85話 彼女の夢、みんなの夢
白雪に突き離される形でわかれた優也は、ひなこと二手に分かれた場所、つまり幼女に襲われた地点へと戻ってきた。
「おう、ひなこ。戻ってたのか」
「あ、優也くん……」
珍しくテンションの低いひなこ。
「どした?」
「あの子、見失っちゃった」
「…………」
あんなしょうもないこと言ってるからだろ。てか、追いかけっこ、得意じゃなかったのかよ。
……なんて、彼女を責められるわけもない。優也だって、寺都芽久実を捕まえられなかったのだから。
それに、こんな落ち込んでいる彼女に、これ以上畳み掛けるなんてことできるわけもない。
「ごめんね」
「そんな気にすんな。俺だって寺都を逃しちまったんだ。どっちもどっちだろ?」
「……ふふっ、やっぱり優也くんは優しいね」
「そんなことはねぇよ」
むしろ、ここで彼女を責めれるやつの気が知れない。
「でも、これからどうしよう?」
「俺から一つ報告があってな」
「ん? なに?」
「寺都を追ってる最中で、姫と会ったんだ」
「白雪ちゃん?」
「ああ。そんであいつに寺都の調査を頼んだ。だから、とりあえずは、あいつからの連絡を待つとしよう」
「? どゆこと? 白雪ちゃん、寺都さんのこと知ってるの?」
「なんでも、姫が通ってる学園の高等部に、寺都に似たやつがいるらしくてな」
「白雪ちゃん、学校行ってるの⁉︎」
「みたいだな」
しかし、今も『美少女』のままである白雪が、大勢の集まる学校なんかに通っていて大丈夫なのだろうか。
「ま、念のために今回のことはカメリアに報告しておくか」
「そうだね。そのほうがいいと思う」
なんとなく。本当になんとなく、ひなこの元気がなかった気がした。
そしてその理由に、優也は心当たりがあった。
「ひなこ。学校行きたいか?」
「……え? う、うん。それはもちろんだよ」
「俺が通えるようにしてやるからな。それまで我慢してくれ」
「それは違うよ、優也くん」
「ん?」
「優也くんとわたし、それからみんなで頑張るんだよ? わたしたちの夢、実現させようね?」
「……ああ。もちろんだ」
必ず叶えてみせる、彼女のために。




