第4話
総司の療養所―
翌朝―
総司が目を覚ますと、縁側にすずめが止まっていた。ちゅんちゅんと鳴きながら、何もない縁側の床をつついている。
総司「…もうそんな時間だったのか…」
総司はあわてて起き上がり、傍に置いてあった米粒の入った皿を手に持った。
老婆が用意してくれた皿だった。
毎朝、貴重な米粒を一つまみ入れて、置いてくれている。
総司は、その皿の米粒をいくつか取り、庭に投げた。
それを見たすずめが飛び立って、庭に飛び降りた。
総司「ごめんよ。つい寝坊してしまったらしい。」
そう言いながら縁側に座り、米粒をついばむ、すずめ達を眩しそうに見ていた。
しばらくして、突然すずめが飛び立った。
はっとしてあたりを見渡すと、黒い影が庭に入ってくるのが見えた。
総司「!!…猫…!?」
総司は皿を傍に置いて、その影を息をひそめてみた。
影の正体は黒猫であった。
その体はさほど大きくなかった。…が、仔猫でもない。
総司「!!…くろねこ…!?」
黒猫は、のっそりと庭に入ってきた。あたりを見渡しもせず、まるで自分の家のようにして入ってきている。
そして、ふと総司の方を見た。
総司「……」
総司は黙ってそのまま黒猫を睨みつけた。
黒猫も立ち止まり、総司の方を見ている。前片足があがったままであった。
双方、しばらくにらみ合ったまま、動かなかった。




