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美少女はじめました  作者: 針山田
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56話 あの後なにが?


「そういえばカメリアちゃん」

「ん? なにかしら、ひなこ」

「わたしたちをおそったとき、じゃまが入ったから帰ったって優也くんから聞いたけど、じゃまってだれだったの?」

「ああ、それ、俺も気になってたんだ」


 研究所から命じられていることを放棄してまで、カメリアは二人の前から姿を消した。

 あの後、何があったというのか。


「[黄昏たそがれ彼方かなた]が現れたのよ」

「黄昏の彼方?」

「研究所と敵対する組織よ」

「『世界美少女化計画』に反対してる組織か?」

「違うわ。そのことを知ってるのは、きっとアンタらぐらいよ。いくら[黄昏の彼方]でも知らない。そうじゃなくて、訳あって研究所と対立してるってだけ。理由は組織によってまちまちだけどね」


 組織によって?


「その言い方だと、敵対組織がいくつかあるように聞こえるが」

「その通りよ。[黄昏の彼方]だけじゃない。研究所が敵としている組織は何個もあるわ。ま、研究所の敵は、アンタたちだけじゃないってこと」

「てっきり、狙われてんのは俺らだけだと思ってたぜ。俺らを捕まえに来る『美少女』が少ないのもそれが理由か?」

「そうよ。いくらアンタたちの捕獲が優先といえど、全戦力をつぎ込むわけにはいかない。そういう点でも、あたしが研究所へ戻れば、もう一度この計画のチャンスをもらえる可能性が高いってわけ」


 カメリアのことを心配しながらも、実際、優也としても、研究所の内部事情が知れるのは非常に助かることだ。


「でも、その[黄昏の彼方]ってのもすごいよな」

「なにが?」

「いや、俺が言うのもなんだが、ただの一般人が『美少女』を扱う団体を相手にするなんて。生半可な覚悟じゃ無理だろ」

「一つ勘違いしてるみたいね」

「勘違い?」

「ええ。[黄昏の彼方]は『美少女』で結成された組織よ。[黄昏の彼方]だけじゃない、大半の敵対組織は『美少女』で構成されているわ」

「そうなのか?」


 でも一つ疑問。


「けど、『美少女』ってのは、研究所に意思を管理されてんだろ? 反発してるってのもおかしくないか?」


 研究所が、彼らを操ってしまえば終わるだけの話。そうだというのに、対立しているというのはどういうことなのか。


「意思操作は何も簡単なことじゃないの。一度に操れる『美少女』には限界があるわ。それに、そういう組織にいる『美少女』は、この世界自体に強い恨みを持った子たちが多いの。そういった『美少女』とかは意思の介入が難しいのよ」

「世界に恨み? 過去のトラウマ関係か?」

「それもあるけど、『美少女』になってから世界を憎んだ『美少女』もいるわ。そういう子たちが集まってるのが、[黄昏の彼方]みたいな組織ね」


 そもそも、とカメリアは話を続ける。


「それこそ、アンタら、特にひなこの契約者のユウヤが言うって話よ」

「どういうことだ?」

「さっき言ったみたいな『美少女』たちの意思操作ができないことは分かってるけど、研究所はひなこの意思も操作できないのよ。それこそ、おかしいってことになるわよ?」

「そういやそうだな」

「わたしはおかしくなんかないよ?」

「わかってるよ」


 今まで気にしなかったが、よく考えみれば、なぜひなこは研究所に反発できているのだろうか。もちろん、ひなこが世界に恨みを持っているとは考えられない。むしろ彼女は、恨みつらみとかそういう類のものと無縁の人物である。

 ならば、一体、どういう理由があるのだろう。

 そして、この疑問は、この場にいる誰にも解くことはできないことを優也は理解していた。


「にしても、あんな状況で、その[黄昏の彼方]とかいう組織が現れたって思えば、俺らを助けてくれたようにも感じるよな」

「わたしは気を失ってたからしらないけど、ピンチだったんだよね?」

「ああ、ひなこを連れて、研究所へ向かおうとしてたとこだったからな」


 彼らの登場がなかったら、今ここに優也とひなこは存在していなかった。そもそも生きていたのかも確実ではない。

 そのことを踏まえれば、優也が、その組織に対する印象が良くなってしまうのも必然というもの。


「なにをバカなこと言ってんのよ。そんなわけないでしょ」


 しかし、カメリアは、ばっさりとそれを否定する。


「[黄昏の彼方]がアンタらを助ける理由がないわ。むしろ、研究所の敵が多い方が、彼らにとっても助かるでしょう」

「それはそうだろうけどよ」

「研究所が危険とみなす組織は山ほどあるけど、その中でも[黄昏の彼方]は群を抜いてるわ。自分らの目的のためなら平気で人殺しだってする、超過激派組織。勘違いはしないことね」


 やけに感情のこもった言い方。何か過去にあったのだろうか。

 それにしても、カメリアの口調を聞いていれば、その組織がどれだけ危険なのか感じ取れる。

 それに対し、ひなこが一言。


「カメリアちゃん、優也くんが心配なんだね」

「なあ⁉︎ そそ、そそんなこと誰も言ってないでしょっ‼︎」

「顔がそう言ってたよ?」

「言ってない‼︎」


 言った言ってないの争い。

 それを横で聞きながら、優也は一つ気になることを質問する。


「今少し話に上がったが、[黄昏の彼方]の目的ってなんなんだ? なぜ研究所と対抗してる?」

「彼らは、新世界の創造を叶えようとしてるのよ」

「新世界だあ?」


 なんか途端漫画の世界にでも入り込んでしまったかのような感覚。


「正確には、この世界を新しい世界に創り変えようとしているのよ」

「そんなこと可能なのか?」

「ま、未だ出来ていないのが現実ね」


 それはつまり、実現不可能という意味。

 理想は理想でしかないようだ。


(まあ、そんな非現実的なこと簡単にできてたまるかってな)


 言いながら、すでに、今の優也が、少し前の自分と比べ現実的でないことを思い出した。


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