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森の神

 ──暗い森の中、白い腕の主はそれらを観察していた。


 姿を見せながら、付かず離れず存在感を示しながら……白い腕の主はそれが脅威たり得るか否かを押しはかっていた。



「────────」


 野営をする姿を見つめながら、白い腕の主は耳をそば立てる。


 どの様な策を練り、己に挑むのか。


 どの様な企てを持って己の脅威になるのか。


 森に問いかけ、森の運ぶ情報をつぶさに分析をする。


 森は彼に全てを教えてくれた。


 姿も、匂いも、会話の内容さえも。


「……………」


 やがて森は言う。


 恐れることはないと。


 かの者達は、己の力を過信する愚者であると。


 正体不明な敵の目の前で火を焚き、あまつさえ大声で話し、魔法の陣を敷くのみで無防備に食事を取る、そんな愚か者であると。


「──」


 その報告に、白い腕の主は侵入者に興味を失う。


 あれは取るにたらない、ただの傲慢な冒険者だ。



 そう、判断をした……いや、自分の方が強いと慢心した瞬間。


 白き腕の主人は罠にかかる。


「!!!!」


 前触れもなく煌々と光る炎は姿を消した。


 火を消した素振りも何かを示し合わせたわけでもなく、森を照らしていた炎は姿を消し暗闇が侵入者達の姿を隠す。


 声の出ない体で白き腕の主人は油断を呪った。


 彼らは他愛のない会話をするフリをして淡々と逃げる算段をつけていたのだ。


 炎を見つめ続けていたせいで白き腕の主人は闇に目が眩んでいる。


 慌てて森にかの者達の様子を問うて見るものの。


「!!!!!!!!!!」


 ……白き腕の主人に対し、森は裏切りを働いた。


 足元より迫る木の根、生い茂る木々から伸びる蔦が蛇の様に這い回り、その白い腕を絡めとる。


 気がつけば森の支配権が失われており、力の大半が使用できない状態になってしまっている。


 ──違う。


 木の枝を引きちぎりながら怪物は認識を改める。


 闇に乗じて逃げたのではない。


 かの者達は自らを狩りにきたのだ。


 矮小な人間が、これ程までに軽率に神に挑むと言うのである。


 ────面白い。


 俄然、白き腕の主人は侵入者に興味を抱く。


 初めて感じる獲物となった感覚に、言いようのない高揚感に支配されたそんな瞬間。


「よぅ」


 怪物の背後から声が響いた。


 □


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