第45話
総司の療養所―
総司は姉を抱いたまま、じっとしていた。
出そうになる咳も抑えているが、どうしても出てしまうものは仕方がない。
必死に口を押さえて、大きく咳き込まないように堪えていた。
やがて、姉みつが目を覚ました。
「…!…」
みつは驚いて、弟を見上げた。
みつ「…まぁ…ごめんなさい!…つい寝てしまっていたのね…」
みつは総司の胸から離れた。総司は少し残念な気がしながらも、手を離す。
みつ「いやだわ…何か恥ずかしいわね。」
みつは本当に顔を真っ赤にしている。
総司「気持ちよさそうだったよ。初めて見た…姉さんの寝顔…」
みつ「…やめてちょうだい。本当に恥ずかしいんだから。」
みつは頬に手を当て、背中を向けて言った。
総司「…姉さん、無理しないでよ…。…無理をされるとよけいに辛いんだ。」
みつ「!…」
総司「私は大丈夫だから。…ね。」
みつは下を向いて、うなずいた。
みつ「わかっているのよ。あなたは私がいなくても、大丈夫だって。…でもね。姉さん、あなたの世話を充分にできないうちに、幼いあなたを独り、試衛館へ離しちゃったでしょう…。…せめてその償いをしたいのよ。」
総司「姉さん…」
みつ「…今更だけど…償わせてちょうだい。…ほんの少しずつでも。」
総司は黙って姉の顔を見つめていたが、やがて、こくりとうなずくようにして下を向いた。
膝を握っている手の甲に、総司の涙が落ちた




