表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女はじめました  作者: 針山田
81/154

81話 からかい好きなひなこさん


「カメリアちゃん、いらっしゃい」


 まるで、あたかも自分の家のように、玄関でカメリアを出迎えるひなこ。


「忙しいのに呼び出して悪いな」

「別に構わないわよ」

「むしろカメリアちゃん的には、来たいもんね?」

「なっ——⁉︎」

「そうなのか?」

「だっ、誰もそんなこと言ってないでしょ⁉︎ べ別にアンタなんかに会いたくなんてないんだから!」

「……わたしは、優也くんに会いに来たなんて言ってないよ?」

「っ——‼︎」


 瞬間、カメリアが爆発する。


「はめたわね、ひなこ」

「? なんのこと?」

「……ひよこ」

「ひよこじゃないよ! ひなこだよ!」


 一体、二人はなんの話をしているのか。

 そんな姉妹喧嘩のような状況より、早く本題に入りたい優也は、カメリアを家へ上がるように促す。


「話は、ひなこの部屋の方がいいよな?」

「……ユウヤの部屋でいい」

「へ?」

「アンタの部屋でいいって言ってんの!」


 ズカズカと階段を上がって行くカメリア。

 なぜ怒られたのだろう。前に部屋を嫌がっていたから、今回は気を利かしただけなのだが。

 そんなカメリアの後を、笑みを浮かべた表情で追うひなこ。彼女も彼女で何を考えているのやら。

 優也が自室に到着した頃には、すでにひなことカメリアがテーブルの周りへと腰を下ろしていた。


「ほら、こんなもんしかねえけど」


 そう言って優也がテーブルの上に出すは、ジュースとお菓子。

 カメリアの機嫌がどうであれ、せっかく頼み事の合間を縫って来てくれたのだ。もてなさないわけにはいかない。

 もちろんひなこの分も用意してある。でなきゃ、騒ぎ出して話どころではなくなるだろう。


「……ありがと」

「優也くんは気がきくねぇ。ね、カメリアちゃん?」

「えっ、ま、まあ……」


 さっきといい、今といい。やたらにひなこがカメリアへ優也の話題を振っているのは気のせいか。

 ……まあ、そんなことはどうだっていい。そんなことのために、わざわざカメリアを呼び出したのではないのだから。


「この間、カメリアが元研究所本部の建物中で不審な影を見たって言ってたろ?」

「ええ、言ったわよ。残念ながら逃げられたけどね。その調査を二人に任せてたのよね」

「ああ。この前、俺らで第六研究室を調べて来たんだ」

「見つけたの⁉︎」


 珍しく、テーブルに身を乗り出してくるカメリア。

 そういえば、この件、そもそもカメリア自身謎を解き明かす気満々だった。当然の反応といえば当然か。


寺都芽久実じとめぐみとかいう少女でな。どうやら研究所で何かを探してるらしい」

「寺都芽久実……。聞いたことない名前ね。どんな人物なの?」

「圧倒的ジト目」

「…………」


 カメリアの目がジトる。


「本気で答える気ある?」

「嘘なんか言ってねえよ。本当にそんな目つきだったんだよ」


 ちょうど今のお前みたいな。


「他には?」

「白衣を着てたな」

「白衣? ということは研究所の所員かしら」

「可能性はあると思う」


 それならばあそこに研究所があることを知っていたとして当然。


「寺都さんも、忘れものかな?」

「どんだけ忘れもんすんだよ。あと、岡谷は忘れ物と決まったわけじゃないからな?」

「忘れ物かは置いておいて。もしもその寺都とかいう人間が研究所関係者あるいはなんらかの形で研究所を知っている人物だとして、今の本部がどういう状態にあるか、ある程度把握しているでしょうし、そこまでのリスクを負ってまで見つけ出したい物はなんなのかって問題よね」

「あるいは、研究所本部が壊滅したことだけ知ってて、俺らが調査してるってのを知らないだけかもよ」

「だとすれば、寺都は後者の、なんかの形で研究所を知った人物、ということになるわね」


 制約の第三番に、『契約満了後も、美少女レンタルのことを、無関係な第三者へ口外しないこと』というのがある。

 きっとその中には、研究所関連のことも含まれているはず。なにせ、『美少女レンタル』を語らずに研究所のことは語れないのだから。

 制約を破りし者は、この世から存在を抹消され、そもそも存在しなかったことにされてしまう。それは単なる脅しとかそういうものではなく、本当に存在を消されてしまうのだ。実際に笹木という少年が、この世界から消えた。身をもって優也が体験したことだ。

 だから、寺都に研究所のことを伝えた人間がいたとして、すでにその人物は存在を消されているはず。つまりは、寺都もそのことを覚えていないことになるのだ。

 しかし現実はそうではなく。ならば考えられるパターンは三つ。

 一つ。寺都芽久実は研究所の所員である。

 二つ。寺都芽久実が『美少女』と契約している。

 三つ。寺都芽久実自身が『美少女』である。

 そしてそのどれもが、否定できるだけの根拠を持たない。


「他には? その寺都とかいう人でなにか知り得なかったの? たとえば、『美少女』かそうでないかとか」

「それは俺も知りたかったんだがな」

「ってことはわからなかったのね」

「ああ。何か聞き出そうとすれば、代わりに俺らのことを話すよう条件出してくるし。立場が立場なだけに、うかつに口に出せないからな」

「それはそうよね。当然の判断だと思うわ」

「…………」

「……な、なによ」

「いや、カメリアから褒められることなんてあるんだなと思ってな」

「う、ううっさいわね! 褒めてなんかないわよ!」


 飛んでくるクッション。それを受け取る優也。

 もはやこのやり取りも慣れたものだ。そして、毎度投げられるクッションの気持ちになってほしいものだ。


「でも、確実じゃないんだが、ひなこが気づいたことがあるんだ」

「なに?」

「寺都さんにね、わたしがおそわれた少し前、ネズミさんが走ってたの。タイミング的に、結界は張られてなかったんじゃないかな、とおもって」

「確かに、結界が張ってたのなら、ネズミはいないはずよね。つまりは、寺都は『美少女』じゃなく、人間ってこと?」

「その可能性がたかいんじゃないかな」

「俺もその線で考えてる」


 ゆえに、今考えているパターンは一つ目と二つ目。

 寺都芽久実は、研究所関係者なのか、はたまた、誰か『美少女』をレンタルしている契約者なのか。


「わかったわ。あとは、あたしに任せなさい」

「待ってくれカメリア。この件、引き続き俺らに調べさせてくれないか?」

「どうして?」

「前にも言ったろ。カメリアや、あいつらには重大な任務を任せてんだ。こんくらいのこと、俺らにやらせてくれよ」

「……わかった。またなにかわかったら、連絡よこしなさい」

「ああ」


 次に彼女に連絡するときには、朗報を伝えられたらいいのだが。


「なにかわからなくても、カメリアちゃんは連絡してほしいんじゃないかな?」

「ひなこ!」

「そうなのか? カメリア」


 てっきり迷惑だと思ってたけど。


「そ、そそ、そそんなわけないっ! ……わけない、わけない……」

「どっちなんだ?」

「うっさい!」


 正直どっちでもいいが、クッションを投げるのはいい加減にしてくれ、と言いたいものである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ