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第5話

総司の療養所―


黒猫はじっと総司を睨みつけるようにして見ている。。

総司はその猫の眼を見て、京で見てきた討幕派の浪人達を思い出していた。


……


「沖田総司だ!!おい!沖田総司だぞ!!」


その一人の浪人の叫びとともに、数人の浪人が刀を抜いて、総司をぐるりと取り囲んだ。


総司「…考え直して下さい。…今日は、誰も斬らぬと決めたのです。」


総司がため息混じりに言った。


「…それなら斬らぬがいい…」


一人の浪人が総司に刀を振りかざして飛び掛ってきた。

総司は抜き打ちに刀をはじく。鈍い音が響いた。


総司「…自分の命がかかっているのならば別です。」


総司の目が鋭くなった。高下駄も言いながら脱ぎ払っていた。


「相手は独りだやっちまえ!!」


浪人たちが一斉に総司に襲い掛かった。


……


総司がはっと気づくと、いつの間に手に取っていたのか、刀を抜いていた。

黒猫はそんな総司に対して、落ち着きを見せている。


総司「…ばかにするな…!!」


総司は刀を振りかぶり、黒猫に斬りかかった。黒猫は余裕を見せて、刀から逃れた。

そして、再び威嚇して見せた。


「宗次郎様!!おやめください!!」


そんな声が総司の耳に届いた。老婆の声だった。

総司は振り向きもせず、息を切らして黒猫とにらみ合っていた。


総司「…だめだ…私には斬れない…どうしても…斬れない…」


手から力が抜け、刀の切っ先が地面についた。


総司「この私が…沖田総司と言われた男が…」


総司はそう呟くと、ふらふらと縁側へと倒れこんだ。


老婆「宗次郎様!!」


老婆が総司に駆け寄り、体をゆすった。


…その日一日、総司は床から起き上がることはなかった。

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