第28話
総司の療養所―
総司は、暮れていく空を、縁側に座って見ていた。
京でも、巡察の帰りなどによく見上げたものだった。
新人隊士などは、この赤い空で門限を判断したものだ。
総司「…今日も暮れてしまうな…」
そう呟いた。もう口癖になってしまっている。
老婆が入ってきて、声をかけてきた。
老婆「よくあきずに、見ておられますねぇ。」
総司の床を替えながらそう言っている。
総司「うん。…どうしてだろう…。毎日変わらないのにね。」
総司がそう答えた。
老婆「あ、そう言えば、今夜はみつさんが、宗次郎様のお食事を持ってこられるとおっしゃっていましたよ。」
総司はうれしそうに、老婆に振り返った。
総司「そうなんだ。…考えてみれば、姉さんの手料理ってずっと食べていなくて…楽しみだなぁ。」
老婆「まぁ、本当にうれしそうな顔をなさること。」
老婆はそう言って笑った。
総司「いつもは、日が暮れるのが怖かったけれど…。今日は早く暮れてほしいなぁ。姉さん、早く来ないかなぁ。」
老婆「まるで、子どものようですわね。」
総司は苦笑した。京でも土方によく子供扱いされた。
総司(…土方さん…どうしているだろう…。近藤さんも…また文をくださるっておっしゃっていたけれど…。…原田さん、永倉さん、斎藤さん…井上のおじさん…皆…元気かなぁ。)
空が暮れていくうちに、総司の心も沈んでいくようだった。




