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このパンデミックな世界に祝福を!  作者: ウォッチ
1章
2/11

やっぱり武器にするならバットでしょ

 とりあえず俺が最初に向かうのは体育館だ。

 あそこの倉庫には武器になりそうなものがある気がする。

 主にバット。

 授業で使うならば間違いなくあるはずだ。

 使いやすそうだしね。

 俺は広い校舎内を周囲に気を配りながらゆっくり進んでいく。

 体育館と校舎を繋ぐ中庭の廊下をあるいていくと目的地である体育館にたどり着いた。


「着いた」


 鍵がかかっていることも考えたが体育館に鍵はかかっていなかった。

 おそらく部活の途中でパンデミックになり、そのまま逃げたのだと思われる。

 その証拠にあちらこちらにラケットやバスケットボールが散乱していた。

 体育館に入ると、なんだか自分が学生に戻ったような感覚になる。


「高校卒業してから3年かぁ……俺ももう大人になったんだよな……」


 そんな感慨に浸りながら体育館を歩いているとお目当ての体育倉庫を見つける。

 扉は両開き式であり外から手動で開けたり閉めたりするタイプのものらしく鍵は必要なかった。

 俺はまだ新しいのかサビの見当たらない扉をゆっくりと開ける。

 中には跳び箱やマット、それに少女など体育の授業で使うであろうものが収納されていた。

 ……ん? ちょっと待て、少女?

 俺はもう一度倉庫を確認する。

 うん、間違いない。

 何回確認してもジャージの少女がマットの上に仰向けに倒れているぞ。

 でもなんで?

 ……もしかしてここに閉じこめておいたゾンビとか?


「あなた誰?」

「っ!?」


 俺がそんな事を考えていると突然その少女に声をかけられた。

 少女はこちらを見ていて現在進行形でばっちり目が合っている。


「お疲れ様です。失礼しました」


 なのでとりあえず俺は扉を閉めた。

 そして再び考えはじめる。

 どうしよう、目あっちゃったんだけど。

 ……ていうか普通に喋ったな。

 ということは人間?

 いや、でも普通の人間ならなんで誰もいない体育倉庫なんかに閉じ込められていたんだ?


「あの、まだそこにいたりしますか?」

「っ!?」


 するとまたしてもそんな声をかけられる。


「う、うん。いるよ」


 俺はどもりながら答えた。

 大人を何度もビビらせるんじゃないよ全く。


「良ければここから出してもらってもいいですか? 出れなくて困っていたので……」

「あ、あぁ。分かった……」


 そしてそのまま開けようとして俺は手を止める。

 本当に彼女をここから出してしまってもいいのか?

 何か理由があってここに閉じ込められていたのではないのか?

 開けた瞬間襲いかかってきたらどうする?

 いろんな不安が頭に浮かぶ。


「……悩んでも仕方ないか……」


 だが、結局俺は扉を開けることにした。

 だってなんか顔見られちゃったし、このまま逃げたら後味悪いじゃん。


「ありがとうございます」


 倉庫から出た少女は特に襲ってくることもなく、俺に頭を下げた。

 よく見ると凄く綺麗な顔をしている。

 なんか日本人だけど日本人離れしているような、そんな感じ。


「い、いや。別に大丈夫だけど……それよりもどうしてこんなところに? 自分で入った訳じゃないんでしょう? 鍵閉まってたし……」

「あなたに関係あるんですか?」


 すると少女は少し表情を歪ませてそう返答した。


「……」


 俺は固まった。


 え、何それ?

 触れちゃいけない話題だった?

 ヤバイ……ちょー気まずいんですけど……。

 と、とりあえず話題を変えよう。

 えっと……そうだ! 自己紹介しよう! それがいい!

 俺は取り繕うように咳払いすると自己紹介を始めた。


「な、名前まだだったね。俺は上城 蓮。君は?」

「風間 愛です。どうぞよろしく、上城さん」


 ◇


「あれ? ないなぁ……」

「何を探してるんですか?」


 俺が倉庫を漁っていると風間さんが尋ねてくる。


「バットだよバット、武器になるからね」

「武器……ですか?」

「うん、アイツらと戦う時に必要になるだろう?」


 俺はバットをスイングする真似をしながら答えた。


「あ」


 すると風間さんが声を出す。


「ん? バットの場所でも思い出した?」

「はい、多分ですけど……」


 マジか、風間さん有能すぎかよ。

 だけどなんか歯切れが悪いな。


「何か問題でもあるの?」

「はい……実は……」

「うん」

「場所がグラウンドなんです……」

「……」


 マジかよ。

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