84話 白雪が協力したい人
「それで? なんで急にこんなとこから飛び出してきたん?」
「人を追ってたんだ」
「人?」
「ああ。少し訳あってな」
「なに? 聞かせて」
彼女も優也たちに手を貸してくれると約束した協力者の一人。事情を知っていて損はないだろう。
「元研究所本部の建物を、カメリアが調べてくれてるんだ。それで、少し前に建物内でカメリアが不審な影を見たって言ってな」
「なにそれ。ホンマなん?」
「少しはカメリアのことを信じてやれよ。それに、これは本当の話。カメリアからそのことを聞いて、俺とひなこで本部を調査したんだ。その時に一人の少女と出会った」
「それが、今追っかけてた言うた人?」
「ああ。寺都芽久実とかいうやつでな」
「寺都芽久実?」
思いがけないワードを聞いたように眉を寄せる白雪。
「知ってるのか?」
「う、うん。うちの学園の高等部に、そんな名前の人おった気がする。なんでも科学者みたいに白衣着とって、学校来てへんて有名なんよ」
「そいつ、ジト目だったか?」
「会うたことないから分からんわ。でも、目付きは悪いって聞いたことある」
白衣を着た、目付きの悪い少女。
あの謎の少女、寺都芽久実と特徴が類似する。
「姫、ちょっと頼みたいことがあるんだが」
「そいつのこと調べて言うんやろ?」
「よく分かってるな。その通りだ」
「うちも協力するって決めたから。出来る限りのことはやる」
「ああ、頼む」
そうと決まれば、彼女と連絡先を交換しておく必要がある。
そう考えて、優也はポケットから携帯を取り出した。
「ケータイ?」
「連絡、取れるようにしといたほうがいいだろ?」
「えっ——。それって……」
「?」
突然戸惑い出す白雪。その理由は優也には理解できなかったが、そのまま気にせず会話を続けた。
「このアプリ、姫も使ってるか?」
「う、うん……。使うてるよ」
「なら早い。俺がフレンド申請するから、それを許可してくれよ」
「な、なあ。ほんまにするん?」
「当たり前だろ。じゃなきゃ連絡取れねぇじゃねぇか」
「せやけど……」
「フレンドになったら、グループに誘うからそこに入ってくれ」
「グループ? なんの?」
「俺らの仲間の連絡部屋だ。今だと、俺、ひなこ、カメリアと他の第一部隊のやつらも参加してる。何かあったらここにメッセージすりゃ、みんなに連絡できるから」
「……あっそ」
途端、興味の失せたような声色で、白雪は短く返事をする。
「どうした急に?」
「なんでも」
「?」
なんでもないことはない。明らかに態度が変わっている気がするんだが。
「はようフレンド申請して」
「お、おう」
そうして互いにフレンドの許可が下り、白雪を優也たちのグループへと招待した。
「何かわかったり、あったら、ここに書いてくれ」
「うちは書かへんよ、ここには」
「へ?」
「優也に直接連絡する。それでもええんやろ?」
「ま、まあいいけど」
それならば、グループで話して、出来るだけ情報を共有できる方がいいと思う気がする。
「……うちは優也に協力したいねん」
「なんか言ったか?」
「なっ!なんもない!」
とっさに白雪は背後を向く。その表情は、優也からはうかがえない。
「その寺都とかいう人か分からんけど、うちが調べとくから。優也は早よ行き」
「行くってどこに?」
「し、知らん! それは自分で考え!」
自分で考えるて……。
まあ、いい。寺都のことは白雪に任せるならば、優也はひなこを探すことにしよう。彼女にも、あの突然襲いかかってきた幼女を追ってもらっている。今ごろ捕まえて、優也のことを探しているかもしれない。
「そんじゃ頼んだぞ」
白雪からの返事はない。
なにか彼女を怒らせるようなことを言っただろうか……。
ただそれだけが気掛かりであった。




