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考察

「まぁ良い、それで? さっきのエルナムの反応、お前はどう思う?」


「不自然ですね。長老の手前ああ言いましたが、ストレスの捌け口に私を選ぶのは不自然かと。特に、余所者であるアイアスを差し置いて、と言うのが私は気になりました」


 なるほどな、と俺は呟いて思案する。


 自分の腕が木になるなんて危篤な体験で、精神が摩耗するというのは確かに無理からぬ話だろう。


 恐怖で家に篭り、誰かのせいにして攻撃的になるというのも頷ける。


 だが、エルナムは俺に対しては驚くほど無反応だった。



「だな……真っ当な精神状態じゃなきゃ、切り掛かるのはまず俺のはずだ。見知らぬ人間が家に押し入ってるんだ、余所者嫌いのエルフじゃなくたって切り掛かるだろう……怖くて動けなかった、と言う可能性もあるが」


「悪人顔ですしね」


「ほっとけ」


「ふふ、冗談ですよ。ただ、仮にアイアスが怖かったとしても不可解なのは変わりません。何故なら、貴方に押さえられてる最中でも、彼は執拗に私を狙っていた。あれは明確に、私だけに殺意を向けた行動です。場当たり的な衝動ではない、彼はずっと私に殺意を抱いていたことになります」


「ふむ、となると」


「ええ、エルナムは正気を失ってなどいなかった」


 話をまとめるとそうなるが、俺は少し首を傾げる。


「エルナムの話は全部本当だと?」


「勘違いは多少あるかもしれません。ですが、彼は私に助けられたことを理解した上で、私をこの騒動の元凶だと言ったのでしょうね」


「身に覚えは?」


「当然ありません」


 俺の問いにドロシーは肩をすくめる。


「何が何だかさっぱりだな」


「呪いの元凶が私を狙わせるために何かをしたとか?」


 確かに、呪いの調査をしているドロシーは元凶にとっては脅威だろう。


 その可能性は否定できないが、果たしてそんなことができる物なのか?


 ドロシーを見る村人たちの目は信仰対象に近しいものがあった。


 実際に助けられたエルナムも、恐らくは同じようにドロシーに感謝していたはずだ。


 そんな人間を、呪いをかけた元凶がこうも短時間で操れる物なのか?


「はぁ、いくら何でも情報が少なすぎるな……エルナムを問いただしたい所だが」


「あの疲労度では、目を覚ますのは明日になるでしょうね。どうします、明日まで待ちますか?」


「こんな得体の知れない状況でゆっくり明日を待つ気にはなれないな。それに、仮にこの村に元凶がいるなら、それこそ裏で糸を引いてるやつの思う壺だろう」


「別に、そこで返り討ちというのも私としては手っ取り早くて良いのですが」


「操られた村人と元凶をどう判断するつもりだ?」


「あー……」


 確かに、とドロシーは得心がいったような表情を見せて押し黙る。


 そもそも、人間を操れる魔物だったとしたら、ノコノコと元凶本人が俺たちの目の前に現れるとも考えにくい。


「……全く何が何だかわからんな。情報が少なすぎる」


 ため息を漏らして俺は頭をかき、黒の森を見る。


「やはり森を調べるしか手はなさそうですね」


「しかし、闇雲に探し回るのもなぁ」


 黒の森と一括りにしても、山一つ分の広さがあるのだ。


 手がかりも無しにエルナムの仕事場を探しに行けば、彷徨悪戯に時間を浪費するだけになってしまう。ここは道案内が欲しいところだが。


「さてどうしたものか」


「お?」


 俺の呟きとほぼ同時に、不意にドロシーはぴょこんと耳を跳ねさせると、散らかった部屋の中をガサガサと漁り始める。


「どうしたドロシー?」


「ふふふ、どうやら道案内が見つかった様ですよ、アイアス」


「なに?」


 そう言ってドロシーは部屋の奥にある戸棚を魔法で動かす。


 と。


「わん!」


 戸棚の裏から一匹の黒毛の犬が現れた。


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