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【コミカライズ2026/1/10発売決定!!】乙女ゲームヒロインの『引き立て役の妹』に転生したので立場を奪ってやることにした。【書籍1巻2巻発売中!】  作者: 陸路りん
第二章

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75.意外な再会

「そうでしたか、やはり第一の塔の異常と同様の……」

 扉の向こうから戻ったミモザからの報告を受けて教会騎士の男は静かに思案した。

「念のため第一の塔同様、しばらくは閉鎖して上の指示を待つ形となります。おそらくは有識者達の調査が入ることになるでしょう」

「そうですね」

 その報告にミモザはぼんやりとうなずく。

 塔の中にあったのは扉の異常、巨大ゴキブリ、そしてそれが生まれたとおぼしき卵の殻だ。そのいずれもが第一の塔と同じだ。

 唯一異なるのは第一の塔では巨大ゴキブリのその誕生の瞬間に居合わせたが、今回はすでに生まれた後からの遭遇だったという程度だろう。

 それを踏まえた上で、ミモザが今一番気になる点としては、

(こんなにゴキブリ推しのゲームだったっけ……?)

 ということである。

 一般的に乙女ゲームの敵が巨大ゴキブリというのは苦情がきそうなものだが、どうだろうか?

 しかしミモザには思い出せない。

「ミモザ様、他に気になる点はありますでしょうか?」

「え、ああ、うん」

 そんなことを考えてぼさっとしていたミモザに、騎士がそう問いかけてきた。

 ミモザの仕事はもう終わっている。あとは今回の件を書類にまとめて後日提出するだけだ。

 聖騎士なんぞにいつまでもいられては指揮系統の関係で彼もやりにくいのだろう。

 さっさと撤退してやろうと思いつつ、ミモザは「ああ」と思いついて口を開いた。

「中で逃亡中のステラと会ったんですが、取り逃がしてしまいました」

「えっ!」

「一瞬で消えたから移動魔方陣でもあるのかと思ったのですが、それも発見されなかったようですね」

「……」

 無言で騎士は内部調査に行った騎士達に視線で問いかける。それに彼らは顔を見合わせるとすぐに首を横に振った。

「なかったようです」

「そう……」

 ではやはり保護研究会の秘密のルートを使用したのかも知れない。

「もしかしたら彼女はまた他の試練の塔に現れ、そしてこのような異常を引き起こすかもしれません」

「……っ!? それは……」

「僕にもわかりません。ですが『何かを知っている』ふうではありました」

 ステラが『繰り返した』のはおそらく女神と面会する聖騎士就任の際まで……、だと思われる。女神に『もう一度』を願った関係上、そうでなければつじつまが合わないからだ。

 つまり、ステラも二作目のゲームの展開は知らないはずである。

(まぁ僕も全然思い出せないんですけど!)

 おかしい。本来あるはずのアドバンテージがまったく仕事をしない。

(いつものことだけど)

 まぁ、いつものことですけどね! と内心でぶつぶつ文句を言いつつも、

「この件は上に報告を上げて共有していただけると助かります。第三の塔以降にステラが現れたら要注意だと」

 ときっちり騎士達には言いたいことを言うミモザである。

 その言葉に騎士達は再び顔を見合わせ、「承知いたしました」と静かに礼をした。

 どのくらいの効果があるかは不明だが、警戒するに越したことはないだろう。

 ミモザもそれに軽く頷き返すと、その場を後にした。


(疲れた……)

 はぁー、と肩を落としてミモザは歩く。午前中に出かけたはずなのにもうすでに日が暮れ始め、あたりは橙色に染まり始めていた。

 ちょっと調査に、とふらふら出かけてとんでもない大当たりを引いて帰ってきてしまったものである。

(食堂で食べる気しないなぁ……)

 レオンハルトの態度を思い出してミモザはふと立ち止まる。そしてちらりと周囲に視線を走らせると、

「あれ?」

 明かりをつけ始めた定食屋や屋台、カフェに紛れて見知った人物がいることに気づいて目を見張った。

 銅色の髪を軽く結い上げ、茶色の瞳をした清潔な身なりをした青年。

「ダグさん?」

 そこには第一の塔に隣接する領地フェルミアにて、ミモザとレオンハルトが滞在させてもらったカフェの店主、ダグがいた。

「げ、あんた……」

 ミモザに気づいた彼はとても嫌そうに顔をしかめる。

「なぜここに……?」

「それはこっちの台詞だよ」

 うんざりと彼は応じる。続けて質問をしようと開いたミモザの口は、しかしぐぅと鳴る音に遮られた。

 ミモザの腹の音である。

「……腹減ってんのか」

「……少し座って話しませんか。おごりますよ」

 最近は二人で食事を取ることが多く、ちょうど一人の食事は味気ないと思っていたところだ。渡りに船とばかりにミモザはダグの手を引いて近くの定食屋へと飛び込んだ。

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