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美少女はじめました  作者: 針山田
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88話 『美少女』と死


「ここにある書類に目を通してるってことは、寺都、お前はどこまで知ってるんだ?」

「どこまで、とは?」

「だから、その……」


 もしも彼女が知らなければ、優也の口から話すわけにはいかない。


「ここが研究所の本部であったことを知ってる、と言えば満足?」

「それじゃ『美少女』のことも?」

「当然」


 その時、ガチャリとドアを開けて入ってくる人物が一人。


「やっぱりここにいたのね」


 それは新鋭隊第一部隊隊長のカメリア・フルウだった。ここの調査隊のリーダーである。


「おう、カメリア。どうしてここに?」

「不審な影の正体を暴きに来たのよ」

「俺らに任せろって言ったろ」

「聞いたけど……」


 居ても立っても居られなかった、と。


「けど、もう終わったみたいね」

「ああ。なんとか見つけ出した」

「そいつが寺都芽久実?」

「そうだ。それでちょうど今——」


 彼女と協力関係になったことを伝えようとした瞬間、カメリアが寺都の前に立った。そして、拳を固く握る。


「待てカメリア!」


 優也は、慌ててカメリアの腕を掴み、離れた位置へと連れて行く。


「ちょっと、なにすんのよ!」

「お前こそ何しようとしてんだ!」

「なにって、始末しないと」


 やっぱりそのつもりだったか。


「始末って。危害を加えるかどうかわかんないだろ」

「ここにいる時点で不審者よ。なにをしでかすかわかったもんじゃないわ」

「あいつがここにいるのは、岡谷を探してるからだ」

「岡谷を? それじゃ、彼女もここの所員なの?」

「いや違う。ただの岡谷の昔の知り合いだ」

「ただのってことないでしょ。ここの場所を知ってる時点で普通の人間じゃないわ」

「岡谷から色々と聞いてたんだろ。俺も詳しくは知らん」

「なに。えらくアンタ、あいつの肩を持つのね」

「肩を持つとかじゃなくてな……」


 カメリアから放たれるこのオーラ。本当に話していいものかどうか悩む。が、明かさないわけにもいかないだろう。カメリアも協力者の一人。一応、寺都とは仲間になるのだから。


「俺ら、寺都に協力することにしたんだ」

「……はあ? 協力? なんの」


 カメリアは、心底言っている意味が分からないという様子。


「岡谷を探し出すのに、だ」

「アンタねぇ……!」


 その言葉を聞いて、早くも、カメリアは沸点に到達しかけている。


「自分が置かれてる立場理解してるの? 本部を壊滅させたといえど、研究所から狙われていることに変わりはないのよ。しかも今は研究所の動向も不明なんだし。わざわざ自分から関わりに行くことないでしょ。それともなに。岡谷を見つけることがあたしたちの目的に関係あるの?」

「それはないが……」

「だったらなんのための協力なのよ」

「あいつには、ここの居住区を利用して、人間に戻した『美少女』をかくまってもらおうと思ってる」

「それが岡谷を探す交換条件?」

「ああ」

「でもそれ、岡谷を見つけたらどうなるの? その後も、寺都はあたしたちに協力してくれるの?」

「いいや。そこは寺都に任せてるが、本人は手を切るって言ってる」

「なにそれ。どうせアンタのことだから、岡谷を見つけるのを最優先にするとか言ってるんでしょ?」

「確かに言ったけど。あいつは一般人だ。本人の意思を無視して協力させれないだろ。手を切るってんなら、その後は誰か他を探すしかないだろ」

「見つかると?」

「見つけるしかないんだよ」

「はあ……、呆れた」


 大層大きなため息を吐き出すカメリア。その言葉は、彼女の本心そのものであったろう。


「どこまでお人好しなのよ、アンタ」

「でもそれが優也くんのいいところだよ?」


 ひなこは、自慢げに横から顔をのぞかせる。


「ね、カメリアちゃん?」

「うっさいわね、ひよこ」

「ひよこじゃなくてひなこだよ!」


 反論するひなこを横目に、カメリアは優也に向き直る。


「わかったわ。寺都を協力者とすることに、これ以上異論はない」

「それじゃあ——」

「あいつに協力することを認める」

「助かるぜ」

「それで。岡谷を探すって具体的にはどうするつもりなの?」

「とりあえずは岡谷のことを寺都から聞き出そうと思ってる。あいつが、岡谷を探す理由も知らんしな」


 なんとかカメリアが納得してくれたところで、今まで一人きりにしたままだった寺都のもとへと優也たちは戻る。

 正直もうどこかへ行ってしまったのではないかとひそかに心配していたが、熱心なのか、寺都はテーブルにあった書類に目を通していた。


「さっきも聞いたが、寺都、お前は、『美少女レンタル』のことについて、どこまで知ってるんだ?」

「貴方達が知らないようなことまで私は知ってる」

「知らないこと?」

「例えば、『美少女』は歳をとらない」

「どういうことだ?」

「そのままの意味。容姿はもちろん、体の細胞一つ一つも老いることはない。『美少女』になったその日のまま、死んでいく運命」

「待てよ、歳をとらないってんなら、寿命で死ぬことはないってことなんじゃ」

「それは違う。『美少女』が歳をとらないのは、『結晶』が埋め込まれ、普通の人間とは違う仕組みで生きてるから。けど、『美少女』は『結晶』がある限り自身の体内にある『生力』を使って生きてる。その為、身体に与える影響も大きい。契約を交えていない『美少女』なら、十数年ほどで死んでいく」

「なんだ、そりゃ……」


 驚きの事実に優也は言葉を失った。他の二人、ひなことカメリアも同様の表情を浮かべているあたり、このことは『美少女』の間でも知られていないことなのだろう。

 全員が驚きに言葉を出せないでいると、代わりに寺都が口を開いた。


「貴方達、私の目的について知りたいのでしょ。その件については明日話すのでもいい?」

「明日?」

「私、これから行かなきゃいけないところがあるから」

「行かなきゃだめなところ?」

「待ち合わせはこの建物で。時間は貴方たちに任せる。私は朝早くから来てると思うし」


 それだけ言い残すと、寺都は研究室から出て行ってしまった。


「あと追う?」

「いや、別にいいだろ。明日話してくれるって言ってるんだし」

「このまま逃げたりしないでしょうね、あいつ」

「だとすりゃ、俺らも岡谷を探さないだけだ」


 取引がそもそも無かったことになるだけの話。寺都の目的は不明のままになってしまうが、それならばそれで仕方がない。


「なんにせよ、明日来てみるか」

「あたしも来るわ」

「カメリアもか?」

「もっと言えばあの子達も連れてくる」


 それは、他の第一部隊メンバーの四名のことだろう。


「本命の研究所はどうする」

「一日くらい大丈夫よ」

「お前にしちゃ珍しい。えらく楽観的だな」

「優也くん、わかってあげて。カメリアちゃんも心配なんだよ?」

「なっ! ひなこ! 余計なこと言わなくていいの!」

「心配なことを否定しないんだね?」

「この————ッ!」


 こう見えてもひなこも『美少女』の一人。そんなに心配することはないと思うんだが。

 まあ冷たく当たっているように見えて、カメリアもひなこのことを可愛がっている様だし。気になるのだろう。


(姫も誘えば、協力者フルメンバーになるんだけどな)


 彼女のことだ。カメリアがいると知れば、まず間違いなく断るだろう。


(カメリアもそうだが、あいつの気を悪くするのもあれだしな)


 そんなことを考えながら、優也は二人の姉妹ゲンカのようなものを見ていた。

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