98話 その言葉の真意とは
「ここだな」
寺都と門番のいる元研究所本部改め少女館へ到着した優也とひなこは、寺都が見つけ出した結野こころの居場所を聞いた。
そうしてやって来たのは、とある雑居ビル。その正面入り口に立つは、優也、ひなこ、遥の三名だ。
「何の変哲もない建物のように見えますね」
「ほんとにここなの?」
「一応教えてもらった地図ではそうなってるぜ。このビルに、結野こころの反応があったって」
一同揃って、その情報を疑ってしまうのも無理はない。
寺都から聞いた建物は、大通りに面した、大勢の人が行き交う場所に建っているのだから。
そんな場所に、本当に結野こころはいるのだろうか。
「まあ、ここに立ってるのもなんだし、入ってみるか」
「そうだね」
「そうですね」
優也を先頭に、ビルの自動ドアを抜ける。
「なんだ、ここは……」
そこに広がっていたのはビルのエントランス、ではなく、何かもよくわからないような機械が置かれた、大きさは比にならないが、第六研究室のような部屋。
「わたしたち、ビルに入ったんだよね……?」
「ああ。そのつもりだったんだが……」
そのフロアから他の部屋に入るためのドアはあるが、上に上がるような階段やエレベーターはない。
「どうなってんだ?」
「おそらく、ここは結界の中なのでしょう。研究所に張られていた二重結界のような気配をかすかに感じます」
「岡谷が張ってるってことか?」
「ここが彼の隠れ家であるのならば、そうなのでしょう」
優也は視線を前に向け、辺りを見渡す。
入り口のドア。それ以外に、三つの壁それぞれに一つずつドアがある。
「どの部屋に結野こころはいるんだ?」
「わかりません。ですが、あのドアのどれかが正解の部屋へと繋がるのだと思います」
「だったら、一人一つずつ入らない? ちょうど三つあるんだし」
「ここは岡谷の研究施設かもしれないんだぞ。危険すぎる」
「私も反対です」
「でも一つずつ探して行くのは時間がかかるよ?」
「それもそうだが……」
そうしている間に岡谷に気づかれてしまい、最悪のパターン、結野こころを連れて逃げられてしまうかもしれない。
「……ここはひなこちゃんの提案に乗りましょう」
「そうだな」
優也はポケットからスマホを取り出しつつ、
「けど、何かあった時のために連絡を取りあえるようにしとこう」
「賛成! これで遥ちゃんの連絡先もゲットできるよ!」
「なんだか身の危険を感じるので、遠慮してもいいですか?」
「こいつから何かされた時も、すぐに連絡してこいよ」
「優也くんそれどういう意味かな⁉︎」
「まんまの意味だ。遥になんもすんなよ」
「なにもしないよ⁉︎ というよりなにかってなに?」
「なんでも、だ。金輪際、遥に近寄らない方が安全かもな」
「それはひどいよ⁉︎」
そんな言い争いを横にして、遥は微笑をこぼした。
「本当に、お二人とも仲が良いですね」
「あれ、優也くん、遥ちゃんが嫉妬してるよ」
「なわけねぇだろ。第一、誰に嫉妬だよ」
「それは優也くんに決まってるよ」
「それこそ何言ってんだ。なあ、遥。お前からも何か言ってやれよ」
「いえ、優也さん。ひなこちゃんの言ってることも、あながち間違いではないかもしれませんよ?」
「え? それはどういう……」
優也の言葉を遮るように、遥は柏手を打つ。
「——さっ。手分けして結野こころさんを探しましょう。私はあの扉、ひなこちゃんはあそこの扉、優也さんはあっちの扉をお願いします」
「はーい!」
「もちろん結野こころさんを見つけても、他に何かあれば携帯に連絡すること。いいですね?」
「はい先生!」
「ひなこちゃん、いい返事です。優也さんは? いいですか?」
「……ん? あ、ああ。分かった」
「それでは捜索開始!」
「おー!」
各々が担当するドアへと向かい始める二人。
未だその場に立ち尽くす優也は、先の遥の言葉の意味に、一人悩まされていた。




