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このパンデミックな世界に祝福を!  作者: ウォッチ
1章
6/11

救助

今回は短めです

「……上城さん、外から何か聞こえませんか?」


 朝方、俺が空腹を覚えながら廊下でウトウトしていると教室から出てきた風間さんがそう言った。


「……確かに聞こえるね」


 俺は風間さんに同意して外から聞こえてくるその決して小さくない不可思議な音に耳をすました。

 どこかで聞いたことがある何かが回るような音――。


「この音は……ヘリ……?」


 それはこの校舎に逃げ込んでから一週間が経った時の出来事だった。



 ◇



 俺達はすぐさま屋上へと上がり雲ひとつない空を見上げた。


「上城さん! あそこ! あの黒いの! もしかしたらそうじゃないですか!?」


 風間さんが何かを見つけ指をさす。

 見れば何か黒い影がポツンと空に浮かんでおり、こちらに向かってどんどん近付いてきている。

 そして校舎の近くまで来たそれはどこからどう見ても俺が知っているヘリコプターそのものだった。


「間違いない、あれはヘリコプターだ! しかもあの迷彩模様はおそらく自衛隊のヘリ……俺達を救助にきてくれたんだ!」


 俺はあまりの嬉しさに思わず叫ぶ。

 前に屋上に書いたHELPの文字が功を奏したのかは分からない。

 ただこうしてヘリコプターがやってきた事は事実なのだ。

 これを喜ばずにどうしろというのだろう。


 実はここに立て籠ってから一週間、すでに持ち込んだ食糧は尽きかけており明日にでも外に探しにいかなければいけない状況であった。(風間さんには俺のぶんの食糧をあたかも風間さんのぶんのように配っており彼女はまだその事実を知らないが……。)


 だから本当に助かったと思った。

 もし食糧を探しに出ると言ったら彼女は間違いなく俺に着いてきただろう。

 そしてそうなった場合、このバット一本で彼女を守りきれる自信が俺にはない。


「……上城さん。私達助かるんですよね?」


 ふいに空を見上げていた風間さんが呟く。

 見れば風間さんの瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。

 ずっと死と隣り合わせの日々だったから緊張の糸が切れて思わず泣いてしまったのだろう。

 俺はそのまま何も見なかったふりをして同じように空を見あげると穏やかな声でこう答えた。


「ああ……俺達は助かったんだ」


 ◇


「さぁ早く乗って!」


 屋上に着陸したヘリの扉が開き、中に乗っていた自衛隊員がそう言った。


「すぐに行きます!」


 返事をして俺達はヘリのほうに歩きだしたが、ふいに風間さんが「あっ!」という声を出してヘリとは反対方向に駆け出した。


「風間さん!?」

「教室に置いてきた荷物を取ってきます! 上城さんは先に乗っててください!」


 呼び止めるも彼女はそう言って振り返らずに屋上の扉へと走っていく。

 そして俺がそれに対して何か言う頃にはすでに彼女は扉のむこうに消えていた。


「何をしてるんです! 早く乗ってください!」


 それを見ていた隊員が俺に叫ぶ。

 彼も俺達を助けるために必死なのだろう。


「は、はい!」


 返事をしながら俺は風間さんが消えていった扉のほうを見る。

 風間さんは先にヘリに乗ってろと言ってたけど……。

 でも、それでもし彼女に何かあったら――。


「ちょっと君! どこへ行くんだ!」

「すみません! 15分して戻らなかったら置いていって構いません!」


 俺は後ろから制止する声にそう叫ぶと屋上の扉まで全速力で走った。

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