悪夢! USBメモリークラッシュ!!
おい神よッ!
いい加減にしないと、いい大人が泣くぞッ!?
いいのかッ!?
俺の名前は松岡良佑。
自慢じゃ無いが、ネット小説大賞11で受賞し、約2年掛けて、2025年9月15日に、まずは分冊版の『信長Take3 ~戦乙女の濃姫と三度めざす天下布武~』が発売された。
そして、10月18日(土)!
ついに電子単行本1巻が発売された!
極めて目出度い日だ!
俺の人生の中でも、何度かは誇らしい事はあったが、これ程身震いする幸福は無い。
だからこそ――
俺は恐ろしい――
誰でも、幸福と不幸は表裏一体だろうが、俺の場合は極端すぎる気がしてならない。
言霊なんて題材を含んだ『信長Take3』何て作品を書いているから、余計にそう感じるのだろうか?
この目出度い日。
俺は極めて浮かれていたし、長年の知り合いである人生の先輩への報告を楽しみにしていた。
人生の先輩は居酒屋を経営しており、販促ポスターを掲示させてもらおうと、そのデータをExcelで一生懸命作成していた。
「間に合った! じゃあ……っと、このデータはこっちの『その他』フォルダに移動しておくか」
信長Take3専用USBメモリー。
落として紛失したら切腹モノのUSBメモリー。
アメリカの海軍大将が運ぶアタッシュケースが手錠で体と繋いでいる様に、私のUSBメモリーも絶対に紛失しない様に使用時は体とUSBメモリーを電話機のコードの様なグルグルハーネスで繋がっている。
対策は完璧だ――
そう思った時、ふと、とある名言が頭をよぎった。
『俺は絶対なんて言葉、絶対信じないけどな』
(何故今、こんな言葉を……? あっ? あれ!?)
私はUSBメモリーにあるフォルダの仮に『A』と言うフォルダに、これまたUSBメモリー内に作った『B』の宣伝データを移動させた。
一瞬、画面がジジッとノイズが走った気がした。
「? 移動はもう終わった? 早いな?」
画面に移動を表すアイコンが出ていない。
結構重いファイルなので↓が出るはずだ。
例え軽いファイルでも。
それが出なかった。
「あれ? ファイルどこ行った? ん? USBメモリーが妙にスッキリしてる?」
雑多なファイル、もう必要ないデータもそのままだったのだが、それらが見当たらない。
「あれっ!? フォルダがただのファイルに……?」
いくつかのフォルダアイコンが、真っ白のファイルとして表示されている。
当然クリックしてもフォルダとして開かないし、大量のデータが、たった『4KB』なのもおかしい。
というか!
超貴重なデータフォルダがファイルに!?
調べた結果、データクラッシュという現象になったらしい。
そんな馬鹿な!?
この世にココにしか無いデータや、貴重なデータ、一生懸命作ったデータの一部が消えた!?
ついでに販促ポスターも消えた!?
なんで――
こんな時に――
こんな事が――
ぐにゃぁ――
単行本発売という記念日に、俺は大切な財産ともいえるデータを失った。
約一万円の復旧ソフトを購入し、回復を試みるも、復旧したのは不要なデータや捨てたデータばかりで、肝心のフォルダは復活しなかった。
俺はパソコンサポート業者に駆け込んだ。
「復旧には15万かかりますね。あと完全復旧も保証はできません」
払えるか!
いや、払えるけど、そんなギャンブルに15万は無理!
なお、その店員は『USBメモリーはあまり信用できないです』とも言っていた。
本当なのかはわからない。
だが俺は外付けSSDを買った。
16000円。
役に立たなかった復旧ソフト合わせ26000円。
おぉい!?
単行本が売れて26000円稼ぐのに、何冊売れれば良いのか知っているのかッ!?
同じ小説家の皆さんでUSBメモリーで記録を運用している人は、バックアップを取っておこう。
本当に。
幸い私もバックアップはあったが、それでもバックアップ忘れのデータは当然失われた。
まさに努力の結晶だったデータが一瞬で死んだ。
心がむしり取られた感覚だ。
本が発売された幸運と、それに関連するデータが永久に消えた不幸。
幸不幸は表裏一体とはよく言ったもの、と言うのはよーく知っている。
私はそう言う星の下に生まれている。
幸運があった時は、警戒して生きている。
だが、人生最大級の幸運の前には警戒も役に立たない所か、不意打ちにも程があるタイミングで襲ってくる。
せめてこの体験をネタにして短編小説として供養し、同じ被害者が出ない事を祈るのみである――




