第26話
総司の療養所―
総司はみつの言うとおり、今日は具合がよかった。
時々咳き込むことがあっても、縁側に座っていることができたからである。
総司「外を歩きたいなぁ。」
体の調子がいいと、いつもそう思う。
しかし、総司を狙う官軍がいつ来るかも知れない。そのために外へ出られないでいるのだ。
総司(…こんな…いつ死ぬかわからない体で…もう、どうなっても構わないのだけれど…)
総司は、ふとうつむいて思った。しかし、自分はよくても、みつが悲しむだろう。
…そして、近藤も悲しむだろう。
そう思うと、勝手な行動が取れなかった。
総司(…かわらないなぁ…京にいた時と…)
総司は目を閉じて、思い出していた。
……
「先生!先生!一人で出歩いちゃいけないと、副長がおっしゃっていたではありませんか!」
聞きなれた声が総司の後ろからした。
総司がげんなりとして振り返ると、中條と山野が息を切らして、総司の後ろに立っていた。
総司「…見つかっちゃったか。」
総司は頭を掻いた。
山野「見つかっちゃったか…って…。先生!わかっていて、一人で出られたのですかっ!?」
総司「山野君、そんなに目くじら立てないで下さいよ。」
総司は両手をあげて、山野に言った。山野はそんな総司に険しい表情で、迫ってくる。
山野「先生のお命はご自分のものだけじゃないんです!お願いですから、副長の命に背かないで下さい!!」
総司「わかった!わかったよ!…すまなかった!」
総司は山野に両手を合わせて、拝んで見せた。山野は驚いて、一歩退いた。
山野「…もう…先生は本当に…参ったなぁ…」
今度は、山野が頭をかいた。その2人の姿に中條が吹き出している。
……
総司「山野君…元気かなぁ…土方さんについていっているのかなぁ。」
総司が思わずそう呟いた時、洗い物を済ませたみつが、ふすまを開いた。
みつ「総司…もう昼ごはんですよ。」
総司「ええ?もう食べるの?…まだいいよ。」
みつ「だめよ!…子どもじゃないんだから言うこと聞きなさい!」
総司「…はいはい、姉上…。」
総司は、ため息まじりに答えた。




