第43話
江戸 総司の療養所―
姉みつは今日も、総司の着物を縫っている。
別れの日が近いことを知ってから、何かとりつかれる様にして縫っている。
総司「姉さん、よくあきないね。」
何も知らない総司があきれ顔で言った。
みつ「何枚あっても困るものじゃないでしょう?」
みつは微笑んで答えた。
総司「そうだ…姉さん…悪いけど、作って欲しいものがあるんだ。」
みつ「え?なあに?」
みつは驚いて手を止めた。総司は少し恥ずかしそうにしている。
みつ「なあに?総司…。」
総司「…お手玉。」
みつ「!?」
みつは驚いた表情をした。思いもよらぬ言葉だったのだ。
総司「…やっぱり、いいよ。」
総司は赤い顔を縁側に向け、呟くように言った。
みつ「!…いいわよ。簡単だからすぐに作ってあげる。」
みつは慌ててそう答え、老婆へ端布がないか尋ねに部屋を出て行った。
総司は礼庵のことを思い出したと同時に、みさのことも思い出したのだった。
みさは、お手玉が上手だった。
初めて会ったときも、自分の好きなお手玉を持ってきてくれた。
目を閉じれば、みさが得意げな表情でお手玉を操る姿がすぐに浮かぶ。
…総司はそっと、こぼれた涙を指で拭った。




