第21話
総司の療養所―
総司は昼になって、床の中でうとうとしていた。
そばにいる黒猫も、総司の体の横で丸くなり、眠りに入りかけているようである。
総司「いいなぁ…黒猫殿は…」
総司が言った。最近、眠るのが恐くなってきたのである。
眠ってしまうと、もう目を覚ますことがないような気がして…。
総司は自分の肩元で寝ている黒猫を再び見た。
総司「気持ちよさそうだなぁ…。やっぱり寝るか。」
総司はそう言うと、ゆっくりと目を閉じた。
……
「先生、先生、起きてください。」
総司はその声に驚いて、はっと体を起こした。
目の前には、中條がいた。
総司は目をこすった。
総司「ごめんよ。うたた寝をしていたらしい。…なんだったかな…稽古だったかな?」
総司がそう言って、床から出ようとすると、中條は笑いながら首を振った。
中條「違うんです。近藤局長がお呼びになっておられます。すぐに部屋へ来るようにと。」
総司は「そうですか」とほっとした。
総司「ありがとう。すぐに行きます。」
中條は頭を下げて、部屋を出て行った。
総司は身支度を整え、部屋を出ると、廊下で八番隊組長の藤堂と出くわした。
藤堂「遅かったですね、沖田さん。局長を待たせるなんて、大した度胸ですね。」
総司「!そんなに、待たせているのですか!?」
藤堂は笑いながら、立ち去って行った。
総司「しまったな…早くいかなきゃ。」
総司は、急いで部屋へと向かった。
すると、部屋の中から「総司、総司」と呼ぶ声がする。
総司「近藤先生!今、まいります!」
総司はそう叫んで、ふすまを開いた。その時、まぶしい光が総司の視界をうばった。
……
「総司…起きたか?」
総司は、はっと声のした方を見た。
その声の主の顔を見て、総司は目を疑った。
総司「近藤…先生…?」
近藤がにこにことして、総司を見下ろしている。
近藤「やっと来られたよ。…起こしちゃ悪いと思ったんだが…時間がなくて…すまなかったな。」
総司は、とたんに顔をくしゃくしゃにした。そして、その場で正座をし、近藤に向かって手をついて頭を下げた。




