これどう考えてもゾンビじゃん
突如としてパンデミックが起き、死体が蘇ったとニュースで見た俺こと上城 蓮の感想は
「これどう考えてもゾンビじゃん」
だった。
そしてそれを見てからの行動は早い。
俺はすぐに家にある必要そうな物をまとめて(ほとんどないが……)家を出た。
もちろん目的地はショッピングセンターである。
ゾンビが出たらショッピングセンターということわざもあるからだ。(まったくの嘘だが)
あそこには大量の物資や食料品がある。
救援が来るまでそこで籠城する完璧な作戦だった―――――――――――――――――……のだが俺はパンデミックを甘く見ていた。
俺がすぐに考えついたことを他のやつらが考えつかないはずがない。
俺がたどり着いた時、ショッピングセンターはすでに【ヒャッハーの巣窟】と化していた。
どう考えても世紀末なヤツらが店を陣どっている。
これではゾンビではなく先にあいつらに殺されてしまう。
やっぱり人間が一番恐いね、というクソみたいなテンプレ展開になるのだけはごめんだ。
俺はきびすを返して立ち去った。
「どうする!? どうすんのよ俺!?」
昔見たCMの台詞を呟きながら俺は頭を抱えた。
どこか避難出来る場所はないものか……。
ガシャン!!!
その時、凄い音が聞こえたのでそちらを見ると電柱に車がぶつかっていた。
なんだなんだ? と俺が見ていたところ、その車の後ろから結構な人数の人影がこちらに向かってくる。
濁りきった瞳、泣く子も黙る凶悪な表情。血まみれの体、どう考えてもゾンビだった。
しかもヤツら結構なスピードで走っている。
ロメロゾンビじゃない、最近のゾンビじゃん。
いや、そんな事を考えている場合ではない。
すぐに逃げないとこのままでは食い殺されてしまう。
「やめてぇっ! たすげっギャアアッ!! 痛い! 痛い!」
ゾンビのほとんどが電柱にぶつかった車のほうに向かい運転手を襲いはじめたが何人かこちらに向かって全力疾走してくる。
俺は心の中で運転手に謝りながら逃げ出した。
しばらく逃げた後、狭い路地に入りヤツらが通りすぎるのを見送ってから呼吸を整えるため座り込む。
「まさか走れるタイプだったとはな……これはだいぶキツイぞ……」
走るゾンビほど厄介なモノはない。
これは早々にどこかに避難しないと本当にお陀仏になってしまう……。
俺は路地から出て周りを見渡す。
「あっ」
そして俺はとうとう見つけた。
「学校」というお約束の避難場所を。
◇
――ゾンビモノで女の子達が学校の中で暮らす物語。
前になんかの漫画かアニメで見た気がする。
まぁあれは作り話で俺は現実の世界にいるわけだが……。
ゾンビなんて所詮創作だと思っていたのに。
俺は校門を乗り越え、校内へと侵入していく。
中には特に人やゾンビの姿は見えない。
校舎内に入ろうとしたが生憎今日は土曜日なので校舎の扉は全て施錠されていた。
窓を割って入る事も考えたが、大きな音でゾンビを呼び寄せてしまうことを考え断念する。
そうして校舎の周りをグルグルと見回していると、ついに二階の窓が開けっ放しになっているのを見つけた。
不用心だが今はそれに感謝しておこう。
俺は校舎の壁に備えつけられた雨どいのパイプによじ登り二階部分までいくとそのまま開いている窓まで壁を伝っていく。
そして俺は見事校舎の中に入ることに成功した。
泥棒みたいで気が引けたが今は緊急事態だ。
俺は背負っていたバッグを下ろすと壁にもたれかかって溜め息をついた。
そういえばここは何の部屋なのだろうか?
額の汗を拭いながら周りを見渡す。
前と後ろには黒板があり室内には机が何個も並んでいて、時間割表があることからどうやら普通の学級教室のようだ。
「とりあえずしばらくはここで生きていけるな……」
バッグから水筒を取り出し一口飲む。
冷たい麦茶が喉を通りすぎる。
もっと飲みたいが大事な水分であるためがぶ飲みは出来なかった。
「よし、まずは校舎内の安全を確かめるのと武器の調達だ」
時刻は昼前、早速俺は校舎内を探検することにした。




