第18話 「奥の手、そして終結」
遠くで二体のリザードマンが絶命するのを横目で確認したシュウは、ほほう、と思わず感嘆の声をあげてしまう。
――タケルの聖遺物のクールタイム分の時間を稼いだのか。ソウマもやるな。
タケルの聖遺物は、正直使い勝手が悪い。確かに攻撃力は申し分なく、三人の中だったらダントツの威力を誇る。しかし、一度聖遺物の効果を発動させれば、代償としてそのあとの五分はどんなに頑張ろうとも再度使用はできなくなる。その時間をどのようにして稼ぐのか、それがタケル率いる暁の旅団の最大の課題だった。
――俺も頑張らないとな。
シュウはリザードマンの振り下ろしの攻撃をいなしながら一歩前に出る。大きく空いたリザードマンの胸元。そこにシュウの獅子丸が大きく切り込むが、惜しくも胸当てに弾かれてしまう。
――やっぱり固いな。
もちろん、自慢の聖遺物だとしても、鉄製の胸当てを切れるほど威力がないことは分かっている。それでも、相手の体制を切り崩せないことが悔しかった。
洞窟内に幾度と響く金属音。三体のリザードマンとの戦闘は膠着状態が続いていた。というのも、三体のリザードマンに囲まれるようにして戦いを繰り広げているシュウにとって、責めることはそのまま相手に背後を取られることを意味していた。ゆえに、彼は攻めあぐねていたのだが、転機は突如として訪れる。
二体のリザードマンの動きが変化する。
シュウの背後にいる二体のリザードマン、その二体がシュウから離れていく。
――なるほどな。
先ほど二体のリザードマンを倒したソウマとイチカが合流したのだ。
――ここからは一対一ってことだな。
シュウの予想では、タケルの聖遺物が回復次第、再度ソウマが担当しているリザードマンを片付けることになるはずだ。つまり、シュウに求められていることは、一対一での勝利。
――やってやるよ!
シュウは気合を入れなおし、大きく深呼吸をする。
そして、改めて相手に集中する。
体格は全長二メートル。右手に剣を装備している。リザードマンは通常、主階層二五階に生息しているモンスターで、シュウが相手にしたことがあるモンスターの中では格上の部類になる。それでも、一対一でなら勝てない相手ではなかった。
――問題は、あの固い鱗だな。
シュウの聖遺物「獅子丸」は、相手の注意を強制的に自分に向けさせる効果を持つが、それ以外は普通の日本刀だ。しかし普通の武器で相手の鱗ごと断ち切るなどはできない。
「なかなか面白いじゃねぇかよ」
――必殺技を使うしかねぇかな。
そう考えたとき、相手が動きを見せた。今まで一定の距離を保っていた相手が、その距離を詰めてきたのだ。突如として動いた場面。だが、シュウもそれに対応する。
突っ込んできたリザードマンに対して、シュウは上段で刀を構える。
そして。
「一刀流、上段柳断ち!!」
ただの上段斜め切り下ろし。
一気に突っ込んできていたリザードマンはそれに対応できず、鱗に覆われた首筋で受け止める。だがもちろんそれは固い鱗に弾かれてしまう。が、シュウはそれで止まらなかった。弾かれた勢いを利用して、体を反転させ、横一線の切り替えし。相手もその猛攻に、流石に驚いたのだろう。後ろに飛びのいて距離を空けた。
「なかなか、堅実だな」
見た目に似合わず慎重で、作戦を練り、確実な一撃を見舞ってくる。リザードマンが兵士といわれる由縁だった。
――やっぱり使うしかないか。
シュウはそう考えると、刀を鞘にしまい、腰を落とす。
彼はちらりと自分の右手首に視線を向ける。そこには、一つのブレスレット型の聖遺物が。
――頼んだぞ。
誰にともいえない独り言。
しかし、相手は何かを感じたのだろう。
ギャッと小さく鳴くと、剣を構えた。
「無駄だ。お前はもう、俺のテリトリーに近づくことすらできない」
空気が重くなる。ゆっくりと、しかし確実に、時間が流れていく。
そして。
「グギャァァァァ!!」
耳をつんざくような叫び声。
それを皮切りに、リザードマンが動いた。シュウに対してもう突進し、彼に近づく。
だが、シュウは冷静だった。
「〈断ち切れ、輪廻! 解放!!〉」
その声と共に、シュウの周りに円形の光の輪が出来る。そしてそこに足を踏み入れた瞬間。
「一刀流、抜刀術。横柳断ち!!」
シュウは刀を振りぬいた。
まるで流星のような光の線を引き、横一線。その光がリザードマンの胴体を横切ると、そいつの足が止まる。
そして。
「ギャッ!?」
その間抜けな声と共に、リザードマンの胴体はずり落ち、一瞬にして絶命した。
それと同時。
琴の音が鳴り響く。
それは、戦闘終了の合図だった。
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