、一緒に外へだされています。藤堂さんもかなりの剣の使い手。二人の剣の使い手が斃れた後は大変だったでしょうね。

しかし喀血した後に、二年ほど何もなく、また喀血した…というのには、私自身、日記を書いていて、かなり無理があるように思えてきました。しかし…喀血しなかったのであれば、どうしてあの斬り合いの真っ只中で外へ出されたのでしょう?よほどの高い熱を出されて斃れた…という風にしか思えませんが、いきなり高熱をだすものでしょうか?池田屋へ行く前に、かなりの熱があったとして、本人がそれを隠していたにせよ、周りが気づかないものでしょうか???喀血しなかった…と考えたとしても、無理があるように思います。

…私自身は、結局「池田屋で喀血」説の方を取っておりますが、これは、永遠の謎として残っていくのではないかと思います。

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