第37話
江戸 総司の療養所―
総司は独りで、縁側に座っていた。
膝には黒猫がいる。
総司「…黒猫殿…今日も元気そうでなにより。」
総司は黒猫の体を撫でながら言った。
総司「生まれ変わり…というのが本当ならば…私は猫になろう。…そなたのように…」
黒猫は目を閉じたまま、黙っている。
総司「そなたと同じ黒でもいいし…白でもいい…。自由に歩き回りたいな…」
黒猫がくいっと顔を上げて、総司を見上げた。
総司はくすくすと笑った。
総司「猫だって、大変なんだ…って言いたげだね。」
黒猫は納得したように、目を細めた。そして再び総司の膝にうずくまった。
総司「それは失礼した。…でも…今のそなたのように…私も、誰かのぬくもりを感じながら、眠ってみたいな。」
総司はそう言いながら、空を見上げた。
その時、ふすまの外から声がした。老婆である。
総司「どうぞ。」
総司がそう言うと、ふすまが開き、老婆が入ってきた。
何か怯えている。
総司「?どうしました?」
総司がそう言うと、老婆の後ろに2人の男が立っているのが見えた。
総司はついと目を上げた。そして悟った。
総司(…官軍…)
寝ていた黒猫も何かを悟ったのか、総司と同じようにその男達を見つめている。




