表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/101

第39話

総司の療養所―


夕方、総司は縁側に座ったまま、暮れていく空を見ていた。

黒猫は、もういない。

いつも暮れる前にどこかへ行ってしまうのだ。そして、朝になるとまたどこからか現れる。


総司「今日も早かったなぁ…」


そう思っていると、あわただしい足音がして、いきなりふすまが開いた。


総司「!!」


総司はとっさに腰を浮かせたが、入ってきた人物を見て、ほーっと息をついた。


総司「…姉さん。驚かさないでくださいよ。」

みつ「よかった…無事で…」


みつはその場に臥せって泣き出した。総司は目を見開き、姉の傍までにじり寄った。


総司「どうしたの…姉さん?…」


姉の背にそっと触れると、みつは総司の首に抱きついてきた。


総司「!!…」


みつは、昼に官軍の兵士が来たことを、老婆から聞いたのだった。

老婆が大丈夫だと言おうとしたが、もうその前に総司の部屋に走りこんでしまっていた。


みつ「姉さん…もう…寿命が足りなくなってしまう…」


みつは総司に抱きついたまま言った。


総司「大丈夫だよ、姉さん。どんなに寿命が縮んでも、姉さんは長生きするから。」

みつ「…本当に…この子ったら…」


みつは総司を抱いたまま泣いた。

そして、総司は姉のぬくもりを感じながら、じっと目を閉じていた。


……


総司は床に寝ている。

その横で、みつはいつものように縫い物をしていた。


みつ「やっぱり…明日から、毎日来るわね。何が起こるかわからないもの…」


総司はくすりと笑った。

総司は、昼に姉がいなくてよかった…と思っていたのである。

あの狼狽ぶりからすると、官軍の兵士の前でも何を口走っていたかわからないと…。


みつ「なぁに?…何を笑ったの?」

総司「ううん。何でも。」

みつ「…何か言いたそうだけど…?」


総司は体を横にして、姉に背を向けた。


総司「もう寝よっと。」

みつ「…嫌な子ねぇ。」


みつはそう言いながらも、ふっと表情を緩めた。何よりも、弟が無事でよかった…。そう思い、再び縫い物を続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ