第24話
総司の療養所ー
総司は多弁になっていた。
床に寝たままだというのに、一生懸命横で座っている姉のみつに話していた。
総司「近藤先生は、私に「また助けて欲しい」とおっしゃったんだ。」
みつは、総司の心から喜んでいる表情を見て、涙が出そうになった。
こんな表情を見せたのは、初めてだったのである。
総司はこの千駄ヶ谷に来てからというもの、姉に再会した時以来は、声をあげて笑ったり、喜んだりすることはなかった。
姉のみつには、いつもにこにこと微笑んではいるが、この生活を楽しんでいるようには見えなかった。
何か、捨てられた猫のような、寂しげな微笑を見せるだけであった。
そんな総司が、床で寝たままとはいえ、目を輝かせて近藤が訪問した話を何度も何度も繰り返し、姉に話すのである。
みつの記憶では、こんなに多弁な総司は、幼いときからなかったように思う。
みつ「…本当に、よかったわね。…私もお会いして、お礼を言いたかったわ。」
みつは、主人の用事で来られなかったのである。近藤の訪問は突然だった。
みつ「ねぇ…総司…。話している途中で悪いけれど…土方さんは来られなかったの?」
総司は首を振った。
総司「…私も土方さんのことを聞こうと思ったのだけれど…そんな余裕がなかったんだ…」
みつ「そう…」
総司の表情が暗くなったのを見て、みつは慌てて言った。
みつ「土方さんもきっと来られるわよ。何か事情があって、一緒に来られなかったんだわ。」
総司「…うん…。きっと…来て欲しいな…。」
総司は寂しそうに微笑んだ。…みつは、また総司が元に戻ってしまったようで、自分の言葉を後悔していた。




