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第一章

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28 謎の美人なお姉さん

「美人で巨乳のお姉さんは好きかしら?」

 ぽかんとするミモザの目の前には美人なお姉さんが立っていた。


 場所は中央教会に移動していた。このアゼリア王国では一応女神教が主流な宗教である。なぜ『一応』とつけたかといえば、精霊信仰もそれなりの数、というよりもそもそものベースに入ってくるからだ。

 実は女神教自体は仲の良い隣国からの輸入である。この国の土着の宗教は精霊信仰であり、それは精霊は守護精霊も野良精霊もみんな尊いため敬いつつ仲良くやっていこうというアバウトなものだ。そこにはあまり具体的な教義や儀式は存在せず、概念だけがある。そして女神教はというと、この世の精霊は総じて女神様が生み出した存在であるという宗教だ。教会も教義も存在するし、実は聖騎士を目指すにあたって攻略しなければならない7つの塔は通称『試練の塔』といい教会の管理下にある。これは女神様が人に課した試練、故に試練の塔ということらしい。ちなみに女神教が布教される以前の試練の塔は『精霊の棲家』と呼ばれており精霊信仰にとっても聖域に該当していたりする。この二つの信仰は特にぶつかることなく共存していた。理由は精霊信仰のアバウトさだ。女神教が渡ってきた時、この国の人間は精霊信仰マインドにより、精霊っていっぱいいるから精霊を生み出す精霊もいるよねー、というニュアンスでそれを受け入れた。つまり女神様自体も精霊の生みの親ということは精霊なので、精霊を信仰するという行為に変わりはないよね、となったのである。

 隣国の女神教はもしかしたら解釈が異なるのかも知れないが、少なくともこの国ではどの精霊を信仰するのも自由であり、女神様はすべての精霊の大元ということなので女神様を敬えば全部まとめてすべての精霊を敬ってる感じがするので便利だよねーというぐらいの感覚で急速に普及したという経緯があるのだった。


 真っ白い石質でできた回廊を歩く。背の高い尖った屋根が特徴的なその建物は床も壁も屋根もすべて白で統一され、唯一窓だけが色とりどりのステンドグラスになっている。そしてその窓一枚一枚が女神教の聖書に書かれる一場面を表していた。

「ミモザちゃんは中央教会は初めてかい?」

 田舎者丸出しでおのぼりさんよろしくキョロキョロと忙しなく周りを見るミモザにガブリエルは苦笑する。

「えっと、王都に来たのがそもそも一週間前が初めてなので」

「そりゃあいい。どこを見てもきっと楽しいぜ。王都はありとあらゆる店や施設がそろってるからな。観光はしたかい?」

「ええと」

 ミモザは言い淀む。それにレオンハルトは鼻を鳴らした。

「生活するのには便利だが、それだけだろう」

 その言葉にガブリエルはやれやれと首を横に振る。

「お前さんにとってはな。こーんなにかわいいお嬢さんなら楽しいことだらけだ。街に繰り出せばショッピングにランチ、きっとナンパもされ放題だな」

 ごほん、とレオンハルトが不機嫌そうに咳払いをする。そして「まぁ、服は新調した方がいいか」と呟いた。

 確かに、とミモザも頷く。3人はそろってミモザの返り血でべとべとになった悲惨な服を見た。

「教皇様にお会いになる前に身綺麗にした方が良かったんじゃねぇ?」

「俺の家に行く通過点に教会があるんだ。二度手間になる」

「まぁお前さんが血みどろで教会に来るのはよくあることだけどよ」

 ガブリエルはため息をついた。

「ミモザちゃん、どーよ。観光にも連れてってくれねぇ、服も血みどろのまま着替える時間もくれねぇ、こんな師匠でいいのか?」

「えっと、特に困ってはないです」

 修行もつけてもらえてお金も稼げて食事も出る。正直いたれりつくせりである。

 そんなミモザの反応に、当てが外れたガブリエルは「無欲だねぇ」と肩をすくめた。

 その時ばさり、と音を立ててミモザの肩に何かが覆い被さった。びっくりして見上げるとレオンハルトは仏頂面で「着ていろ」と言う。

 掛けられたのはレオンハルトの軍服の上着だった。どうやらガブリエルの言葉を気にしたらしい。

 ミモザは掛けられた上着に腕を通し、少し歩いてみた。そして上着のすそをめくってみる。

 案の定、丈の長すぎる上着のすそはずるずると地面に擦られてたった数歩なのに薄っすらと汚れてしまっていた。

「レオン様、これ」

「後で洗わせる。着ていなさい」

 そのままレオンハルトが歩き出してしまうのに、ミモザは慌てて前のボタンを閉めながらついて行った。

 ガブリエルはそれを新しいおもちゃを見つけたような表情で眺めながら、早足で2人を追い抜いて先頭に出ると一際大きな扉の前で足を止めた。

「ではでは、お嬢さん。こちらに御坐しますはこの中央教会の頭目にして教会騎士団の指揮者、女神教の首魁であらせられるオルタンシア教皇聖下でございます」

 おどけた仕草でお辞儀をし、扉を開いた。


 かくして、扉を開いた先に現れたのは、

「美人で巨乳のお姉さんは好きかしら?」

 黒い軍服に身を包んだ美人なお姉さんだった。

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― 新着の感想 ―
この国の精霊信仰って、日本の神道味があるんですねぇ。 民衆の意識がアバウトなあたりが。
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