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第52話

京、川辺―


総司は川辺に座り、川で遊ぶ子供達を目を細めて見ていた。


総司(皆、元気そうだ。…よかったなぁ。)


総司は、そう思った。

子供達は、川辺に座っている総司には気づいてはいない。

時々、こちらに走り寄ってくるが、総司のことは全く無視している。

しかし、総司はわかっていた。

自分はもう、この世にいないのだ。魂だけがここに戻ってきていることをわかっていた。


総司(私は、こんな日を待ち望んでいたんだ。誰も、私を沖田総司とは気づかない…そんな日を…。)


総司はのびをした。そして、両足も伸ばした。


「沖田先生!」


そう呼びかけられて、総司は驚いて振り返った。

懐かしい顔が自分を見下ろしている。


総司「…中條君…?」

中條「駄目じゃないですか。先生はまだここに来てはならないんです。」

総司「?…どういうことだい?」

中條「さぁ、戻りましょう。江戸へ。」

総司「江戸へ?」

中條「まだ、早すぎます。さぁ…早く戻りましょう!」


中條が総司の腕を取って、無理やりに立ち上がらせた。


総司「中條君…頼むよ。…もう少しここにいたんだ。」

中條「局長!沖田先生になんとか言ってください!」

総司「局長?」


総司は驚いて、中條が向かっている先を見た。

確かに、近藤が立っている。にこにこと微笑んで、腕を組んでいた。


近藤「総司。おまえはまだここにくる時じゃない。早く江戸へ戻るんだ。」

総司「先生…先生がどうして中條君と?」

近藤「いいから、戻れ。さぁ、帰るんだよ。」


近藤は、総司の背を優しく叩いた。

そして、何事かを総司に言った。が、総司は何を言われたのかわからない。

突然、総司の体が浮いた。


総司「近藤先生!…なんです?なんとおっしゃったのです!?」


総司は、遠くなる近藤に向かって叫んだ。

近藤は腕を組んだまま、にこにこと総司を見送っている。


……


「!!!」


総司は飛び起きた。…体中にびっしょりと汗をかいている。


総司「…近藤先生は…まさか…」


中條の夢はよく見る。そしてその中條はいつも、先に死んだ人たちと一緒にいた。

…そして、今の夢は近藤と一緒だった。

総司は首を振った。


総司「違う…絶対に違う…!」


総司は両手で顔を覆った。そして信じるまいと思った。

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